『Phantom/ファントム』(羽田圭介)_書評という名の読書感想文
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『Phantom/ファントム』(羽田圭介), 作家別(は行), 書評(は行), 羽田圭介
『Phantom/ファントム』羽田 圭介 文春文庫 2024年9月10日 第1刷
FIREの先は薔薇色なのか 自らの価値観と生き方を問われる、いま読まれるべき傑作小説!

目標は5000万円。死ぬ間際になってようやく金持ちになっても、意味がない・・・・・・・?
外資系メーカー事務職として働く華美は、生活費を切り詰め株に投資することで、自分の給与収入と同じ配当を生む “分身 (システム)“ の完成を目指す。恋人の直幸は 「使わないお金は死んでいる」 と華美を笑い、オンラインコミュニティ活動にのめり込む - 人生の時間は限られている。自分はお金とどう付き合うのか? 現代人の葛藤を描いた傑作。(文春文庫)
株の売買をした経験がある人ならわかると思います。取引の間中、株価の動向が気になって気になって。PCやスマホで取引が可能になってからは、それはもう癖になり、一々確認せずにはいられなくなります。
指先ひとつで取引が完了し、時に大きな利益を得ることができます。長期に保有するもよし、短期に売り買いを繰り返すもよし。要は儲けを出し、利益を確定することです。但し、大抵の場合、そううまくはいきません。特に短期で儲けを出そうとすると、思わぬ落とし穴に落ちることがあります。
その点、華美は賢明で堅実な投資家ではありました。32歳にして既に資産は約1500万円。元手は800万円ですから、大きな成果を挙げています。彼女の目的は長期的かつ安定的な資金の運用と、給与収入に等しい 「配当」 を得ることでした。そのための “システム“ を構築すべく、日々奮闘しています。
あなたなら儲けたお金を何に使う? 羽田圭介の 『Phantom』 が問う!
「儲けたお金を一体何に使うべきか、あるいは使わずにおくべきか」 - 羽田圭介氏の 『Phantom』(文藝春秋) は、この問いへの答えを求めて右往左往する人々が登場する小説だ。
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主人公は外資系食品メーカーの事務職を務める、元地下アイドルの華美。彼女の収入は決して多くはない。だが、自宅では株式投資に汲々としており、常に市場の潮目を読むことに血道を上げる。生活費を切り詰めているのは、投資にかかるコストをなんとか捻出するためだ。
一方、華美の恋人の直幸の金銭感覚は、華美とは一見まったく異なる。成功者の自己啓発 本を読み耽り、怪しげなオンラインコミュニティに入り浸り、ついには 「使わないお金は死んでいる」 と華美を笑う。そんな直幸から見ると、株式に夢中になっている華美は、資本主義の奴隷のように見えたのだろう。直幸は特に 「FIRE」 と呼ばれる、経済的自由を獲得して早期に退職する人々の本に触発されている。
序盤は株式にまつわる専門用語が飛び交い、経済音痴の筆者はこのまま置かれてゆくのか・・・・・・・と思ったところで劇的に物語がドライブし始め、新たなフェイズへと移行する。直幸が属していたコミュニティに興味と不信感を抱いた華美が、ネットを使ってリサーチを敢行。すると、スエという教祖的な男性が、山奥で彼らの理想郷である 「ムラ」 を築いていることが判明する。(以下省略/ダ・ヴィンチwebより 文=土佐有明)
※スエが運営する 「ムラ」 というのは、あの、教祖・麻原彰晃が率いたオウム真理教の信者が集う施設に限りなく似通っています。著者が意図して似せたに違いありません。
施設に入り浸り、一向に出る気配のない直幸と、直幸を連れ戻そうと施設に潜入する華美。二人はその後どんな顛末を迎えるのでしょう。各々の生き方を振り返り、出直すことはできるのでしょうか。
この本を読んでみてください係数 85/100

◆羽田 圭介
1985年東京都生まれ。
明治大学商学部卒業。
作品 「黒冷水」「ミート・ザ・ビート」「御不浄バトル」「不思議の国の男子」「スクラップ・アンド・ビルド」「メタモルフォシス」「コンテクスト・オブ・ザ・デッド」「成功者K」「滅私」他多数
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