『義弟 (おとうと)』(永井するみ)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/09 『義弟 (おとうと)』(永井するみ), 作家別(な行), 書評(あ行), 永井するみ

『義弟 (おとうと)』永井 するみ 集英社文庫 2019年5月25日第1刷

克己と彩は血の繋がりのない義理の姉弟。成人した今、克己の彩に対する感情は、姉以上のものになっていた。そんな中、彩の不倫相手が彼女の職場で急死する。助けを求められた克己は、彼女を守るため遺体の処理をするのだが・・・・・・・。克己の抑えられない破滅的な衝動、男性を受け入れられない彩の秘密。それぞれの心の闇を描く、衝撃の問題作。(アマゾン内容紹介より)

義弟と書いておとうとと読ませる。義父、義母、義兄、義姉・・・・・・・義理の関係と聞くだけでそこには簡単にはほどけない柵や束縛を感じさせる。タイトルから得られる想像の領域で、すでにこの物語は勝っている。

読みどころも多いが導入のシーンには度肝を抜かれる。日頃の鬱憤が溜り真夜中に寝静まった両親の部屋に火をかけ殺害しようと目論んだ弟・克己。凶行に及ぼうとしたまさにその瞬間に帰省してきた姉・彩。姉の運転するバイクで逃避行の途中、思いもよらぬ事故が・・・・・・・冒頭のこの数ページを読めば絶対に心を鷲掴みにされ、ラスト一行まで一気読みの確率は極めて高いはずだ。(後略)

物語の大きな軸は彩の不倫。しかしその相手は品格のある紳士でプラトニックな関係で結ばれていた。そしてもう一つは五歳の時に母親を自転車事故で死なせてしまったという克己の根深いトラウマである。どちらも魂の根底にある、言葉では言い尽くせない感情が渦巻いていてそれぞれの人格を形成している重要な要素でもあるのだ。

男と女、生と死、善と悪、愛と憎しみ、嫉妬と憧憬、正常と狂気、静謐と喧騒・・・・・・・あらゆる想いの交錯によって、『義弟』 という作品が構成されている。単なる恋愛でもミステリーでもサスペンスでもない究極の人間ドラマがここにある。(解説より抜粋)

無礼を承知で言うと、ここまで書くとやや買いかぶりに過ぎるのではないかと - 。解説のための解説であるような、意図して書いた宣伝文のような、そんな感じがします。(あとでわかったのですが、先の文章は内田剛さんという書店員の方が書いたものです)

それぞれ好みはあるのでしょうが、登場する人物の一々の言動が鼻に付いてしまうのは私ばかりのことなのでしょうか。ちょっとこれは “盛りすぎ” ではないかと。

技術の高さ (文章力) で補ってはいるものの、ふとした合間に感じるに - 、なかなかに、そんな奴はいないだろうにと。

克己と克己の父親にせよ、彩と彩の母親にせよ、彩と関係する島岡という男にせよ、島岡の妻・真由美という女にせよ。

キャラが立ち過ぎで、その分リアルさに欠けると感じるのは私だけなのでしょうか・・・・・・・。あの 『枯れ蔵』 のような、地に足のついた小説が読みたかった。(残念!! )

この本を読んでみてください係数 75/100

◆永井 するみ
1961年東京生まれ。
東京芸術大学音楽学部中退、北海道大学農学部卒業。2010年9月3日、死去。

作品 「マリーゴールド」「枯れ蔵」「隣人」「ミレニアム」「ダブル」他

関連記事

『あなたの燃える左手で』(朝比奈秋)_書評という名の読書感想文

『あなたの燃える左手で』朝比奈 秋 河出書房新社 2023年12月10日 4刷発行 この手の

記事を読む

『泳いで帰れ』(奥田英朗)_書評という名の読書感想文

『泳いで帰れ』奥田 英朗 光文社文庫 2008年7月20日第一刷 8月16日、月曜日。朝の品川駅

記事を読む

『異類婚姻譚』(本谷有希子)_書評という名の読書感想文

『異類婚姻譚』本谷 有希子 講談社 2016年1月20日初版 子供もなく職にも就かず、安楽な結

記事を読む

『ゆれる』(西川美和)_書評という名の読書感想文

『ゆれる』西川 美和 文春文庫 2012年8月10日第一刷 故郷の田舎町を嫌い都会へと飛び出し

記事を読む

『相棒に気をつけろ』(逢坂剛)_書評という名の読書感想文

『相棒に気をつけろ』逢坂 剛 集英社文庫 2015年9月25日第一刷 世間師【せけんし】- 世

記事を読む

『夢見る帝国図書館』(中島京子)_書評という名の読書感想文

『夢見る帝国図書館』中島 京子 文春文庫 2022年5月10日第1刷 「ねえ、どう

記事を読む

『青空と逃げる』(辻村深月)_書評という名の読書感想文

『青空と逃げる』辻村 深月 中公文庫 2021年7月25日初版 深夜、夫が交通事故

記事を読む

『通天閣』(西加奈子)_書評という名の読書感想文

『通天閣』西 加奈子 ちくま文庫 2009年12月10日第一刷 織田作之助賞受賞作だと聞くと

記事を読む

『明るい夜に出かけて』(佐藤多佳子)_書評という名の読書感想文

『明るい夜に出かけて』佐藤 多佳子 新潮文庫 2019年5月1日発行 富山は、ある

記事を読む

『教団X』(中村文則)_書評という名の読書感想文

『教団X』中村 文則 集英社文庫 2017年6月30日第一刷 突然自分の前から姿を消した女性を探し

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『闇祓 Yami-Hara』(辻村深月)_書評という名の読書感想文

『闇祓 Yami-Hara』辻村 深月 角川文庫 2024年6月25

『地雷グリコ』(青崎有吾)_書評という名の読書感想文 

『地雷グリコ』青崎 有吾 角川書店 2024年6月20日 8版発行

『アルジャーノンに花束を/新版』(ダニエル・キイス)_書評という名の読書感想文

『アルジャーノンに花束を/新版』ダニエル・キイス 小尾芙佐訳 ハヤカ

『水たまりで息をする』(高瀬隼子)_書評という名の読書感想文

『水たまりで息をする』高瀬 隼子 集英社文庫 2024年5月30日

『黒牢城』(米澤穂信)_書評という名の読書感想文

『黒牢城』米澤 穂信 角川文庫 2024年6月25日 初版発行

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑