『本を読んだら散歩に行こう』(村井理子)_書評という名の読書感想文
公開日:
:
最終更新日:2024/01/06
『本を読んだら散歩に行こう』(村井理子), 作家別(ま行), 書評(は行), 村井理子
『本を読んだら散歩に行こう』村井 理子 集英社 2022年12月11日第3刷発行
実兄の突然死をめぐる 『兄の終い』、認知症の義母を描く 『全員悪人』、壊れてしまった実家の家族について触れた 『家族』。大反響のエッセイを連発する、人気翻訳家の村井理子さん。認知症が進行する義母の介護、双子の息子たちの高校受験、積み重なりゆく仕事、長引くコロナ禍・・・・・・・ハプニング続きの日々のなかで、愛犬のラブラドール、ハリーを横に開くのは、読書家としても知られる著者の読書案内を兼ねた濃厚エピソード満載のエッセイ集。
「本は私が必要とするそのときまで、じっと動かず、静かにそこで待っていてくれる。人間は信用できない。信用できるのは、本、それから犬だけだ」 (本書 「はじめに」 より一部抜粋)
以下、目次一部。
突然死した兄の汚部屋の饒舌さ/本とともにやってきたはじめての本気の恋/お弁当時間、女子中学生の憂鬱/金色の目をした黒猫の残像/母の葬儀は、本人希望のレディースセット/十回目の三月十一日に愛犬の横で流す涙/焼酎4リットルパックが伝える兄の最期のメッセージ/実家から去っていった大切なペットたち/中学三年受験生の悩める母の夏/夫の両親に贈った大型テレビの行く末/仕事のやる気スイッチを押した最恐物件/四十代とは違う五十代の本当の恐ろしさ/流れの速い川を進む兄と、母の叫び声/認知症進行中の義母の舌に残る菓子の味/実兄よりも兄として慕った音信不通のままの男性/義両親と過ごす修行を経て戻った大好きな正月・・・・・・・他、全40章。(集英社)
(本に巻かれた) 帯は、こうです。
大反響重版!
本の中に、自分の体験や感情に近いものを見つけると、ほっとする。
いま、こうやって、わたしが村井さんの本に慰められたように。 中島京子 (小説家)
なぜ人生には本が必要なのか、
その秘密が著者の人生を通して描かれている。 三砂慶明 (「読書室」 主宰)
笑わせてくれる一篇もあれば、
素晴らしい掌編小説を思わせる一篇もある。 宮下奈都 (小説家)
誠に情けなくはありますが、嘘は書けません。結論を言いますと、買ったのは - 完全に失敗でした。
但し、内容がどうこうというのではありません。そもそもが、私が読みたいと思うものではなかったということです。大きな勘違いでした。よく確かめもせず、買った私が悪かった。
読むと、この本が評判で、売れているのはよくわかります。平易な文章で、庶民目線で、そのうえ生活全般にわたる著者の興味のありどころ、目のつけどころは、言わずとも読者の気を惹くことでしょう。
著者が書いたもので読んだのは 『兄の終い』 ただ一冊で、このとき村井理子という人を初めて知りました。彼女は翻訳家であり、人気のエッセイストであるわけですが -、小説家ではありません。
『兄の終い』 を小説のように読んだ私は、(もう一度言います、よく確かめもせず) これもてっきり小説だと、迷うことなく手に取ったのでした。
家に帰り、本を開き、「はじめに」 を読むとすぐに気が付きました。これは著者が読んだものの中から自らチョイスした、あらゆる日常生活を送るうえでの、知恵と勇気と元気を与える 「おススメ本」 の紹介のためのエッセイ集なんだと・・・・・・・。
一日ですぐに読めました。『兄の終い』 についてのエピソードなんかもあり、興味深く面白くもあったのですが、もしも内容がこうだとわかっていれば、たぶん私はこの本は買わなかっただろうと。私ではなく、他の誰かのためにある本だと思うからです。
この本を読んでみてください係数 80/100
◆村井 理子
1970年静岡県生まれ。翻訳家/エッセイスト
作品 「犬ニモマケズ」「犬(きみ)がいるから」「村井さんちのぎゅうぎゅう焼き」「ブッシュ妄言録」「兄の終い」他多数
関連記事
-
『貞子』(牧野修)_書評という名の読書感想文
『貞子』牧野 修 角川ホラー文庫 2019年4月29日初版 ※本書は、映画 『貞子』
-
『静かに、ねぇ、静かに』(本谷有希子)_書評という名の読書感想文
『静かに、ねぇ、静かに』本谷 有希子 講談社 2018年8月21日第一刷 芥川賞受賞から2年、本谷
-
『夫婦一年生』(朝倉かすみ)_書評という名の読書感想文
『夫婦一年生』朝倉 かすみ 小学館文庫 2019年7月21日第2刷発行 新婚なった夫
-
『向こう側の、ヨーコ』(真梨幸子)_書評という名の読書感想文
『向こう側の、ヨーコ』真梨 幸子 光文社文庫 2020年9月20日初版 1974年
-
『もう「はい」としか言えない』(松尾スズキ)_書評という名の読書感想文
『もう「はい」としか言えない』松尾 スズキ 文藝春秋 2018年6月30日第一刷 主人公は初老のシ
-
『お引っ越し』(真梨幸子)_書評という名の読書感想文
『お引っ越し』真梨 幸子 角川文庫 2017年11月25日初版 内見したマンションはおしゃれな街の
-
『カンガルー日和』(村上春樹)_書評という名の読書感想文
『カンガルー日和』村上 春樹 平凡社 1983年9月9日初版 村上春樹が好きである。 私が持っ
-
『ユートピア』(湊かなえ)_書評という名の読書感想文
『ユートピア』湊 かなえ 集英社文庫 2018年6月30日第一刷 第29回 山本周五郎賞受賞作
-
『半落ち』(横山秀夫)_書評という名の読書感想文
『半落ち』横山 秀夫 講談社 2002年9月5日第一刷 「妻を殺しました」。現職警察官・梶聡一
-
『自分を好きになる方法』(本谷有希子)_書評という名の読書感想文
『自分を好きになる方法』本谷 有希子 講談社文庫 2016年6月15日第一刷 16歳のランチ、