『劇団42歳♂』(田中兆子)_書評という名の読書感想文
公開日:
:
最終更新日:2024/01/11
『劇団42歳♂』(田中兆子), 作家別(た行), 書評(か行), 田中兆子
『劇団42歳♂』田中 兆子 双葉社 2017年7月23日第一刷
大学で劇団を組んでいた5人の仲間。今は違う道を歩む彼らだが、卒業後20年の節目に「劇団42歳♂」を結成した。一日限りの公演に向けて「オセロー」に挑むが、各自の抱える事情もあり、稽古はなかなか捗らない。果たして幕は無事に上がるのか? そして彼らが直面する問題の行く末は? 迷える不惑の男たちにエールを贈る連作短編集。(アマゾン内容紹介より)
【本読みのプロからも絶賛! 】(榎本正樹氏/「小説現代」2017年9月号)
特筆すべきは『オセロー』の解釈小説として構成される趣向である。特に夫オセローの嫉妬によって殺される妻デズデモーナの謎めいた今際の言葉をめぐる解釈は、物語の牽引力となる。さらに役を演じる一人ひとりの実人生に、役柄自体が深く浸潤してくる。こうした演劇的な仕掛けから立ち上がってくるのは、四十代の男性の生き方をめぐる問いだ。劇団をサポートする唯一の女性が、男性共同体の手厳しい観察者となる設定に、田中ならではの着眼の妙が光る。理不尽な言葉にキレた仲間の失踪により上演の危機に陥った男たちの行く末はいかに・・・。
帯にデカデカとあるのですが、とにもかくにも 男の友情はややこしい。めんどくさくて、わかりにくい - ということが書いてあります。おまけに、シェイクスピアのことが少しわかって、ちょっと得した気分になります。
文藝春秋2018年1月号(私はYAHOOニュースの記事で知ったのですが)、角田光代さんが20歳の自分に読ませたい「わたしのベスト3 」 の中の一冊。角田さんがこの作品を選んだ理由は以下の通り。
『劇団42歳♂』 の登場人物たちは、みんな四十代だけれど、学生時代の演劇仲間だ。学生時代の私も演劇サークルに属していたから、倍の年齢を重ねてなお演劇熱の残っている、この小説の登場人物たちのことをよく理解しただろう。なぜ自分が大勢で創る演劇をやろうと思ったのかも再確認するだろう。そして年齢を重ねることが大人になることではないと、この小説を読んで思うのではないか。
年齢を重ねるだけでは大人にはなれない。年齢を重ねたからといって悩みや鬱屈が消えるわけではない。そのことを知っても、この小説は、四十二歳になることに決して失望させないと思うのだ。
どうです? 男性に限らず、女性にも(いや、むしろ女性にこそと言うべきか)ぜひ読んで欲しいものです。
田中兆子さんは、私の大のお気に入りです。よければ彼女のデビュー作 『甘いお菓子は食べません』 を読んでみてください。きっと、もっと好きになります。
※ちなみに、角田さんおススメのあと二冊はというと、
『望むのは』 古谷田 奈月/新潮社
『無敵の二人』 中村 航/文藝春秋 です。こちらも、ぜひぜひ読んでみてください。
この本を読んでみてください係数 85/100
◆田中 兆子
1964年富山県生まれ。8年間のOL生活ののち、専業主婦に。2011年「べしみ」で女による女のためのR-18文学賞大賞を受賞。同作を収録した『甘いお菓子は食べません』が初の単行本となる。本書は受賞後の第一作。
関連記事
-
-
『これからお祈りにいきます』(津村記久子)_書評という名の読書感想文
『これからお祈りにいきます』津村 記久子 角川文庫 2017年1月25日初版 高校生シゲルの町には
-
-
『うどん陣営の受難』(津村記久子)_書評という名の読書感想文
『うどん陣営の受難』津村 記久子 U - NEXT 2023年8月25日 第2刷発行 100
-
-
『欺す衆生』(月村了衛)_書評という名の読書感想文
『欺す衆生』月村 了衛 新潮文庫 2022年3月1日発行 詐欺の天才が闇の帝王に成
-
-
『グ、ア、ム』(本谷有希子)_書評という名の読書感想文
『グ、ア、ム』本谷 有希子 新潮文庫 2011年7月1日発行 北陸育ちの姉妹。長女は大学を出た
-
-
『あなたの不幸は蜜の味』(辻村深月ほか)_書評という名の読書感想文
『あなたの不幸は蜜の味』辻村深月ほか PHP文芸文庫 2019年7月19日第1版
-
-
『やりたいことは二度寝だけ』(津村記久子)_書評という名の読書感想文
『やりたいことは二度寝だけ』津村 記久子 講談社文庫 2017年7月14日第一刷 毎日アッパッパー
-
-
『スリーパー/浸透工作員 警視庁公安部外事二課 ソトニ』(竹内明)_書評という名の読書感想文
『スリーパー/浸透工作員 警視庁公安部外事二課 ソトニ』竹内 明 講談社 2017年9月26日第一刷
-
-
『夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった』(谷川俊太郎)_書評という名の読書感想文
『夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった』谷川 俊太郎 青土社 1975年9月20日初版発行
-
-
『枯木灘』(中上健次)_書評という名の読書感想文
『枯木灘』中上 健次 河出文庫 2019年10月30日 新装新版3刷発行 このいとおしい思い
-
-
『鯨の岬』(河﨑秋子)_書評という名の読書感想文
『鯨の岬』河﨑 秋子 集英社文庫 2022年6月25日第1刷 札幌の主婦奈津子は、

















