『サンブンノニ』(木下半太)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/13 『サンブンノニ』(木下半太), 作家別(か行), 書評(さ行), 木下半太

『サンブンノニ』木下 半太 角川文庫 2016年2月25日初版

銀行強盗で得た大金を山分けし、日本各地に潜伏していたシュウ、コジ、健さん。だが、3人とも〈川崎の帝王〉破魔翔に見つかり、連れ戻されてしまう。そして命じられたのは、「〈川崎の魔女〉の現金輸送車の奪取」だった・・・・! 北海道から新たな勢力も進出し、3人はまたもや裏社会の覇権を巡る争いに巻き込まれる。息つく間もない駆け引きと騙し合い。果たしてシュウたちはどん底から抜け出せるのか? 驚異のノンストップ・エンターテイメント! (角川文庫解説より)

前に『鈴木ごっこ』という小説を読んで、これが意外と面白かったので読んでみようという気になりました。(失礼な言い方ですみません)

途中で投げ出さずとりあえず最後まで読んだので、面白く、なくはないんだろうと思います。(何といういい加減な・・)でも、本当はよくわかりません。何をどう書くべきなのかが一向に浮かばないので、いっそのこと読まなかったことにしようかと思ったくらいです。

しかし、たまには開き直って「そんな気持ちになる本だってありますよ」ということを書いておくのもいいかと・・・、読み終わっても何だか消化不良を起したようで、内容などはどうでもよくて、とりあえずなかったことにしたい、みたいなときってありません?

あとで知ったのですが、この人の「悪夢シリーズ」というのが有名らしい。そういえばこの本だって「サンブンノイチシリーズ」といってシリーズ化されたものの一冊で、(私が知らないだけで)おそらくファンは一杯いるのです。

ストーリーはしっかりしており、伏線もきっちりとあります。登場人物のキャラクターも悪くないし(私は〈川崎の魔女〉と呼ばれ恐れられている「渋柿多見子」という老婆が一番好きです)と書けば、なら面白いんじゃない! - となるわけですが・・・

何がどうでかが上手く説明できないのですが、私にはビビンと来るものがないのです。(くれぐれも言っておきますが、私に限ってはということですからあしからず)

「驚異のノンストップ・エンターテイメント」というふれ込みも、決して嘘ではありません。それはその通りなのですが、私の場合、少々期待に過ぎたのかも知れません。勝手に違うイメージを膨らませ過ぎて、自滅したような感じです。

基本軽いのはどちらも同じなのですが、『鈴木ごっこ』の方は幾分か落ち着いていたような気がします。そのイメージで読むと、『サンブンノニ』は何だかちょっと慌ただしいのです。

次々とスピーディーに場面転換するのはいいのですが、(速すぎて)何かが抜け落ちてしまうような、気持ちが置き去りになるとでも言うのでしょうか、何かを感じる前にもう次の何かが始まっていて落ち着きません。

例えば、先ほど書いた「渋柿多見子」のことであるとか、本来の主人公である「シュウ」がもっと主人公らしく、もう少し丁寧に書かれていたとしたらどうだったのでしょう。

しかしながら、そういったどれもこれもが自分勝手な弁解にも思えます。要は、もうそれなりに歳を取った私などが読むべき本ではなかったのかも知れません。

木下半太さんがどうだとか、この本がどうであるとかではなく、今どきの、やたら早口で喋り散らすような歌がちっともよく思えないのと同じで、私の、この手の小説に対する感性が少しずつ劣化しているのだろうと思わずにいられません。

この本を読んでみてください係数 75/100

◆木下 半太
1974年大阪府茨木市生まれ。
18歳で予備校に通いながらパチプロになるが、大学受験は失敗。劇団「渋谷ニコルソンズ」主宰。

作品 「悪夢のエレベーター」「悪夢の観覧車」「悪夢の六号室」「宝探しトラジェディー」「オーシティー」「サンブンノイチ」「鈴木ごっこ」他多数

関連記事

『69 sixty nine』(村上龍)_書評という名の読書感想文

『69 sixty nine』村上 龍 集英社 1987年8月10日第一刷 1969年、村上

記事を読む

『紙の月』(角田光代)_書評という名の読書感想文

『紙の月』 角田 光代  角川春樹事務所 2012年3月8日第一刷 映画 『紙の月』 の全国ロー

記事を読む

『天頂より少し下って』(川上弘美)_書評という名の読書感想文

『天頂より少し下って』川上 弘美 小学館文庫 2014年7月13日初版 『天頂より少し下って

記事を読む

『ソウル・ミュージック ラバーズ・オンリー』(山田詠美)_書評という名の読書感想文

『ソウル・ミュージック ラバーズ・オンリー』山田 詠美 幻冬舎文庫 1997年6月25日初版

記事を読む

『スリーピング・ブッダ』(早見和真)_書評という名の読書感想文

『スリーピング・ブッダ』早見 和真 角川文庫 2014年8月25日初版 敬千宗の大本山・長穏寺に2

記事を読む

『小説 シライサン』(乙一)_目隠村の死者は甦る

『小説 シライサン』乙一 角川文庫 2019年11月25日初版 乙一 4年ぶりの最

記事を読む

『切願 自選ミステリー短編集』(長岡弘樹)_書評という名の読書感想文

『切願 自選ミステリー短編集』長岡 弘樹 双葉文庫 2023年3月18日第1刷発行

記事を読む

『空飛ぶタイヤ』(池井戸潤)_書評という名の読書感想文

『空飛ぶタイヤ』 池井戸 潤 実業之日本社 2008年8月10日第一刷 池井戸潤を知らない人でも

記事を読む

『貞子』(牧野修)_書評という名の読書感想文

『貞子』牧野 修 角川ホラー文庫 2019年4月29日初版 ※本書は、映画 『貞子』

記事を読む

『殺人出産』(村田沙耶香)_書評という名の読書感想文

『殺人出産』村田 沙耶香 講談社文庫 2016年8月10日第一刷 今から百年前、殺人は悪だった。1

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『揺籠のアディポクル』(市川憂人)_書評という名の読書感想文

『揺籠のアディポクル』市川 憂人 講談社文庫 2024年3月15日

『海神 (わだつみ)』(染井為人)_書評という名の読書感想文

『海神 (わだつみ)』染井 為人 光文社文庫 2024年2月20日

『百年と一日』(柴崎友香)_書評という名の読書感想文

『百年と一日』柴崎 友香 ちくま文庫 2024年3月10日 第1刷発

『燕は戻ってこない』(桐野夏生)_書評という名の読書感想文

『燕は戻ってこない』桐野 夏生 集英社文庫 2024年3月25日 第

『羊は安らかに草を食み』(宇佐美まこと)_書評という名の読書感想文

『羊は安らかに草を食み』宇佐美 まこと 祥伝社文庫 2024年3月2

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑