『カラフル』(森絵都)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/11 『カラフル』(森絵都), 作家別(ま行), 書評(か行), 森絵都

『カラフル』森 絵都 文春文庫 2007年9月10日第一刷

生前の罪により輪廻のサイクルから外されたぼくの魂が天使業界の抽選に当たり、再挑戦のチャンスを得た。自殺を図った少年、真の体にホームステイし、自分の罪を思い出さなければならないのだ。真として過ごすうち、ぼくは人の欠点や美点が見えてくるようになる・・・・・・・。老若男女に読み継がれる不朽の名作。(文春文庫)

今日も朝からめちゃくちゃ暑い。昼夜かまわず空調は入れっ放し。服装といえばランニングシャツと短パンで、それ以外は着る気もしない。仕事を辞め、家にいる身であればそれで十分で、人目を気にするような、私はもうそんな歳ではないのです。

7月も20日を過ぎ、夏休みになり、暑いのはあたり前なのですが、若い人のようにはいきません。海やプールに行くでなし、せめてもと思い、「(文春文庫の)高校生が選んだ読みたい文庫BEST10」の中の一冊、『カラフル』という小説を読んでみました。

森絵都という人は元来が児童文学作家で、この本も「産経児童出版文化賞」を受賞しています。デビュー作の『リズム』(講談社児童文学新人賞)からしてそうなのですが、これまでに多くの児童文学賞を受賞している、おそらくは児童文学をこよなく愛する読者の間では超が付くほど有名な人らしい。

確かに、書店へ行くとこの人の本が一冊か二冊は必ずと言っていいほど目立つところに置いてあります。知ってはいたものの、買おうとは思わなかった。名前の字面もそうなら本の装丁もそうで、いやにポップで、読む気がしなかったのです。

先日、たまたま「高校生が選んだ読みたい文庫No.1」と書いた帯の文句が目に入り、手に取って見ると「大人も泣ける青春小説。累計100万部突破の名作! 」とあります。

時節柄、かつて部活を終え家に帰った夏休みの昼下がり、縁側に寝そべり、江戸川乱歩ばかりを読んで過ごした高校1年生の頃を思い出し、今の高校生諸君が一番に挙げる小説とはどんなものだろうと、初めてこの人の本を買いました。

で、どうだったのか? といいますと、これがなかなかに微妙で、ストレートに今の私の感想を書くとなると、それはもしかして、この本を選んだ高校生諸君に対して随分と失礼なもの言いになるのではないかと。

書くとつまらぬ文句のひとつも言いそうで、そしてそれはまた、かつて私にもあった「純な感性」が今はもう涸れてなくなっているということを自ら認めてしまうことになりはしまいかと。

いずれにせよ、たとえ私がどんな否定的なことを書こうとも、多くの高校生諸君にとってこの『カラフル』という物語は、おそらくそういうことではないのだろうと。

「大人も泣ける」と言われて泣かずに(泣けずに)いた大人の私は、もはやこの本についての感想を書くべき資格がないのかもしれません。ここは真摯に、この小説を一番に推した高校生諸君の「真っ直ぐさ」に敬意を表し、羨むべきところなのでしょう。

※参考:(文春文庫)高校生が選んだ読みたい文庫BEST10

1位 カラフル 森絵都
2位 三匹のおっさん 有川浩
3位 容疑者Xの献身 東野圭吾
4位 探偵ガリレオ 東野圭吾
5位 悪の教典(上下) 貴志祐介
6位 手紙 東野圭吾
7位 プリンセス・トヨトミ 万城目学
8位 死神の精度 伊坂幸太郎
9位 インシテミル 米澤穂信
10位 武士道シックスティーン 誉田哲也   以上

この本を読んでみてください係数 80/100

◆森 絵都
1968年東京都生まれ。
早稲田大学卒業。

作品 「リズム」「宇宙のみなしご」「アーモンド入りチョコレートのワルツ」「つきのふね」「DIVE!!」「風に舞いあがるビニールシート」他多数

関連記事

『ことり』(小川洋子)_書評という名の読書感想文

『ことり』小川 洋子 朝日文庫 2016年1月30日第一刷 人間の言葉は話せないけれど、小鳥の

記事を読む

『丸の内魔法少女ミラクリーナ』(村田沙耶香)_書評という名の読書感想文

『丸の内魔法少女ミラクリーナ』村田 沙耶香 角川文庫 2023年2月25日初版発行

記事を読む

『果鋭(かえい)』(黒川博行)_書評という名の読書感想文

『果鋭(かえい)』黒川 博行 幻冬舎 2017年3月15日第一刷 右も左も腐れか狸や! 元刑事の名

記事を読む

『オールド・テロリスト』(村上龍)_書評という名の読書感想文

『オールド・テロリスト』村上 龍 文春文庫 2018年1月10日第一刷 「満州国の人間」を名乗る老

記事を読む

『国道沿いのファミレス』(畑野智美)_書評という名の読書感想文

『国道沿いのファミレス』畑野 智美 集英社文庫 2013年5月25日第一刷 佐藤善幸、外食チェーン

記事を読む

『カルマ真仙教事件(中)』(濱嘉之)_書評という名の読書感想文

『カルマ真仙教事件(中)』濱 嘉之 講談社文庫 2017年8月9日第一刷 上巻(17.6.15発

記事を読む

『すべて忘れてしまうから』(燃え殻)_書評という名の読書感想文

『すべて忘れてしまうから』燃え殻 扶桑社 2020年8月10日第3刷 ベストセラー

記事を読む

『恋する寄生虫』(三秋縋)_書評という名の読書感想文

『恋する寄生虫』三秋 縋 メディアワークス文庫 2021年10月25日27版発行

記事を読む

『検事の本懐』(柚月裕子)_書評という名の読書感想文

『検事の本懐』柚月 裕子 角川文庫 2018年9月5日3刷 ガレージや車が燃やされ

記事を読む

『完璧な母親』(まさきとしか)_今どうしても読んで欲しい作家NO.1

『完璧な母親』まさき としか 幻冬舎文庫 2019年3月30日10刷 「八日目の蝉

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『執着者』(櫛木理宇)_書評という名の読書感想文

『執着者』櫛木 理宇 創元推理文庫 2024年1月12日 初版 

『オーブランの少女』(深緑野分)_書評という名の読書感想文

『オーブランの少女』深緑 野分 創元推理文庫 2019年6月21日

『揺籠のアディポクル』(市川憂人)_書評という名の読書感想文

『揺籠のアディポクル』市川 憂人 講談社文庫 2024年3月15日

『海神 (わだつみ)』(染井為人)_書評という名の読書感想文

『海神 (わだつみ)』染井 為人 光文社文庫 2024年2月20日

『百年と一日』(柴崎友香)_書評という名の読書感想文

『百年と一日』柴崎 友香 ちくま文庫 2024年3月10日 第1刷発

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑