『カエルの楽園 2020』(百田尚樹)_書評という名の読書感想文

『カエルの楽園 2020』百田 尚樹 新潮文庫 2020年6月10日発行

カエルの楽園2020(新潮文庫)

コロナ禍の日本に問う、衝撃の3つの結末!
国難に迷走する政治。無責任なメディア。楽園の行く末は!?

二匹のアマガエルがたどり着いた夢の楽園は悲劇的な末路を迎えたはずだったが、悪夢の翌朝、二匹はなぜか再び平和な地にいた。今度の世界では、ウシガエルの国で 「新しい病気」 が流行っていたが、楽園のカエルたちは根拠なき楽観視を続ける。しかし、やがて楽園でも病気が広がり始め・・・・・・・。国難を前に迷走する政治やメディアの愚かさを浮き彫りにし、三通りの結末を提示する、警告と希望の書。(新潮文庫)

ネットで噂の 『カエルの楽園 2020』 を読みました。

- この作品は、5月6日から11日にかけてネットで無料公開したものです。
この小説の執筆は、新型コロナウイルスの流行によって自粛生活を余儀なくされている方たちに、小説家として何かできることはないかと考えたことがきっかけです。そして、どうせ読んでいただくなら、今この時を描いた作品にしたいと思い、新型コロナウイルス騒動をテーマにしたものを書こうと決めました。(著者あとがきより)

- という作品です。2016年に刊行された 『カエルの楽園』 の続編としての 「寓話」 だということ。(もしも 『カエルの楽園』 を読んでないという方は、ぜひこの機会に一読を。読むとこの物語に登場するカエルたちが、実は、今いる人間の誰のことかがとてもよくわかると思います)

百田さんは人類が初めて経験する未知なる感染症に対し、日本における初動から今日までの迷走と混乱 - 何が正しく、何時、誰が、何を見誤ったのか。感染拡大の抑止に関し、本当に正しい判断は誰がしたのか、誰の言葉を信じればよかったのか - を、「ある意味、現実をそのままなぞった寓話」 に仕立てました。

- 私たちはふだんの日常生活において、新聞で論説委員が書いた社説やコラムを読みます。またテレビでコメンテーターや学者が語ることを聞きます。国会で議員たちが国政を論じているのを見ます。彼らはいずれも高学歴で、知識も教養もあります。それだけに、その発言ももっともらしく聞こえます。しかし、彼らをカエルに置き換えて、同じセリフを言わせてみると、実生活では気付かなかった滑稽さ、愚かさ、間抜けぶりなどが見えてくるのではないかと思っています。これが、私が 『カエルの楽園 2020』 を書いた理由です。(著者あとがきより)

物語の、ほんの一部を紹介しましょう。登場するのは、それぞれがとても個性的なカエルたちです。(ある場面の特徴的なところを抽出しています。連続した文章ではありません)

 まもなく梅の花が咲き、ウシガエルのお祝いシーズンになりました。エコノミンが言っていた通り、ウシガエルの沼からたくさんのウシガエルがナパージュにやってきました。
 ナパージュ中の美しい泉や池、あるいは森や草原には、どこへいってもウシガエルの姿がありました。ツチガエルたちの中にはウシガエルの機嫌を取ったり、ナパージュを案内してハエをもらう者がたくさんいました。

 その間も、イエストールはいろんな場所で、ウシガエルをナパージュに入れては駄目だ と声をあげていました。イエストールがあまりにも何度も言うので、ツチガエルたちの中にも不安がる者が出てきましたが、大多数のツチガエルはイエストールの妄言と笑っていました。
 ところが、ある日、ナパージュにいた一匹のツチガエルが、肺がおかしくなる病気になりました。例のウシガエルの沼で流行っていた病気とまったく同じ症状です。しかもそのツチガエルはウシガエルたちを案内してハエを貰っていたカエルでした。

 その日の元老会議で、長老格の一匹であるツーステップが、ウシガエルの国が今、病気で大変みたいだから、元老たちで、ハエを送ろう と言い出しました。元老たちは皆キョトンとした顔をしましたが、ツーステップは大真面目な顔で続けました。

今度、ウシガエルの王様をお客様としてナパージュに呼ぶのも、裏でツーステップがプロメテウスに指示したという話だよ
ツーステップの指示ですって!? ソクラテスは驚きました。元老のトップはプロメテウスでしょう。ツーステップはトップよりも偉いんですか
プロメテウスが元老のトップになれたのは、ツーステップの後押しがあったからだと言われている。最近、ナパージュに多くのウシガエルが入ってくるようになったのも、裏でツーステップが指示しているという噂だよ
 ソクラテスは、もしそれが本当なら、とても危険なことのように思いました。

誰が誰のことなのか、どこの国のことを言っているのか、考えながら読んでみてください。すぐにわかるはずです。

この本を読んでみてください係数 85/100

カエルの楽園2020(新潮文庫)

◆百田 尚樹
1956年大阪府大阪市生まれ。
同志社大学中退。

作品 「永遠の0」「海賊とよばれた男」「夢を売る男」「影法師」「フォルトゥナの瞳」「カエルの楽園」「夏の騎士」他多数

関連記事

『金魚姫』(荻原浩)_書評という名の読書感想文

『金魚姫』荻原 浩 角川文庫 2018年6月25日初版 金魚姫 (角川文庫) 金魚の歴史は、

記事を読む

『孤狼の血』(柚月裕子)_書評という名の読書感想文

『孤狼の血』柚月 裕子 角川文庫 2017年8月25日初版 孤狼の血 (角川文庫) 昭和63

記事を読む

『カエルの楽園』(百田尚樹)_書評という名の読書感想文

『カエルの楽園』百田 尚樹 新潮文庫 2017年9月1日発行 カエルの楽園 (新潮文庫) 平

記事を読む

『おはなしして子ちゃん』(藤野可織)_書評という名の読書感想文

『おはなしして子ちゃん』藤野 可織 講談社文庫 2017年6月15日第一刷 おはなしして子ちゃ

記事を読む

『少年と犬』(馳星周)_書評という名の読書感想文

『少年と犬』馳 星周 文藝春秋 2020年7月25日第4刷 【第163回 直木賞受賞作】少年

記事を読む

『カルマ真仙教事件(中)』(濱嘉之)_書評という名の読書感想文

『カルマ真仙教事件(中)』濱 嘉之 講談社文庫 2017年8月9日第一刷 カルマ真仙教事件(中

記事を読む

『グラジオラスの耳』(井上荒野)_書評という名の読書感想文

『グラジオラスの耳』井上 荒野 光文社文庫 2003年1月20日初版 グラジオラスの耳

記事を読む

『パトロネ』(藤野可織)_書評という名の読書感想文

『パトロネ』藤野 可織 集英社文庫 2013年10月25日第一刷 パトロネ  

記事を読む

『奇貨』(松浦理英子)_書評という名の読書感想文

『奇貨』松浦 理英子 新潮文庫 2015年2月1日発行 奇貨 (新潮文庫)  

記事を読む

『幸福な日々があります』(朝倉かすみ)_恋とは結婚とは、一体何なのか?

『幸福な日々があります』朝倉 かすみ 集英社文庫 2015年8月25日第1刷 幸福な日々があ

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

『物語が、始まる』(川上弘美)_書評という名の読書感想文

『物語が、始まる』川上 弘美 中公文庫 2012年4月20日9刷

『魯肉飯のさえずり』(温又柔)_書評という名の読書感想文

『魯肉飯のさえずり』温 又柔 中央公論新社 2020年8月25日初版

『理系。』(川村元気)_書評という名の読書感想文

『理系。』川村 元気 文春文庫 2020年9月10日第1刷 理

『樽とタタン』(中島京子)_書評という名の読書感想文

『樽とタタン』中島 京子 新潮文庫 2020年9月1日発行 樽

『ミーナの行進』(小川洋子)_書評という名の読書感想文

『ミーナの行進』小川 洋子 中公文庫 2018年11月30日6刷発行

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑