『合理的にあり得ない』(柚月裕子)_書評という名の読書感想文
公開日:
:
最終更新日:2024/01/08
『合理的にあり得ない』(柚月裕子), 作家別(や行), 書評(か行), 柚月裕子
『合理的にあり得ない』柚月 裕子 講談社文庫 2020年5月15日第1刷
上水流涼子 (かみづる・りょうこ) は弁護士資格を剥奪された後、頭脳明晰な貴山を助手に探偵エージェンシーを運営。金遣いが荒くなった妻に疑念を抱く夫、賭け将棋で必勝を期すヤクザ、野球賭博絡みのトラブルetc.。欲に塗れた人物たちの難題を涼子は知略と美貌を武器に解決するが。著者の魅力全開、極上痛快エンターテインメント! (講談社文庫)
[目次]
1.確率的にあり得ない
2.合理的にあり得ない
3.戦術的にあり得ない
4.心情的にあり得ない
5.心理的にあり得ない
涼子が代表を務める上水流エージェンシーは、定款上は興信所の扱いになっている。顧客の大半は富裕層だ。表には出せない相談事を解決し、一流弁護士並みの依頼料を受け取っている。実際、涼子の年収は、貴山への安くない給料を払っても、弁護士時代を凌いでいる。その代り、依頼を完遂するためには法律に触れることも厭わないのが、涼子の遣り方だった。(本文より)
唯一の部下・貴山伸彦はIQ140を超える東大卒の若者で、彼ならどんな世界でも身を立てていけると思うのですが、新宿区にある雑居ビルの一室で、危うい依頼ばかりを受ける三十路の独身女に仕えているのは、何か特別な訳でもあるのでしょうか?
それより何より、美貌の元弁護士・上水流涼子はなぜ弁護士資格を剥奪されのか? 彼女の過去に何があったのか? 涼子と貴山の関係は? 物語の中盤以降、それらが徐々に明らかになっていきます。
※目次を見ただけで読んでみたいと思う人が、おそらく何人もいるはずです。期待は裏切りません。面白くないわけがありません。まだまだ続く自粛モードにおススメの一冊。
この本を読んでみてください係数 80/100
◆柚月 裕子
1968年岩手県生まれ。
作品 「臨床真理」「盤上の向日葵」「最後の証人」「検事の本懐」「検事の死命」「検事の信義」「ウツボカズラの甘い息」「朽ちないサクラ」「孤狼の血」他多数
関連記事
-
『神様からひと言』(荻原浩)_昔わたしが、わざとしたこと
『神様からひと言』荻原 浩 光文社文庫 2020年2月25日43刷 大手広告代理店
-
『感染領域』(くろきすがや)_書評という名の読書感想文
『感染領域』くろき すがや 宝島社文庫 2018年2月20日第一刷 第16回 『このミステリーが
-
『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』(白石一文)_書評という名の読書感想文
『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』 白石 一文 講談社 2009年1月26日第一刷 どちらかと
-
『希望が死んだ夜に』(天祢涼)_書評という名の読書感想文
『希望が死んだ夜に』天祢 涼 文春文庫 2023年9月1日第7刷 - 『あの子の殺
-
『岸辺の旅』(湯本香樹実)_書評という名の読書感想文
『岸辺の旅』湯本 香樹実 文春文庫 2012年8月10日第一刷 きみが三年の間どうしていたか、話し
-
『海馬の尻尾』(荻原浩)_書評という名の読書感想文
『海馬の尻尾』荻原 浩 光文社文庫 2020年8月20日初版 二度目の原発事故でど
-
『からまる』(千早茜)_書評という名の読書感想文
『からまる』千早 茜 角川文庫 2014年1月25日初版 地方公務員の武生がアパートの前で偶然知り
-
『漁港の肉子ちゃん』(西加奈子)_書評という名の読書感想文
『漁港の肉子ちゃん』西 加奈子 幻冬舎文庫 2014年4月10日初版 男にだまされた母・肉子ちゃん
-
『片想い』(東野圭吾)_書評という名の読書感想文
『片想い』東野 圭吾 文春文庫 2004年8月10日第一刷 十年ぶりに再会した美月は、男の姿をして
-
『王とサーカス』(米澤穂信)_書評という名の読書感想文
『王とサーカス』米澤 穂信 創元推理文庫 2018年8月31日初版 2001年、新聞社を辞めたばか