『本を読んだら散歩に行こう』(村井理子)_書評という名の読書感想文

『本を読んだら散歩に行こう』村井 理子 集英社 2022年12月11日第3刷発行

実兄の突然死をめぐる 『兄の終い』、認知症の義母を描く 『全員悪人』、壊れてしまった実家の家族について触れた 『家族』。大反響のエッセイを連発する、人気翻訳家の村井理子さん。認知症が進行する義母の介護、双子の息子たちの高校受験、積み重なりゆく仕事、長引くコロナ禍・・・・・・・ハプニング続きの日々のなかで、愛犬のラブラドール、ハリーを横に開くのは、読書家としても知られる著者の読書案内を兼ねた濃厚エピソード満載のエッセイ集。

「本は私が必要とするそのときまで、じっと動かず、静かにそこで待っていてくれる。人間は信用できない。信用できるのは、本、それから犬だけだ」 (本書 「はじめに」 より一部抜粋)

以下、目次一部。
突然死した兄の汚部屋の饒舌さ/本とともにやってきたはじめての本気の恋/お弁当時間、女子中学生の憂鬱/金色の目をした黒猫の残像/母の葬儀は、本人希望のレディースセット/十回目の三月十一日に愛犬の横で流す涙/焼酎4リットルパックが伝える兄の最期のメッセージ/実家から去っていった大切なペットたち/中学三年受験生の悩める母の夏/夫の両親に贈った大型テレビの行く末/仕事のやる気スイッチを押した最恐物件/四十代とは違う五十代の本当の恐ろしさ/流れの速い川を進む兄と、母の叫び声/認知症進行中の義母の舌に残る菓子の味/実兄よりも兄として慕った音信不通のままの男性/義両親と過ごす修行を経て戻った大好きな正月・・・・・・・他、全40章。(集英社)

(本に巻かれた) 帯は、こうです。

大反響重版!

本の中に、自分の体験や感情に近いものを見つけると、ほっとする。
いま、こうやって、わたしが村井さんの本に慰められたように。 中島京子小説家

なぜ人生には本が必要なのか、
その秘密が著者の人生を通して描かれている。 三砂慶明 (「読書室主宰

笑わせてくれる一篇もあれば、
素晴らしい掌編小説を思わせる一篇もある。 宮下奈都小説家


誠に情けなくはありますが、嘘は書けません。結論を言いますと、買ったのは - 完全に失敗でした。

但し、内容がどうこうというのではありません。そもそもが、私が読みたいと思うものではなかったということです。大きな勘違いでした。よく確かめもせず、買った私が悪かった。

読むと、この本が評判で、売れているのはよくわかります。平易な文章で、庶民目線で、そのうえ生活全般にわたる著者の興味のありどころ、目のつけどころは、言わずとも読者の気を惹くことでしょう。

著者が書いたもので読んだのは 『兄の終い』 ただ一冊で、このとき村井理子という人を初めて知りました。彼女は翻訳家であり、人気のエッセイストであるわけですが -、小説家ではありません。

『兄の終い』 を小説のように読んだ私は、(もう一度言います、よく確かめもせず) これもてっきり小説だと、迷うことなく手に取ったのでした。

家に帰り、本を開き、「はじめに」 を読むとすぐに気が付きました。これは著者が読んだものの中から自らチョイスした、あらゆる日常生活を送るうえでの、知恵と勇気と元気を与える 「おススメ本」 の紹介のためのエッセイ集なんだと・・・・・・・。

一日ですぐに読めました。『兄の終い』 についてのエピソードなんかもあり、興味深く面白くもあったのですが、もしも内容がこうだとわかっていれば、たぶん私はこの本は買わなかっただろうと。私ではなく、他の誰かのためにある本だと思うからです。

この本を読んでみてください係数 80/100

◆村井 理子
1970年静岡県生まれ。翻訳家/エッセイスト

作品 「犬ニモマケズ」「犬(きみ)がいるから」「村井さんちのぎゅうぎゅう焼き」「ブッシュ妄言録」「兄の終い」他多数

関連記事

『田舎の紳士服店のモデルの妻』(宮下奈都)_書評という名の読書感想文

『田舎の紳士服店のモデルの妻』宮下 奈都 文春文庫 2013年6月10日第一刷 東京から夫の故郷に

記事を読む

『晩夏 少年短篇集』(井上靖)_書評という名の読書感想文

『晩夏 少年短篇集』井上 靖 中公文庫 2020年12月25日初版 たわいない遊び

記事を読む

『パッキパキ北京』(綿矢りさ)_書評という名の読書感想文

『パッキパキ北京』綿矢 りさ 集英社 2023年12月10日 第1刷 味わい尽くしてやる、こ

記事を読む

『プラナリア』(山本文緒)_書評という名の読書感想文

『プラナリア』山本 文緒 文春文庫 2020年5月25日第10刷 どうして私はこん

記事を読む

『ひと呼んでミツコ』(姫野カオルコ)_書評という名の読書感想文

『ひと呼んでミツコ』姫野 カオルコ 集英社文庫 2001年8月25日第一刷 彼女はミツコ。私立薔薇

記事を読む

『推定脅威』(未須本有生)_書評という名の読書感想文

『推定脅威』未須本 有生 文春文庫 2016年6月10日第一刷 - ごく簡単に紹介すると、こんな

記事を読む

『殺人出産』(村田沙耶香)_書評という名の読書感想文

『殺人出産』村田 沙耶香 講談社文庫 2016年8月10日第一刷 今から百年前、殺人は悪だった。1

記事を読む

『偏愛読書館/つかみどころのない話』(林雄司)_書評という名の読書感想文

『偏愛読書館/つかみどころのない話』林 雄司 本の話WEB 2016年5月12日配信 http:/

記事を読む

『プリズム』(貫井徳郎)_書評という名の読書感想文

『プリズム』貫井 徳郎 創元社推理文庫 2003年1月24日 初版 女性教師はなぜ

記事を読む

『花の鎖』(湊かなえ)_書評という名の読書感想文

『花の鎖』湊 かなえ 文春文庫 2018年8月1日19刷 両親を亡くし仕事も失った矢先に祖母がガン

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『ケモノの城』(誉田哲也)_書評という名の読書感想文

『ケモノの城』誉田 哲也 双葉文庫 2021年4月20日 第15刷発

『嗤う淑女 二人 』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『嗤う淑女 二人 』中山 七里 実業之日本社文庫 2024年7月20

『闇祓 Yami-Hara』(辻村深月)_書評という名の読書感想文

『闇祓 Yami-Hara』辻村 深月 角川文庫 2024年6月25

『地雷グリコ』(青崎有吾)_書評という名の読書感想文 

『地雷グリコ』青崎 有吾 角川書店 2024年6月20日 8版発行

『アルジャーノンに花束を/新版』(ダニエル・キイス)_書評という名の読書感想文

『アルジャーノンに花束を/新版』ダニエル・キイス 小尾芙佐訳 ハヤカ

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑