『崩れる脳を抱きしめて』(知念実希人)_書評という名の読書感想文
公開日:
:
『崩れる脳を抱きしめて』(知念実希人), 作家別(た行), 書評(か行), 知念実希人
『崩れる脳を抱きしめて』知念 実希人 実業之日本社文庫 2020年10月15日初版
第8回 広島本大賞
第4回 沖縄書店大賞
第1回 一気読み大賞 3冠、2度読み必至の 感動の恋愛×ミステリー広島から神奈川の病院に実習に来た研修医の碓氷は、脳腫瘍を患う女性ユカリと出会う。外の世界に怯えるユカリと、過去に苛まれる碓氷。心に傷をもつふたりは次第に心を通わせていく - 。実習を終え広島に帰った碓氷に、ユカリの死の知らせが届く。彼女は死んだのか? 幻だったのか? ユカリの足跡を追い、碓氷は横浜山手を彷徨う。そして明かされる衝撃の真実!? どんでん返しの伝道師が描く、究極の恋愛×ミステリー!! (実業之日本社)
これは・・・・・・・、
おそろしく現実感が欠けているのは、それを承知で (それを意図して) 書いた “ファンタジー” だからでしょうか?
読むには読みました。ところが、申し訳ないのですが、私には何がいいのか、どこが面白いのか、さっぱりわかりません。
人気があるのは承知しています。これはもう若い人との感性の差であるに違いありません。(SFではあるまいに) 全ての状況がまるで現実的ではない中で、どの場面の、誰に対して感情移入しろというのでしょう。ファンは、どこに感動するのでしょう?
碓氷が抱える困難やユカリが抱く煩悶はいかにもありがちで、二人がする会話や行動の一々が、どうにもわざとらしく思えてなりません。
何より無理があると思うのは、この物語の主たる舞台となる神奈川県葉山町の海沿いに建つ 『葉山の岬病院』 という病院の、あまりにも有り得ない実態です。フィクションとはいえ、あそこまでモラルを欠いた病院というのは、さすがにないだろうと。
これまでに 『仮面病棟』 と 『螺旋の手術室』 を読みました。この二冊は (それなりに) 楽しんで読むことができました。この本も前から気になっていたので満を持して読んだのですが、大きく期待外れに終わってしまいました。(残念!)
この本を読んでみてください係数 75/100
◆知念 実希人
1978年沖縄県生まれ。
東京慈恵会医科大学卒業。
作品 「誰がための刃」「天久鷹央」シリーズ、「優しい死神の飼い方」「仮面病棟」「時限病棟」「螺旋の手術室」他
関連記事
-
-
『犬婿入り』(多和田葉子)_書評という名の読書感想文
『犬婿入り』多和田 葉子 講談社文庫 1998年10月15日第一刷 犬婿入り (講談社文庫) 多摩
-
-
『キッドナップ・ツアー』(角田光代)_書評という名の読書感想文
『キッドナップ・ツアー』角田 光代 新潮文庫 2003年7月1日発行 キッドナップ・ツアー (
-
-
『朝が来る』(辻村深月)_書評という名の読書感想文
『朝が来る』辻村 深月 文春文庫 2018年9月10日第一刷 朝が来る (文春文庫)
-
-
『風の歌を聴け』(村上春樹)_書評という名の読書感想文(書評その2)
『風の歌を聴け』(書評その2)村上 春樹 講談社 1979年7月25日第一刷 風の歌を聴け (講談
-
-
『顔に降りかかる雨/新装版』(桐野夏生)_書評という名の読書感想文
『顔に降りかかる雨/新装版』桐野 夏生 講談社文庫 2017年6月15日第一刷 新装版 顔に降
-
-
『月蝕楽園』(朱川湊人)_書評という名の読書感想文
『月蝕楽園』朱川 湊人 双葉文庫 2017年8月9日第一刷 月蝕楽園 (双葉文庫) 癌で入院
-
-
『空中庭園』(角田光代)_書評という名の読書感想文
『空中庭園』角田 光代 文春文庫 2005年7月10日第一刷 空中庭園 (文春文庫) &
-
-
『暗い越流』(若竹七海)_書評という名の読書感想文
『暗い越流』若竹 七海 光文社文庫 2016年10月20日初版 暗い越流 (光文社文庫) 5
-
-
『形影相弔・歪んだ忌日』(西村賢太)_書評という名の読書感想文
『形影相弔・歪んだ忌日』西村 賢太 新潮文庫 2016年1月1日発行 形影相弔・歪んだ忌日 (
-
-
『グロテスク』(桐野夏生)_書評という名の読書感想文
『グロテスク』桐野 夏生 文芸春秋 2003年6月30日第一刷 グロテスク