『明日も会社にいかなくちゃ』(こざわたまこ)_書評という名の読書感想文
公開日:
:
最終更新日:2024/01/05
『明日も会社にいかなくちゃ』(こざわたまこ), こざわたまこ, 作家別(か行), 書評(あ行)
『明日も会社にいかなくちゃ』こざわ たまこ 双葉文庫 2023年9月16日第1刷発行
共感しすぎて胸が痛い。「働く」 から起こる人間模様を丁寧に描いた連作短編集。
もうダメかもと思って足掻いて、そして彼らは道をみつける。だから希望がある。救いがある。 - 大矢博子 (書評家)
吉丸事務機株式会社で働く優紀。断れない性格で、いわゆる中間管理職のポストを任される。適任だとは到底思えない。頼りない上司、嚙み合わない部下、何か言いたげな同期。小さな会社で起こる人間関係のもつれや行き違いが優紀を悩ませる。状況を改善しようと奔走するが - 。「走れ、中間管理職」 ほか全六篇を収録。会社勤めはなんだかせつない。その気持ちに寄り添う 「働く」 を描いた連作短編集。(双葉文庫)
(私事ですが) 大学を出て、京都のとある信用金庫に就職し、そこを1年で辞めました。再就職したのは地元の企業で、そこで約24年働きました。49歳のとき、ふいに、しかし激しくそこを辞めたいと思うに至り、躊躇なく退社を決めました。
その後のあてなど何もなく、しかし、そのまま何もしないわけにはいきません。しばらくの後、とあるベンチャー企業へ正社員として採用されたのは、今思えば奇跡のような出来事でした。それから10年。60歳を前に、もういいだろう、と。
思うに、長い間私は、働く “フリ“ をしていただけではないかと思います。調子を合わせ、真面目を装い、その実、心はいつもどこか遠くにありました。仕事を辞めたい。辞めて、静かに暮らしたい。そればかりを考えていました。
【目次】
「走れ、中間管理職」 人間関係のトラブルで中間管理職が奔走!
「スポットライト」 パッとしない中年課長の意外な一面とは
「エールはいらない」 厳しい元上司が育休から復帰。“助け合い“ って?
「親子の条件」 お酒さえ飲まなければ・・・・・・・営業マンが犯した罪
「輪になって踊ろう」 休職中の若手社員にできた新しい友達
「最後の日」 定年退職後の男性が向き合うのは
きっとどの話にも 「あなた」 がいます。「あなた」 は思うほど、強くなんかありません。
この本を読んでみてください係数 85/100
◆こざわ たまこ
1986年福島県原町市(現・南相馬市原町区)生まれ。
専修大学文学部卒業。
作品 2012年「僕の災い」で「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞。同作を収録した 「負け逃げ」でデビュー。他に 「君には、言えない」「教室のゴルディロックスゾーン」など
関連記事
-
『田舎の紳士服店のモデルの妻』(宮下奈都)_書評という名の読書感想文
『田舎の紳士服店のモデルの妻』宮下 奈都 文春文庫 2013年6月10日第一刷 東京から夫の故郷に
-
『海を抱いて月に眠る』(深沢潮)_書評という名の読書感想文
『海を抱いて月に眠る』深沢 潮 文春文庫 2021年4月10日第1刷 世代も国境も
-
『おもかげ』(浅田次郎)_書評という名の読書感想文
『おもかげ』浅田 次郎 講談社文庫 2021年2月17日第4刷発行 孤独の中で育ち
-
『あひる』(今村夏子)_書評という名の読書感想文
『あひる』今村 夏子 書肆侃侃房 2016年11月21日第一刷 あひるを飼うことになった家族と学校
-
『あくてえ』(山下紘加)_書評という名の読書感想文
『あくてえ』山下 紘加 河出書房新社 2022年7月30日 初版発行 怒濤である。出口のない
-
『真夜中のメンター/死を忘れるなかれ』(北川恵海)_書評という名の読書感想文
『真夜中のメンター/死を忘れるなかれ』北川 恵海 実業之日本社文庫 2021年10月15日初版第1
-
『 A 』(中村文則)_書評という名の読書感想文
『 A 』中村 文則 河出文庫 2017年5月20日初版 「一度の過ちもせずに、君は人生を終えられ
-
『氷の致死量』(櫛木理宇)_書評という名の読書感想文
『氷の致死量』櫛木 理宇 ハヤカワ文庫 2024年2月25日 発行 『死刑にいたる病』 の著
-
『十六夜荘ノート』(古内一絵)_書評という名の読書感想文
『十六夜荘ノート』古内 一絵 中公文庫 2017年9月25日初版 英国でこの世を去った大伯母・玉青
-
『熱源』(川越宗一)_書評という名の読書感想文
『熱源』川越 宗一 文藝春秋 2020年1月25日第5刷 樺太 (サハリン) で生