『後妻業』黒川博行_書評という名の読書感想文(その2)
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最終更新日:2024/01/14
『後妻業』(黒川博行), 作家別(か行), 書評(か行), 黒川博行
『後妻業』(その2) 黒川 博行 文芸春秋 2014年8月30日第一刷
※二部構成になってます。よろしければその1から読んで下さい。→『後妻業』(その1)
老人相手の結婚詐欺師。武内小夜子、69歳。職業は後妻業。
金に対する執着心は人一倍。色が黒くて、ちんちくりんの厚化粧。歳の割にはド派手な衣装で、やくざも恐れぬ度胸満点の性悪女。
小夜子は資産家の老人を誑し込んでは後妻に収まり、老人を殺した挙句に財産を奪い取る「後妻業」を生業にする女でした。
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これ、一気読み確実です。
『後妻業』という聞き慣れない言葉にまず興味を惹かれます。現代の闇社会の事実を描いた鋭い警告で、登場人物は悪い奴ばかりです。
あらすじだけ書くといかにも重く深刻で、息の詰まるような話だと思われるでしょうが、そうならないのが黒川作品たる所以です。
スピーディーな展開と芸術的な会話の妙で、最後までテンポよく読めること間違いなしのエンターテイメント小説です。
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91歳になる中瀬耕造は69歳の小夜子と同居を始めますが、夏の暑い日脳梗塞で倒れ、病院へ救急搬送されます。一命は取り留めるものの重篤な状態です。
耕造の娘である尚子と朋美が病院へ駆けつけるのですが、朋美は耕造の容態を心配しているようには見えない後妻の小夜子に強い不快感を抱きます。
もともと朋美は耕造の再婚には反対で、出会ったときから小夜子にはどこか油断のならないものを感じていたのでした。
小夜子と耕造は結婚相談所を通じて知り合いその後結婚していたのですが、それは相談所を経営する元ヤクザの柏木と小夜子が仕組んだ偽装結婚だったのです。
小夜子に魅入られたとき、耕造の財産と命はすでに失われる運命にあったのですが、まだ誰もそのことを知りません。
耕造は一進一退を繰り返した末に亡くなります。そこで交わされる姉妹との葬儀費用の分担や相続財産の多寡に及んで徐々に小夜子は本性を現します。
既に公正証書が作成されており、そこには法定の相続額を無視した多額の遺産を小夜子が相続すると遺言されていました。
耕造だけが知る株券や投資信託、定期預金類は入院中にすべて小夜子と柏木の手で解約されて現金が引き出され、取引の痕跡が消されていました。
小夜子の言動に耐え兼ねた朋美は、同級生の弁護士守屋に相談を持ちかけます。守屋は、小夜子の身辺調査を南栄総合興信所に依頼します。
興信所の調査員として仕事を請負ったのが本多という男。この元暴対担当のデカだった本多が、小説後半の主役となります。
本多は現役時代そのままに執拗に小夜子の過去を洗い出していきます。すると、繰り返し行われてきた悪行塗れの彼女の半生が明らかになってきたのです。
過去の偽装結婚とその後の死亡事故との因果関係は立証されるのか。小夜子の弟・黒澤博司と事件との関わりは。本多の調査以外のある目的とは...
追いつめられた小夜子と柏木、そして追いつめる本多はどんなラストを迎えるのか...
現実に起こった!小説『後妻業』と京都連続変死事件との奇妙な一致
この本を読んでみてください係数 90/100
◆黒川 博行
1949年愛媛県今治市生まれ。6歳の頃に大阪に移り住み、現在大阪府羽曳野市在住。
京都市立芸術大学美術学部彫刻科卒業。妻は日本画家の黒川雅子。
スーパーの社員、高校の美術教師を経て、専業作家。無類のギャンブル好き。
作品 「雨に殺せば」「切断」「アニーの冷たい朝」「暗礁」「螻蛄」「悪果」「繚乱」「キャッツアイころがった」「雷神」「蜘蛛の糸」「煙霞」「落英」「離れ折紙」他多数
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