『きみは誤解している』(佐藤正午)_書評という名の読書感想文

『きみは誤解している』佐藤 正午 小学館文庫 2012年3月11日初版


きみは誤解している (小学館文庫)

出会いと別れ、切ない人生に輝く一瞬と普遍的な人間心理を、競輪場を舞台に透明感あふれる文章で綴った珠玉の作品集。(小学館文庫)

競輪場を舞台に綴られた切ない6つの物語

きみは誤解している -「ねえ聞いてるの? 自分のことを僕って呼ぶ人間がギャンブラーになんかなれるわけないって、あたしは言ったのよ」 彼女はたしなめるように彼に言う。彼は彼女の婚約者で、唯一の趣味が競輪。死期が近づく父親の当たり車券を元手に、これを最後にと、彼は大きな勝負に挑もうとする。

遠くへ - 信用組合に勤める女が、別府の競輪場でギャンブルの真髄を見い出した話。
この退屈な人生 - 十三年間、競輪で儲けた金で独りぼっちで暮らす男の話。

女房はくれてやる - 夜明けのくしゃみと三万円分のはずれ車券のせいで、夫婦のあいだに波風が立ちはじめた鮨職人の言い分。
うんと言ってくれ - 賭けに負けたことがない女子高生の、競輪場でする淡い恋の話。

人間の屑 - 八年前のある出来事をきっかけに車券を買わなくなった男が、会社の金を持ち出したという兄を追い、佐世保競輪場へと向かう。

※「人間の屑」追記(解説より)
付けも付けたりというタイトルに怯む読者もあろう。ギャンブルに憑かれた男と、その男に魅了されてしまった女。その両者の間に居心地悪く身をおく主人公の男は、なすすべもないまま彼らのために右往左往させられる。(後略)

- この作品において、人間のクズとは誰が、誰に向かって言ったのか。何をしてそう言わしめたのか - 正しいことが実はそうではないような、そんな感じがしてきます。

賭け事なんかに興味はない、競輪のことなんて何も知らない、というあなた。どうか、それを理由に読まずにおかないでください。これは競輪についてを語った本ではありません。たまたま競輪ではありますが、ここには生きるがための普遍的な命題、人生の「ままならなさ」が語られています。

 

この本を読んでみてください係数 85/100


きみは誤解している (小学館文庫)

◆佐藤 正午
1955年長崎県生まれ。
北海道大学文学部中退。

作品 「永遠の1/2」「Y」「リボルバー」「個人教授」「アンダーリポート/ブルー」「彼女について知ることのすべて」「身の上話」「鳩の撃退法」「月の満ち欠け」他多数

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