『人間に向いてない』(黒澤いづみ)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/08 『人間に向いてない』(黒澤いづみ), 作家別(か行), 書評(な行), 黒澤いづみ

『人間に向いてない』黒澤 いづみ 講談社文庫 2020年5月15日第1刷

とある若者の間で流行する奇病、異形性変異症候群 (ミュータント・シンドローム) にかかり、一夜にしておぞましい芋虫に変貌した息子優一。それは母美晴の、悩める日々の始まりでもあった。夫の無理解。失われる正気。理解不能な子に向ける、その眼差しの中の盲点。一体この病の正体は。嫌悪感の中に感動を描いてみせた稀代のメフィスト賞受賞作。(講談社文庫)

一夜のうちに人間を異形の姿にしてしまう奇病に罹った子どもと親や家族、そして社会の物語は現代版のカフカ 『変身』 を彷彿とさせる作品である。

数年前、突如として発生した 「異形性変異症候群」 別名ミュータント・シンドロームは感染症ではなく人にうつることはないが、一時的な症状ではなく治療法もない。患者は特定の年代、十代後半から二十代の若者に集中しているが、罹患するのは専ら引きこもりやニートと呼ばれる層だ。彼らは一晩のうちに哺乳類やら魚類やら、爬虫類、昆虫、果ては植物にまで変貌を遂げ、見た目は非常にグロテスクな姿になる。

家族は発見後驚愕し、困惑したあとその姿を嫌悪する。食べ物も生活様式も全く変わってしまうため、世話を放棄する者はあとを絶たず、殺してしまうケースが多数報告されるようになった。困りに困った政府は以下の決定を下す。

- 『異形性変異症候群を致死性の病とする。
この診断が下された段階で患者は人間としては死亡したことにされるのだ。(解説より)

※かつて我が子であったものが見る影もなく姿を変えてしまう。百足のような脚を持った芋虫に。顔が娘の、人面犬に。

意思疎通が叶わずに、この先、人に戻る手立てもないとしたら。グロテスクなだけの同居人を、人間だった頃の息子や娘と同様に、それでもあなたは愛せるでしょうか? そもそもかれらは、何がためにそんなことになったのでしょう? そこを考えなくてはなりません。

主人公は田無美晴 (たなし・みはる)。専業主婦である。ある朝二十二歳になる引きこもり息子、優一が中型犬ほどの蟻のように頑丈そうな顎を持ち、頭部から下は芋虫に似ており、百足のように無数の脚を持つ虫に変身しているのを発見された。
すぐに死亡届を出そうとする夫から息子を守るため、同じ病の子どもを持つ親たちと活動を始める。だがそれぞれの病状も事情も違う。人が集まれば派閥もでき、おのおのの思いが違っていく。母親の愛で子どもをどこまで守れるのだろう。美晴の葛藤が続く。(解説の続き)

事は、魑魅魍魎。すべてが、因果応報
覚悟して読みなさい。きっとあなたは三度嘔吐く。

この本を読んでみてください係数  85/100

◆黒澤 いづみ
福岡県出身。本作で第57回メフィスト賞を受賞。

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