『義弟 (おとうと)』(永井するみ)_書評という名の読書感想文

『義弟 (おとうと)』永井 するみ 集英社文庫 2019年5月25日第1刷

義弟 (集英社文庫)

克己と彩は血の繋がりのない義理の姉弟。成人した今、克己の彩に対する感情は、姉以上のものになっていた。そんな中、彩の不倫相手が彼女の職場で急死する。助けを求められた克己は、彼女を守るため遺体の処理をするのだが・・・・・・・。克己の抑えられない破滅的な衝動、男性を受け入れられない彩の秘密。それぞれの心の闇を描く、衝撃の問題作。(アマゾン内容紹介より)

義弟と書いておとうとと読ませる。義父、義母、義兄、義姉・・・・・・・義理の関係と聞くだけでそこには簡単にはほどけない柵や束縛を感じさせる。タイトルから得られる想像の領域で、すでにこの物語は勝っている。

読みどころも多いが導入のシーンには度肝を抜かれる。日頃の鬱憤が溜り真夜中に寝静まった両親の部屋に火をかけ殺害しようと目論んだ弟・克己。凶行に及ぼうとしたまさにその瞬間に帰省してきた姉・彩。姉の運転するバイクで逃避行の途中、思いもよらぬ事故が・・・・・・・冒頭のこの数ページを読めば絶対に心を鷲掴みにされ、ラスト一行まで一気読みの確率は極めて高いはずだ。(後略)

物語の大きな軸は彩の不倫。しかしその相手は品格のある紳士でプラトニックな関係で結ばれていた。そしてもう一つは五歳の時に母親を自転車事故で死なせてしまったという克己の根深いトラウマである。どちらも魂の根底にある、言葉では言い尽くせない感情が渦巻いていてそれぞれの人格を形成している重要な要素でもあるのだ。

男と女、生と死、善と悪、愛と憎しみ、嫉妬と憧憬、正常と狂気、静謐と喧騒・・・・・・・あらゆる想いの交錯によって、『義弟』 という作品が構成されている。単なる恋愛でもミステリーでもサスペンスでもない究極の人間ドラマがここにある。(解説より抜粋)

無礼を承知で言うと、ここまで書くとやや買いかぶりに過ぎるのではないかと - 。解説のための解説であるような、意図して書いた宣伝文のような、そんな感じがします。(あとでわかったのですが、先の文章は内田剛さんという書店員の方が書いたものです)

それぞれ好みはあるのでしょうが、登場する人物の一々の言動が鼻に付いてしまうのは私ばかりのことなのでしょうか。ちょっとこれは “盛りすぎ” ではないかと。

技術の高さ (文章力) で補ってはいるものの、ふとした合間に感じるに - 、なかなかに、そんな奴はいないだろうにと。

克己と克己の父親にせよ、彩と彩の母親にせよ、彩と関係する島岡という男にせよ、島岡の妻・真由美という女にせよ。

キャラが立ち過ぎで、その分リアルさに欠けると感じるのは私だけなのでしょうか・・・・・・・。あの 『枯れ蔵』 のような、地に足のついた小説が読みたかった。(残念!! )

この本を読んでみてください係数 75/100

義弟 (集英社文庫)

◆永井 するみ
1961年東京生まれ。
東京芸術大学音楽学部中退、北海道大学農学部卒業。2010年9月3日、死去。

作品 「マリーゴールド」「枯れ蔵」「隣人」「ミレニアム」「ダブル」他

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