『私の家では何も起こらない』(恩田陸)_書評という名の読書感想文

『私の家では何も起こらない』恩田 陸 角川文庫 2016年11月25日初版


私の家では何も起こらない (角川文庫)

私の家では何も起こらない・・・・・・・、わけがない!

本当に何も起こらないなら、(そこで暮らす住人は) わざわざ 「何も起こらない」 とは言わないだろう。敢えてそう言い切るには、それなりの “理由” がある。

何かしら覚えがあるものの、しかしそうとは認めたくないばかりに、できれば何事もないようにして暮らしたい。暮らそうと心がけている。- だが、

起こるのだ! その家では間違いなく “何か” が起こっている。得体の知れない “何者か” が潜んでいる - 気配がするのだ。町の噂を軽んじてはならない。何代にも渡り語り継がれ、その間に死に絶えた人の数を思えば、どんな家にしろ、幽霊の一人や二人が住み着いていたとしても何の不思議もない。家人にとってそれはもはや恐怖の対象というよりも、口がきけない “同居人” のようなものである。

これは -

恩田陸の正統派幽霊屋敷物語である。エレガントで怖い、静謐な物語。怪談雑誌 『幽』 に連載していた連作短編集の待望の文庫化である。

アップルパイが焼けるキッチンで殺しあった姉妹。
近所から攫ってきた子を解体して主人に食べさせていた料理女。
床下の動かない少女の傍らで自殺した殺人鬼の美少年。
壁に埋め込まれた死体と思しき物体。
幽霊屋敷に魅了された人々の記憶が奏でる不穏な物語が、今、静かに語られる --。

ようこそ、恩田陸の幽霊屋敷へ。

 

この本を読んでみてください係数 80/100


私の家では何も起こらない (角川文庫)

◆恩田 陸
1964年青森県青森市生まれ。宮城県仙台市出身。
早稲田大学教育学部卒業。

作品 「夜のピクニック」「ユージニア」「六番目の小夜子」「中庭の出来事」「木洩れ日に泳ぐ魚」「蜜蜂と遠雷」「EPITAPH東京」他多数

関連記事

『残された者たち』(小野正嗣)_書評という名の読書感想文

『残された者たち』小野 正嗣 集英社文庫 2015年5月25日第一刷 残された者たち (集英社

記事を読む

『想像ラジオ』(いとうせいこう)_書評という名の読書感想文

『想像ラジオ』いとう せいこう 河出文庫 2015年3月11日初版 想像ラジオ (河出文庫)

記事を読む

『獅子渡り鼻』(小野正嗣)_書評という名の読書感想文

『獅子渡り鼻』小野 正嗣 講談社文庫 2015年7月15日第一刷 獅子渡り鼻 (講談社文庫)

記事を読む

『渡良瀬』(佐伯一麦)_書評という名の読書感想文

『渡良瀬』佐伯 一麦 新潮文庫 2017年7月1日発行 渡良瀬 (新潮文庫) 南條拓は一家で

記事を読む

『夏と花火と私の死体』(乙一)_書評という名の読書感想文

『夏と花火と私の死体』乙一 集英社文庫 2000年5月25日第一刷 夏と花火と私の死体 (集英

記事を読む

『星の子』(今村夏子)_書評という名の読書感想文

『星の子』今村 夏子 朝日新聞出版 2017年6月30日第一刷 星の子 林ちひろは中学3年生

記事を読む

『ワン・モア』(桜木紫乃)_書評という名の読書感想文

『ワン・モア』桜木 紫乃 角川書店 2011年11月30日初版 ワン・モア (角川文庫)

記事を読む

『二千七百の夏と冬』(上下)(荻原浩)_書評という名の読書感想文

『二千七百の夏と冬』(上下)荻原 浩 双葉文庫 2017年6月18日第一刷 二千七百の夏と冬(

記事を読む

『グラジオラスの耳』(井上荒野)_書評という名の読書感想文

『グラジオラスの耳』井上 荒野 光文社文庫 2003年1月20日初版 グラジオラスの耳

記事を読む

『きみのためのバラ』(池澤夏樹)_書評という名の読書感想文

『きみのためのバラ』池澤 夏樹 新潮文庫 2010年9月1日発行 きみのためのバラ (新潮文庫

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

『愛がなんだ』(角田光代)_書評という名の読書感想文

『愛がなんだ』角田 光代 角川 文庫 2018年7月30日13版

『その先の道に消える』(中村文則)_書評という名の読書感想文

『その先の道に消える』中村 文則 朝日新聞出版 2018年10月30日

『リアル鬼ごっこ』(山田悠介)_書評という名の読書感想文

『リアル鬼ごっこ』山田 悠介 幻冬舎文庫 2015年4月1日75版

『愛すること、理解すること、愛されること』(李龍徳)_書評という名の読書感想文

『愛すること、理解すること、愛されること』李 龍徳 河出書房新社 20

『電球交換士の憂鬱』(吉田篤弘)_書評という名の読書感想文

『電球交換士の憂鬱』吉田 篤弘 徳間文庫 2018年8月15日初刷

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑