『希望病棟』(垣谷美雨)_書評という名の読書感想文

『希望病棟』垣谷 美雨 小学館文庫 2020年11月11日初版

希望病棟 (小学館文庫)

神田川病院に赴任した女医の黒田摩周湖は、二人の末期癌の女性患者をみている。先輩のルミ子に促され、中庭で拾った聴診器を使うと患者の “心の声” が聞こえてきた。
児童養護施設で育った桜子は、大人を信じていない。代議士の妻の貴子は、過去に子供を捨てたことがあるらしい。
摩周湖の勧めで治験を受けた二人は快方に向かい、生き直すチャンスを得る。”従順な妻” として我慢を強いられてきた貴子は、驚きの行動に出て・・・・・・!? 孤独と生きづらさを抱えてきた二人はどのような道を歩むのか。共感の嵐を呼んだヒューマン・ドラマ 『後悔病棟』 に続く感動の長編。(小学館文庫)

物語の舞台は前作と同じ神田川病院。物語の鍵を握るのが不思議な聴診器であることも同じだ。ただ、聴診器の持主は (前作の主人公・早坂ルミ子から) 黒田摩周湖という二十九歳の女性医師に変わる。

なんとも妙ちきりんな名前を持つ摩周湖さんだが、言動も負けず劣らず、変。異様なまでに口下手で無愛想なせいで、周囲を怒らせてばかりいる。摩周湖は、言葉足らず - というより、自分の考えや気持ちをうまく表現できないせいで誤解されることが重なり、すっかり自信喪失に陥っていた。

そんな彼女が、二名の末期癌患者に対する遺伝子治療治験の担当者となった。

治験の対象者のひとりは捨て子として児童養護施設で育ってきた高校二年生の小出桜子。厳しい生い立ちゆえに鉄壁の外面を持つが、内面は極度の人間不信に陥っている。

もうひとりは三十六歳の代議士夫人・谷村貴子。元キャバ嬢という経歴に引け目を感じ、俗物の夫や姑からは軽んじられ、利用され続けていた。その挙げ句、今では死さえ望まれている。

桜子のこれまでの人生には良い事がひとつもありません。親に捨てられ、望んだ高校へは行かせてもらえず、施設を出ると同時に自立しなければなりません。頼れる人はなく、時給の安いアルバイトだけでは、準備にかかる資金を貯めることもままなりません。

いまさらながら、貴子は代議士の夫と結婚したことを激しく後悔しています。何不自由ない暮らしではあるものの、政治家として絶望的に使命感に欠ける夫にうんざりしています。今度の選挙に落ちればいいと、心から願っています。

桜子も貴子も、まだ老いも見ぬ自分が余命宣告を受けることになろうとは考えてもなかっただろう。なんの覚悟もないところに、病がやってきた。突然告げられた人生の打ち切りを前に、心に湧くのは後悔や恨みばかりである。前作は、この 後悔や恨みが話の核だった。

ところが、本作では二人に思わぬ未来が用意されていた。治験が成功し、健康を取り戻すのである。(太字は全て解説からの抜粋)

問題は (肝心なのは) ここからである。

この本を読んでみてください係数  85/100

希望病棟 (小学館文庫)

◆垣谷 美雨
1959年兵庫県豊岡市生まれ。
明治大学文学部文学科フランス文学専攻卒業。

作品 「竜巻ガール」「ニュータウンは黄昏れて」「後悔病棟」「女たちの避難所」「老後の資金がありません」「夫の墓には入りません」「農ガール、農ライフ」他多数

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