『私が殺した少女』(原尞)_書評という名の読書感想文
公開日:
:
最終更新日:2024/03/08
『私が殺した少女』(原尞), 作家別(は行), 原尞, 書評(わ行)
『私が殺した少女』 原 尞 早川書房 1989年10月15日初版
私立探偵沢崎の事務所に電話をしてきた依頼人は、面会場所に目白の自宅を指定していた。沢崎はブルーバードを走らせ、依頼人の邸宅へ向かう。だが、そこで彼は、自分が思いもかけぬ誘拐事件に巻き込まれていることを知る・・・・・・・緻密なストーリー展開と強烈なサスペンスで独自のハードボイルド世界を確立し、日本の読書界を瞑目させた直木賞・ファルコン賞受賞作。(「BOOK」データベースより)
完成までに1年半、原尞二作目の大傑作で、ハードボイルド系探偵小説の極みといえる一冊です。
物語はこんな書き出しで始まります。
午前中に受けた電話での依頼。私は、西新宿のはずれにある事務所を出て依頼人の自宅がある目白へ愛車のブルーバードを走らせる。指定された時間に遅れないように、靖国通りから明治通りへ左折した。道路は混まず、車はいつになく快調だった・・・・・・・だが、私のツキもそこまでだった。まるで拾った宝くじに当たったように不運な一日は、その電話で始まったのだ・・・・・・・
とにもかくにも一読を。この人なくして (日本の) ハードボイルドはありえません。
※90年2月に11刷。文庫化され、それも2013年4月には21刷。遅筆で寡作の人ですが、出れば必ず版を重ねています。
この本を読んでみてください係数 95/100
◆原 尞
1946年佐賀県鳥栖市生まれ。
九州大学文学部美学美術史科卒業。
大学卒業後に上京、フリーのジャズピアニストとして活動の後、帰郷して執筆活動に専念。
作品 「そして夜は甦る」「私が殺した少女」「天使たちの探偵」「さらば長き眠り」「愚か者死すべし」など
◇ブログランキング
関連記事
-
『白い夏の墓標』(帚木蓬生)_書評という名の読書感想文
『白い夏の墓標』帚木 蓬生 新潮文庫 2023年7月10日25刷 (昭和58年1月25日発行)
-
『 Y 』(佐藤正午)_書評という名の読書感想文
『 Y 』佐藤 正午 角川春樹事務所 2001年5月18日第一刷 [プロローグ] 1980年、9
-
『夢を売る男』(百田尚樹)_書評という名の読書感想文
『夢を売る男』百田 尚樹 幻冬舎文庫 2015年5月1日初版 『永遠の0 (ゼロ)
-
『カエルの楽園』(百田尚樹)_書評という名の読書感想文
『カエルの楽園』百田 尚樹 新潮文庫 2017年9月1日発行 平和な地を求め旅に出たアマガエルのソ
-
『私に付け足されるもの』(長嶋有)_書評という名の読書感想文
『私に付け足されるもの』長嶋 有 徳間書店 2018年12月31日初版 芥川賞、大
-
『オーブランの少女』(深緑野分)_書評という名の読書感想文
『オーブランの少女』深緑 野分 創元推理文庫 2019年6月21日 3刷 互いの痛みがわたし
-
『半自叙伝』(古井由吉)_書評という名の読書感想文
『半自叙伝』古井 由吉 河出文庫 2017年2月20日初版 見た事と見なかったはずの事との境が私に
-
『隠し事』(羽田圭介)_書評という名の読書感想文
『隠し事』羽田 圭介 河出文庫 2016年2月20日初版 すべての女は男の携帯を見ている。男は
-
『三千円の使いかた』(原田ひ香)_書評という名の読書感想文
『三千円の使いかた』原田 ひ香 中公文庫 2021年8月25日初版 知識が深まり、
-
『爪と目』(藤野可織)_書評という名の読書感想文
『爪と目』藤野 可織 新潮文庫 2016年1月1日発行 はじめてあなたと関係を持った日、帰り際