『緋色の稜線』(あさのあつこ)_書評という名の読書感想文

『緋色の稜線』あさの あつこ 角川文庫 2020年11月25日初版

緋色の稜線 (角川文庫)

※本書は、2012年9月に講談社より刊行された単行本 『白兎1 透明な旅路と』 を加筆修正し、改題のうえ文庫化したものです。

魂のなかに生き続ける懐かしい故郷への探索。生の中で息づく温かな悲歌だ。人を殺して逃げる男が出会った、少年と傷ついた幼女。幻惑のサスペンス・ミステリ!

一時の絶望に駆られ、生きずりの女を絞殺した吉行明敬。殺人現場から離れようと自動車で山道を走る途中、彼は古臭いおかっぱ頭の幼女を連れた、白兎と名乗る不思議な少年に出会う。「お家に帰る」 という幼女と、付き添いだという少年。やむをえず2人を車に乗せ山間の温泉宿にたどり着くが、吉行は白兎たちの不可思議な言動に混乱していく。(角川文庫)

遠い昔に読んだ天童荒太の 『悼む人』 を思い出しました。これから紹介するのは、「白兎」 と名乗る少年がする、時空を超えた四つのをめぐる物語です。時を選ばず、彼は 「真っ当に」 死にたいと願う人のところへ現れます。

四冊共に講談社から刊行された単行本が、加筆修正され改題されて新たに角川文庫より発行されました。順に言いますと、

第一作 『緋色の稜線』 -  旧題 『白兎 1 透明な旅路と』
第二作 『藤色の記憶』 -  旧題 『白兎 2 地に埋もれて』
第三作 『藍色の夜明け』 - 旧題 『白兎 3 蜃楼の主』
第四作 『白磁の薔薇』 -  旧題 『白兎 4 天国という名の組曲』

となります。

実は、私は第三作の 『藍色の夜明け』 をたまたま書店で見つけて、最初に読みました。(すでにブログにアップしてあります) これが、予想以上に面白かった。あり得ない世界のことが書いてあるのに、気にもならずにするっと読めました。

おそらくそれは、「白兎」 と名乗る少年 (の非現実さ) とは対照的に、彼が関わる人物の過去や人生に並々ならぬリアルを感じたからでしょう。主役の誰もがどこにもいそうな人間で、皆が心に傷を抱えています。哀しい過去を経験しています。

はじめ彼ら彼女らは、生きているのか死んでいるのか定かではありません。あるいは、死に逝く途中であるような・・・・・・・

突然目の前に現れた白兎という少年は、神か仏か、それとも生死の狭間を往来する御霊の化身のような存在なのでしょうか。彼は死に逝く者に寄り添い、死者が死者らしく死ねるよう、その時までを見届けようとしています。

この本を読んでみてください係数 80/100

緋色の稜線 (角川文庫)

◆あさの あつこ
1954年岡山県英田郡美作町(現:美作市)湯郷生まれ。
青山学院大学文学部卒業。

作品 「ほたる館物語」「バッテリー」「バッテリーⅡ」「たまゆら」他多数

関連記事

『我が家の問題』(奥田英朗)_書評という名の読書感想文

『我が家の問題』奥田 英朗 集英社文庫 2014年6月30日第一刷 我が家の問題 (集英社文庫

記事を読む

『あたしたち、海へ』(井上荒野)_書評という名の読書感想文

『あたしたち、海へ』井上 荒野 新潮文庫 2022年6月1日発行 親友同士が引き裂か

記事を読む

『四とそれ以上の国』(いしいしんじ)_書評という名の読書感想文

『四とそれ以上の国』いしい しんじ 文春文庫 2012年4月10日第一刷 四とそれ以上の国 (

記事を読む

『琥珀のまたたき』(小川洋子)_書評という名の読書感想文

『琥珀のまたたき』小川 洋子 講談社文庫 2018年12月14日第一刷 琥珀のまたたき (講

記事を読む

『罪の轍』(奥田英朗)_書評という名の読書感想文

『罪の轍』奥田 英朗 新潮社 2019年8月20日発行 罪の轍 奥田英朗の新刊 『罪の

記事を読む

『私の恋人』(上田岳弘)_書評という名の読書感想文

『私の恋人』上田 岳弘 新潮文庫 2018年2月1日発行 私の恋人 (新潮文庫) 一人

記事を読む

『夢に抱かれて見る闇は』(岡部えつ)_書評という名の読書感想文

『夢に抱かれて見る闇は』岡部 えつ 角川ホラー文庫 2018年5月25日初版 夢に抱かれて見る

記事を読む

『ふがいない僕は空を見た』(窪美澄)_書評という名の読書感想文

『ふがいない僕は空を見た』窪 美澄 新潮文庫 2012年10月1日発行 ふがいない僕は空を見た

記事を読む

『クジラの彼』(有川浩)_書評という名の読書感想文

『クジラの彼』有川 浩 角川文庫 2010年6月25日初版 クジラの彼 (角川文庫) &

記事を読む

『静かにしなさい、でないと』(朝倉かすみ)_書評という名の読書感想文

『静かにしなさい、でないと』朝倉 かすみ 集英社文庫 2012年9月25日第1刷 静かにしな

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

『カインの傲慢/刑事犬養隼人』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『カインの傲慢/刑事犬養隼人』中山 七里 角川文庫 2022年6月2

『カゲロボ』(木皿泉)_書評という名の読書感想文

『カゲロボ』木皿 泉 新潮文庫 2022年6月1日発行

『あたしたち、海へ』(井上荒野)_書評という名の読書感想文

『あたしたち、海へ』井上 荒野 新潮文庫 2022年6月1日発行

『白昼夢の森の少女』(恒川光太郎)_書評という名の読書感想文

『白昼夢の森の少女』恒川 光太郎 角川ホラー文庫 2022年5月25

『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』(李龍徳)_書評という名の読書感想文

『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』李 龍徳 河出書房 2022年3月

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑