『怪物の木こり』(倉井眉介)_書評という名の読書感想文
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最終更新日:2024/01/05
『怪物の木こり』(倉井眉介), 作家別(か行), 倉井眉介, 書評(か行)
『怪物の木こり』倉井 眉介 宝島社文庫 2023年8月10日 第6刷発行

第17回 『このミステリーがすごい! 』大賞受賞作 強烈な個性に選考委員たちも瞠目!
すべては二十六年前、十五人以上もの被害者を出した、児童連続誘拐殺人事件に端を発していて・・・・・。自分は怪物なのか・・・・・・・ では人とは何なのか・・・・・・・ 善悪がゆらいでいく主人公に 「泣ける! 」 との声もあがったサイコ・スリラー、待望の文庫化!
良心の呵責を覚えることなく、自分にとって邪魔な者たちを日常的に何人も殺してきたサイコパスの辣腕弁護士・二宮彰。ある日、彼が仕事を終えマンションへ帰ってくると、突如 「怪物マスク」 を被った男に襲撃され、斧で頭を割られかけた。九死に一生を得た二宮は、男を捜し出して復讐することを誓う。一方そのころ、頭部を開いて脳味噌を持ち去る連続猟奇殺人が世間を賑わしていた - 。(宝島社文庫)
ずいぶんと評判がいいらしい - というのは実はあとから知ったことで、私はもともと 「サイコ」 と名がつく本に目がありません。帯に 「サイコ」 や 「ノワール」 などの文字が並ぶと、もういけません。後先考えず、とにもかくにも買ってしまいます。
中に駄作があるにはありますが、それは百も承知の上、何冊かに一冊の確率で 『怪物の木こり』 のような本に出合えればいいわけで、私にとってそれはもはや旬の果物をその時季初めて買うような感覚で、当たり外れは時の運と諦めて、続けていると、ときに買った値段以上の物を手にすることができます。
物語は、〈魔女の館〉 と呼ばれた洋館の中へ静岡県警の捜査官たちが踏みこむ場面から幕を開ける。魔女の名は、東間翠。四人の幼児が保護されたほか、館の裏庭から十五体の小さな遺体が発見された。
それから二十六年後、二宮彰という男をめぐる奇妙な事件が巻き起こる。そのころ、一ヶ月ほどまえから連続して起きた殺人事件が話題になっていた。四人もの人間が同じ方法で殺されていたのだ。そんなとき二宮は、何者かに付け狙われた。すぐにその尾行者の男をつかまえ、気絶させたのち、廃倉庫に連れて行った。目的を聞きただしたあと、男を殺した。なんと二宮はサイコパスで、平然と人の命を奪う殺人鬼だった。
その一週間後、二宮は自宅マンションの地下駐車場で、思いもよらぬ状況に遭遇する。レインコート姿に怪物のマスクをかぶるという異様ないでたちの男が、手斧をかかげ、二宮の頭に向けて振り下ろそうとしていた。殺意をもって襲いかかってきたのだ。
二宮をつけ狙い、マスク姿で手斧を持ち襲いかかる 〈怪物の木こり〉 とは、はたして何者なのか。(解説より)
現実には起こり得ない話だとわかっていながら、それでも引き込まれてしまうのは、人の、どんな感性や感覚のせいなのでしょう? 二宮が人を殺す潔さを、潔いと感じてしまうのは。人としてどうなのでしょう。
- 改めて確認しておくならば、主人公の二宮はなんら良心を痛めず人に暴力を加えたり、殺したりする男だ。自己中心的で傲慢な態度を隠さず、その場で適当な嘘や言い逃れをどうどうと口にできる。一方、他人に対して共感したり、優れた芸術作品に感涙したりするなどの情動はきわめて乏しい。
荷見映美と付き合ってはいるが、恋愛感情はみじんもない。自身が顧問をつとめる不動産屋の社長令嬢だというコネやカネに絡む打算あるのみ。すなわち、心をもたず、どこまでも人でなしである。
しかし、弁護士であることから分かるようにすぐれた知能を持つ男だ。頭の回転がはやく、雄弁で行動力もある。世間から見れば、有能で強い男。二宮がサイコパスになった理由は、のちに明かされるが、そんな二宮の身に降りかかった怪事件、すなわち、怪物の木こりに斧で襲われたことを通じて彼がどのように変貌を遂げてゆくのか、それが本作の大きなテーマとなっているのだ。(同解説)
※サイコパスの二宮は、いとも簡単に人を殺します。迷うことがありません。彼は、なぜそんな人間になってしまったのでしょう。生まれついての運命か? それとも・・・・
この本を読んでみてください係数 85/100

◆倉井 眉介
1984年神奈川県横浜市戸塚区生まれ。
帝京大学文学部心理学科卒業。
作品 第7回 『このミステリーがすごい大賞! 』 を受賞し、2019年に本作でデビュー。
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