『うちの父が運転をやめません』(垣谷美雨)_書評という名の読書感想文

『うちの父が運転をやめません』垣谷 美雨 角川文庫 2023年2月25日初版発行

親父、車の運転やめたら? バカこけ! 買い物に行けんようになって飢え死にじゃ!

田舎の親を説得できるか!? 家族に免許を返納させたい。けど、どうやって? というあなたに贈る、心温まる家族小説!

猪狩雅志は高齢ドライバー事故のニュースに目を向けた。78歳といえば親父と同じ歳だ。妻の歩美と話しているうちに心配になってきた。夏に息子の息吹と帰省した際、父親に運転をやめるよう説得を試みるが、あえなく不首尾に。通販の利用や都会暮らしのトライアル、様々な提案をするがいずれも失敗。そのうち、雅志自身も自分の将来が気になり出して・・・・・・・。父は運転をやめるのか。雅志の出した答えとは? 心温まる家族小説! (角川文庫)

身近にある問題をタイムリーに、物語はまるで見てきたようにリアルに、あくまで庶民目線で進みます。基本ユーモラスでありながら、問題は問題としてきっちり押え、最後は読者各位に貴重なヒントを与えて終わります。

きっかけは、高齢ドライバーが起こした事故のニュースでした。軽自動車が通学途中の小学生の列に突っ込み、内二人が重傷を負った模様・・・・・というものでしたが、時の雅志の関心は、事故を起こした男性ドライバーの年齢が遠く離れて暮らす父親と同じ78歳だったという点でした。

雅志は、夫婦二人で田舎で暮らす両親、特に今も当たり前 (のよう) に車を運転している (であろう) 父親が、俄然気になり出します。実はこれまでにも、雅志は父親に対し、車の運転はそろそろやめたらどうかと言ってはいたのですが、当の本人は頑固で、やめる気などさらさらないのでした。

事は、そう簡単には解決しません。(この物語の主題である) 高齢ドライバーが引き起こす事故といつどのタイミングで車の運転をやめさせるべきかという問題は、それだけに止まらず、

雅志や雅志の家族にとって (それは=誰の家族にとってもということですが)、事は 「人の一生はどうあるべきか」 という究極の難題にも連なっていきます。何気に過ぎゆく日常にあって、私たちは、いまこそ何かを考え直さなければなりません。

1975年の日本人の平均寿命は、男性71.73歳、女性76.89歳。これが2019年だと、男性81.41歳、女性87.45歳。それ以上に激変したのが家族構成だ。厚生労働省の統計で、1975年当時、三世代世帯がまだ16.9%あり、高齢者世帯 (厚労省定義では、「65歳以上のみで構成するか、またはこれに18歳未満の未婚の者が加わった世帯」) はたったの3.3%しかなかった。つまり、老人だけで暮らしているという状況は、非常にめずらしかったのである。おそらく田舎では、ほとんどなかっただろう。それが2019年になると、全世帯の28.7%が高齢者世帯である。ちなみに三世代世帯は5.1%に減少している。

だから、『うちの父が運転をやめません』 が問題なのである。田舎の両親は孤立している。車がなければ、買い物も病院に行くこともできない。自分は、都会で住宅ローンと子供の教育に縛られている。生活は共働きでやっと。狭いマンションの部屋は、便利な道具で溢れているが、家族はそれぞれの時間に縛られてすれ違い続け、まともな会話さえない。高齢者の運転する車が、通学中の子供の列に突っ込むという悲劇が、くり返し報道される。垣谷美雨は、他に交通手段がある都会の老人には同情していない。だけど、田舎に残された老人から車を取り上げていいのか。多くの都会に住む50代が直面している問題だ。はっと気が付くと、明るかったはずの未来は、どこにもない。(解説より)

では、そうならないためにはどんな手を打つべきか? 一緒に暮らす家族を守る一方で、遠く離れた実家で暮らす両親の安否について常に心を配ることなど、できるわけがありません。それでも時は進み、父親は小さな事故を繰り返しています。

雅志は国立大学を卒業し、一流企業の家電メーカーで研究職として働いています。そんな息子のことを、両親は誰よりも愛し、誇りに思っています。滅多なことでは、帰って来いとは言えません。

この本を読んでみてください係数  85/100

◆垣谷 美雨
1959年兵庫県豊岡市生まれ。
明治大学文学部文学科フランス文学専攻卒業。

作品 「竜巻ガール」「ニュータウンは黄昏れて」「後悔病棟」「農ガール、農ライフ」「老後の資金がありません」「夫の墓には入りません」「姑の遺品整理は、迷惑です」他多数

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