『アルテーミスの采配』(真梨幸子)_書評という名の読書感想文

『アルテーミスの采配』真梨 幸子 幻冬舎文庫 2018年2月10日初版


アルテーミスの采配 (幻冬舎文庫)

出版社で働く派遣社員の倉本渚は、ある日AV女優連続不審死事件の容疑者が遺したルポ「アルテーミスの采配」を手にする。原稿は “僕は犯人ではない。本当の黒幕は” という告白の途中で終わっていた。好奇心のあまり調査を始める渚だったが、やがて原稿に張り巡らされた罠に気付く - 。一項目から無数の罠が読者を襲う、怒涛の一気読みミステリ。(幻冬舎文庫)

相変わらずの手の込みようです。最初、だからか話がよく見えません。AV嬢のする告白がどこに繋がっていくのか。彼女らの素性を炙り出し、これみよがしに記事にしようと企む裏側に、実はそれとは違う、別の “思惑” が潜んでいます。

言わずもがなですが、この人が書く話には容赦がありません。怨みつらみについての果てがない。まるで違う様子で近づいては、知らない内に貶める。気付いた時にはもうどうしようもない。あとは言いなりに、死を待つばかりの身となります。

アルテーミスとは、ギリシャ神話に登場する狩猟の女神、あるいは純潔を司る処女神。妊婦の守護神でもあるが、一方、突然の死をもたらす疫病の弓矢を持ち、生を与えながら、生を奪う。男女の性愛を嫌悪し、特に男性の性的な欲望に対して激しい怒りを持つ、残虐の女神のことをいいます。

では、この物語における疫病の弓矢とは何なのでしょう? - 読むと、それが徐々に明らかになってゆきます。

生を与えながら、生を奪うとは

ここで、あなたに質問です。  AV女優になるきっかけで一番多いのはなんだと思いますか? お金? それとも、自己表現? あるいは、単純にセックスが好きだったから?

(余計なことですが、もしもあなたがAV嬢であったとしたら、あなたはそれを極力隠そうとするはずです。偽名を使い、経歴を詐称し、容姿の一部を整形したりするかもしれません。)

次に、あなたがAV女優になったことで被るアクシデントにはどういったものが考えられるでしょう? 自分のことに限らず、他に何が予想されるかを想像してみてください。

(おそらくはそのほとんどが) なりたくてなったわけではない上に、さらに思いもしない事態が待ち受けている。- 幾人ものAV女優の、ここにはそれが書いてあります。

 

この本を読んでみてください係数 80/100


アルテーミスの采配 (幻冬舎文庫)

◆真梨 幸子
1964年宮崎県生まれ。
多摩芸術学園映画科(現、多摩芸術大学映像演劇学科)卒業。

作品 「孤虫症」「えんじ色心中」「殺人鬼フジコの衝動」「お引っ越し」「女ともだち」「あの女」「みんな邪魔」「人生相談」他多数

関連記事

『6月31日の同窓会』(真梨幸子)_書評という名の読書感想文

『6月31日の同窓会』真梨 幸子 実業之日本社文庫 2019年2月15日初版 6月31日の同

記事を読む

『ぬるい毒』(本谷有希子)_書評という名の読書感想文

『ぬるい毒』本谷 有希子 新潮文庫 2014年3月1日発行 ぬるい毒 (新潮文庫) &n

記事を読む

『カエルの小指/a murder of crows』(道尾秀介)_書評という名の読書感想文

『カエルの小指/a murder of crows』道尾 秀介 講談社文庫 2022年2月15日第

記事を読む

『赤目四十八瀧心中未遂』(車谷長吉)_書評という名の読書感想文

『赤目四十八瀧心中未遂』車谷 長吉 文芸春秋 1998年1月10日第一刷 赤目四十八瀧心中未遂

記事を読む

『推定脅威』(未須本有生)_書評という名の読書感想文

『推定脅威』未須本 有生 文春文庫 2016年6月10日第一刷 推定脅威  

記事を読む

『孤虫症』(真梨幸子)_書評という名の読書感想文

『孤虫症』真梨 幸子 講談社文庫 2008年10月15日第一刷 孤虫症 (講談社文庫) 真梨幸子

記事を読む

『おめでとう』(川上弘美)_書評という名の読書感想文

『おめでとう』川上 弘美 新潮文庫 2003年7月1日発行 おめでとう (新潮文庫)

記事を読む

『少女』(湊かなえ)_書評という名の読書感想文

『少女』湊 かなえ 双葉文庫 2012年2月19日第一刷 少女 (双葉文庫) 親友の自殺を目

記事を読む

『劇場』(又吉直樹)_書評という名の読書感想文

『劇場』又吉 直樹 新潮文庫 2019年9月1日発行 劇場 (新潮文庫) 高校卒業後、

記事を読む

『東京奇譚集』(村上春樹)_書評という名の読書感想文

『東京奇譚集』村上 春樹 新潮社 2005年9月18日発行 東京奇譚集 (新潮文庫) &

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

『神の手』(望月諒子)_書評という名の読書感想文

『神の手』望月 諒子 集英社文庫 2022年7月12日第8刷

『腐葉土』(望月諒子)_書評という名の読書感想文

『腐葉土』望月 諒子 集英社文庫 2022年7月12日第6刷

『死刑について』(平野啓一郎)_書評という名の読書感想文

『死刑について』平野 啓一郎 岩波書店 2022年6月16日第1刷発

『ハレルヤ』(保坂和志)_書評という名の読書感想文

『ハレルヤ』保坂 和志 新潮文庫 2022年5月1日発行

『鞠子はすてきな役立たず』(山崎ナオコーラ)_書評という名の読書感想文

『鞠子はすてきな役立たず』山崎 ナオコーラ 河出文庫 2021年8月

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑