『青くて痛くて脆い』(住野よる)_書評という名の読書感想文
公開日:
:
最終更新日:2020/09/15
『青くて痛くて脆い』(住野よる), 住野よる, 作家別(さ行), 書評(あ行)
『青くて痛くて脆い』住野 よる 角川書店 2018年3月2日初版
『君の膵臓をたべたい』 著者が放つ、最旬青春小説!
人に不用意に近づきすぎないことを信条にしていた大学1年生の春、僕は秋好寿乃に出会った。空気の読めない発言を連発し、周囲から浮いていて、けれど誰よりも純粋だった彼女。秋好の理想と情熱に感化され、僕たちは二人で「モアイ」という秘密結社を結成した。
それから3年。あのとき将来の夢を語り合った秋好はもういない。僕の心には、彼女がついた嘘が棘のように刺さっていた。「僕が、秋好の残した嘘を、本当に変える」
それは僕にとって、世間への叛逆を意味していた - 。(角川書店)
秋好は、「(大学) 四年間でなりたい自分になる」と宣言します。
僕(田端楓)は、秋好の言う 「青臭く、イタい」 理想に半ば呆れつつ、しかし結局は彼女の熱意に負けて、二人して秘密のサークル「モアイ」を結成します。
「モアイ」は思いのほか速いテンポで仲間を増やし、やがて楓のイメージとは裏腹に、およそ違うものへと変貌を遂げます。
かつていた秋好はいなくなり、楓は「モアイ」を辞めようと決意します。楓にとり、その頃の「モアイ」の活動は、就職を目論む学生たちが目当ての企業に擦り寄るだけの「就活サークル」としか思えなくなっていました。
※彼にはこうと決めた自分なりの「規範」があります。楓は、
あらゆる自分の行動には相手を不快にさせてしまう可能性がある。しかるに、人に不用意に近づきすぎないこと。誰かの意見に反する意見を出来るだけ口に出さないこと。
そうしていれば少なくとも自分から誰かを不快にさせる機会は減らせるし、そうして不快になった誰かから傷つけられる機会も減らせる、と考えています。
・・・・・・・・・
楓は、秋好が「嘘をついた」と思っています。思いもしない彼女の「変節」を、楓は(自分で決めた「自分」を忘れたように)強く非難します。何としても認めようとしません。
あらぶる楓に対し、秋好は - 叶えたいものに辿り着くために、手段と努力と方法がいるの。それを、考えてやってきた。- と主張します。
互いの思いはすれ違い、二人は二度と交わりません。秋好は傷つき、楓は、秋好よりもなお深い傷を負います。脆く、頽れた青春に、
僕たちは、あの頃なりたかった自分になれたのだろうか。
この本を読んでみてください係数 80/100
◆住野 よる
1990年生まれの28歳(らしい)。大阪府在住。男性。
作品 「また、同じ夢を見ていた」「よるのばけもの」「か「」く「」し「」ご「」と「」「君の膵臓をたべたい」など
関連記事
-
-
『悪寒』(伊岡瞬)_啓文堂書店文庫大賞ほか全国書店で続々第1位
『悪寒』伊岡 瞬 集英社文庫 2019年10月22日第6刷 悪寒 (集英社文庫) 男は
-
-
『大人になれない』(まさきとしか)_歌子は滅多に語らない。
『大人になれない』まさき としか 幻冬舎文庫 2019年12月5日初版 大人になれない (幻
-
-
『 i (アイ)』(西加奈子)_西加奈子の新たなる代表作
『 i (アイ)』西 加奈子 ポプラ文庫 2019年11月5日第1刷 (2-1)i (ポプラ
-
-
『ヒーローインタビュー』(坂井希久子)_書評という名の読書感想文
『ヒーローインタビュー』坂井 希久子 角川春樹事務所 2015年6月18日初版 ヒーローインタ
-
-
『夜はおしまい』(島本理生)_書評という名の読書感想文
『夜はおしまい』島本 理生 講談社文庫 2022年3月15日第1刷 誰か、私を遠くに
-
-
『僕らのごはんは明日で待ってる』(瀬尾まいこ)_書評という名の読書感想文
『僕らのごはんは明日で待ってる』瀬尾 まいこ 幻冬舎文庫 2016年2月25日初版 僕らのごは
-
-
『幸せのプチ』(朱川湊人)_この人の本をたまに読みたくなるのはなぜなんだろう。
『幸せのプチ』朱川 湊人 文春文庫 2020年4月10日第1刷 幸せのプチ (文春文庫)
-
-
『ウエストウイング』(津村記久子)_書評という名の読書感想文
『ウエストウイング』津村 記久子 朝日文庫 2017年8月30日第一刷 ウエストウイング (朝
-
-
『第8監房/Cell 8』(柴田 錬三郎/日下三蔵編)_書評という名の読書感想文
『第8監房/Cell 8』柴田 錬三郎/日下三蔵編 ちくま文庫 2022年1月10日第1刷
-
-
『大きな鳥にさらわれないよう』(川上弘美)_書評という名の読書感想文
『大きな鳥にさらわれないよう』川上 弘美 講談社文庫 2019年10月16日第1刷 大きな鳥