『憧れの作家は人間じゃありませんでした』(澤村御影)_書評という名の読書感想文

『憧れの作家は人間じゃありませんでした』澤村 御影 角川文庫 2017年4月25日初版

今どき流行りの、軽いタッチのコメディー&ミステリー。魔が差して買ってみました。

“おじさん” は途中で止めるかも、と思いつつ読み出したのですが、(あり得ない設定ではありながら) これがなかなかに面白い。売れているのがわかります。

文芸編集者2年目の瀬名あさひは、憧れの作家で覆面作家でもある、御崎禅の担当となる。御崎禅の担当には三つの注意事項があり、「昼間は連絡しない」「銀製品は身につけない」「警察には気をつけろ」とのことだった。あさひと御崎禅は共に映画好きで意気投合するが、実は御崎禅は吸血鬼であり、人外の存在が起こした事件について、警察に捜査協力しているとのことだった。

警察の捜査よりも新作原稿を書いてもらいたいあさひは、警視庁の林原夏樹刑事が持ってくる事件を、御崎禅と共に解決していくことになる。座敷童が誘拐されたり、黒い犬のお化けが出たり、吸血鬼によると思われる事件が起きたりと、様々な事件が持ち込まれる中、あさひはやがて、御崎禅がかつては人間であったこと、そしてそこに秘められた悲しい過去を知っていく。(角川書店)

◎メインキャスト
瀬名あさひ(せな・あさひ)
希央社入社2年目の文芸編集担当者。あがり症。いつも前向きで一生懸命。重度の映画オタク。憧れの作家、御崎禅の担当をすることに。

御崎禅(みさき・ぜん)
幻想恋愛小説家。経歴、顔、性別、年齢を一切オープンにしていない。が、実は吸血鬼。人外が起こした事件に関して、警視庁に協力している。

林原夏樹(はやしばら・なつき)
警視庁捜査一課異質事件捜査係の刑事。人外が関与する事件、及びその関与が疑われる事件が起きた際、御崎協力の下、秘密裏にそれを処理している。

「憧れの作家は人間じゃありませんでした」シリーズ第一作(この本のこと。実は「シリーズ2」「シリーズ3」が既に発売されています)の目次

第一章 座敷童誘拐事件 - 憧れの作家は人間じゃありませんでした -
大ファンだった御崎禅の担当になったあさひ。初の仕事は、夏樹と共に向かった政治家の家。ずっと棲んでいた座敷童がいなくなったので探して欲しいと言われたが・・・・・・・。

第二章 黒い犬事件 - 彼はずっと待っていたのです -
井の頭公園に出た犬の化け物。正体を突き止めに、御崎たちは向かうことに。

第三章 女子大生監禁吸血事件 - 彼が人でなくなった理由 -
世田谷の路上で女子大生が事故死した。解剖の結果、生前に大量の血が抜かれていた。重要参考人として御崎禅が捕まってしまう。あさひは御崎禅を助けられるのか。

ただ面白いというだけではなく、おそらくは若い人にとっては、何がしか自分の人生と照らし合わせて読むような - 特にあさひと同じ女性には - そんな気にもなるのでしょう。自分も彼女みたいになれそうな、夏樹と似た人物にめぐり逢えそうな、そんな気持ちになって元気が出るのだと思います。

この本を読んでみてください係数 80/100

◆澤村 御影
神奈川県横浜市生まれ。女性。

作品 「吸血鬼と映画を - 憧れの作家は人間じゃありませんでした -」 で第2回角川文庫キャラクター小説大賞 《大賞》 を受賞してデビュー。

関連記事

『悪逆』(黒川博行)_書評という名の読書感想文

『悪逆』黒川 博行 朝日新聞出版 2023年10月30日 第1刷発行 過払い金マフィア、マル

記事を読む

『幻年時代』(坂口恭平)_書評という名の読書感想文

『幻年時代』坂口 恭平 幻冬舎文庫 2016年12月10日初版 4才の春。電電公社の巨大団地を出て

記事を読む

『Mの女』(浦賀和宏)_書評という名の読書感想文

『Mの女』浦賀 和宏 幻冬舎文庫 2017年10月10日初版 ミステリ作家の冴子は、友人・亜美から

記事を読む

『麦本三歩の好きなもの 第一集』(住野よる)_書評という名の読書感想文

『麦本三歩の好きなもの 第一集』住野 よる 幻冬舎文庫 2021年1月15日初版

記事を読む

『ウィメンズマラソン』(坂井希久子)_書評という名の読書感想文

『ウィメンズマラソン』坂井 希久子 ハルキ文庫 2016年2月18日第一刷 岸峰子、30歳。シ

記事を読む

『蟻の棲み家』(望月諒子)_書評という名の読書感想文

『蟻の棲み家』望月 諒子 新潮文庫 2021年11月1日発行 誰にも愛されない女が

記事を読む

『赤目四十八瀧心中未遂』(車谷長吉)_書評という名の読書感想文

『赤目四十八瀧心中未遂』車谷 長吉 文芸春秋 1998年1月10日第一刷 時々この人の本を読

記事を読む

『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』(江國香織)_書評という名の読書感想文

『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』江國 香織 集英社 2002年3月10日第一刷 It

記事を読む

『悪い夏』(染井為人)_書評という名の読書感想文

『悪い夏』染井 為人 角川文庫 2022年1月5日8版発行 クズとワルしか出てこな

記事を読む

『いつか深い穴に落ちるまで』(山野辺太郎)_書評という名の読書感想文

『いつか深い穴に落ちるまで』山野辺 太郎 河出書房新社 2018年11月30日初版

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『友が、消えた』(金城一紀)_書評という名の読書感想文

『友が、消えた』金城 一紀 角川書店 2024年12月16日 初版発

『連続殺人鬼カエル男 完結編』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『連続殺人鬼カエル男 完結編』中山 七里 宝島社 2024年11月

『雪の花』(吉村昭)_書評という名の読書感想文

『雪の花』吉村 昭 新潮文庫 2024年12月10日 28刷

『歌舞伎町ゲノム 〈ジウ〉サーガ9 』(誉田哲也)_書評という名の読書感想文

『歌舞伎町ゲノム 〈ジウ〉サーガ9 』誉田 哲也 中公文庫 2021

『ノワール 硝子の太陽 〈ジウ〉サーガ8 』(誉田哲也)_書評という名の読書感想文

『ノワール 硝子の太陽 〈ジウ〉サーガ8 』誉田 哲也 中公文庫 2

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑