『完璧な母親』(まさきとしか)_今どうしても読んで欲しい作家NO.1

『完璧な母親』まさき としか 幻冬舎文庫 2019年3月30日10刷

完璧な母親 (幻冬舎文庫)

八日目の蝉」 「WOMENに泣いた人はまた涙する! 母の愛の物語。
テレビで見る可哀相な事件が、まさか自分に起こるなんて思いもしなかった午後、うちの子は死んだ。

第一章は、北関東のT市で、夫や6歳の息子・波琉と3人で暮らす主婦・友高知可子の視点で描かれる。数度の流産のあと、やっと息子を無事に出産し、何の不満もない幸せな毎日を送っていた彼女を、1982年の春、不意に悲劇が襲う。波琉が池で溺死したのだ。

息子を失い悲嘆にくれていた知可子は、やがて驚くべき発想に辿りつく。波琉の誕生日と同じ日に再び子供を産むこと - つまり、もう一度 「波琉の母親」 になることだ。天に願いが通じたのか恐るべき意志力の賜物か、知可子はそれを実現する。生まれたのは息子ではなく娘だが、知可子にとってそれは重要ではない。彼女は娘に波琉子と名づけ、二度目の 「完璧な母親」 としての人生を歩みはじめた・・・・・・・。

- 娘に死んだ兄そっくりの名前をつけるにとどまらず、誕生日には二人分のプレゼントを用意し、ケーキに波琉子の年齢より7本多いろうそくを立てるなど、娘に兄の生まれ変わりであることを常に意識させ続ける育て方は明らかに常軌を逸している。

知可子の視点から描かれるだけに、彼女の中に根を張る波琉子は波琉の生まれ変わりであるという思い込みの強さと、それを正当化する論理には慄然とさせられる。それは客観的には狂気に近い心理状態だが、彼女にとってはその正しさは自分で腹を痛めた母親にしかわからないという確信がある。夫や娘の担任がいかに子育てのやり方をたしなめようとも、彼女の信念が揺らぐことはない。(解説からの抜粋/省略有)

波琉子は、それでも母を愛さずにはいられません。

幸せでありたいと願う気持ちが度を超すと、えてしてそれは逆の結果をもたらすことになります。無理が高じて、予期せぬ事態を招くことになります。摑めたはずの幸せを、掴み損ねてしまうことにもなり兼ねません。

波琉子にとって母・知可子は、どんな存在だったのでしょう。今いる自分よりもなお、死んだ兄を愛しく思う母は、幼い彼女にどんな思いをもたらしたのでしょう。

憎んでも、憎んでも憎み切れずに、それでも憎まずにはいられない波琉子の魂は、やがて明かされる兄・波琉の死の真相に、吸い寄せられるように近づいていきます。

この本を読んでみてください係数 85/100

完璧な母親 (幻冬舎文庫)

◆まさき としか
1965年東京都生まれ。北海道札幌市育ち。

作品 「夜の空の星の」「熊金家のひとり娘」「いちばん悲しい」「途上なやつら」「きわこのこと」「ゆりかごに聞く」「屑の結晶」他

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