『豆の上で眠る』(湊かなえ)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/11 『豆の上で眠る』(湊かなえ), 作家別(ま行), 書評(ま行), 湊かなえ

『豆の上で眠る』湊 かなえ 新潮文庫 2017年7月1日発行

小学校一年生の時、結衣子の二歳上の姉・万佑子が失踪した。スーパーに残された帽子、不審な白い車の目撃証言、そして変質者の噂。必死に捜す結衣子たちの前に、二年後、姉を名乗る見知らぬ少女が帰ってきた。喜ぶ家族の中で、しかし自分だけが、大学生になった今も微かな違和感を抱き続けている。- お姉ちゃん、あなたは本物なの? 辿り着いた真実に足元から頽れる衝撃の姉妹ミステリー。(新潮文庫)

物語の起点となるのが、アンデルセン童話の『えんどうまめの上にねたおひめさま』という話、故にタイトルが『豆の上で眠る』- とあるわけですが、話の内容よりもむしろ読んだ後に残る「違和感」をこそ、著者である湊かなえは伝えたいのだと思います。

主人公は二人の姉妹。妹の結衣子(ゆいこ)は、現在20歳の大学生。小学1年生の時に姉の万佑子(まゆこ)が失踪し、大きなショックを受けます。2年後、万佑子は保護されるのですが、帰宅した姉を見た時、結衣子は言いようのない違和感を感じます。

姉の万佑子が失踪(誘拐!? )したのは、小学3年生の時です。その後、発見、保護されたものの、その時の万佑子は見る影もなく痩せ細り、まるで「別人」のようになっています。

話は、妹・結衣子を語り手に、現在と過去とが互い違いに語られてゆきます。

問題は、万佑子が失踪し、やがて発見されて家に戻って来た時、結衣子が感じた言いようのない「違和感」です。ストレートに言えば、それは「お姉ちゃん、あなたは本物なの? 」という疑念です。

客観的に見れば全てはそうなのですが、結衣子には、今いる万佑子と以前一緒に寝起きした姉の万佑子とが同じ人物であるとはどうしても思えません。うまくは言えないし、確たる証拠もないのですが、結衣子には、明らかに二人は別の人物であるように感じられます。

それを言うと、母は怒ります。父は、何も言いません。祖母だけが、結衣子と同じ「違和感」を感じています。

※物語の大方は、万佑子の失踪当時の状況を含め、姉妹二人の幼い頃の思い出に終始します。それを魯鈍と思いまどろっこしく感じるか、あるいは「極めて高度な小説的技量と研ぎ澄まされた感性」(解説にある宇田川拓也氏の言葉)と取るかはあなた次第です。

この本を読んでみてください係数  80/100

◆湊 かなえ
1973年広島県因島市中庄町(現・尾道市因島中庄町)生まれ。
武庫川女子大学家政学部卒業。

作品 「告白」「少女」「贖罪」「Nのために」「夜行観覧車」「望郷」「往復書簡」「境遇」「サファイア」「母性」「絶唱」「リバース」「ユートピア」他多数

関連記事

『向田理髪店』(奥田英朗)_書評という名の読書感想文

『向田理髪店』奥田 英朗 光文社 2016年4月20日初版 帯に[過疎の町のから騒ぎ]とあり

記事を読む

『花の鎖』(湊かなえ)_書評という名の読書感想文

『花の鎖』湊 かなえ 文春文庫 2018年8月1日19刷 両親を亡くし仕事も失った矢先に祖母がガン

記事を読む

『推定脅威』(未須本有生)_書評という名の読書感想文

『推定脅威』未須本 有生 文春文庫 2016年6月10日第一刷 - ごく簡単に紹介すると、こんな

記事を読む

『満願』(米澤穂信)_書評という名の読書感想文

『満願』米澤 穂信 新潮社 2014年3月20日発行 米澤穂信の『満願』をようやく読みました。な

記事を読む

『満月と近鉄』(前野ひろみち)_書評という名の読書感想文

『満月と近鉄』前野 ひろみち 角川文庫 2020年5月25日初版 小説家を志して実

記事を読む

『成瀬は天下を取りにいく』(宮島未奈)_書評という名の読書感想文

『成瀬は天下を取りにいく』宮島 未奈 新潮社 2023年3月15日発行 「島崎、わ

記事を読む

『いちご同盟』(三田誠広)_書評という名の読書感想文

『いちご同盟』三田 誠広 集英社文庫 1991年10月25日第一刷 もう三田誠広という名前を

記事を読む

『たった、それだけ』(宮下奈都)_書評という名の読書感想文

『たった、それだけ』宮下 奈都 双葉文庫 2017年1月15日第一刷 「逃げ切って」。贈賄の罪が発

記事を読む

『田舎の紳士服店のモデルの妻』(宮下奈都)_書評という名の読書感想文

『田舎の紳士服店のモデルの妻』宮下 奈都 文春文庫 2013年6月10日第一刷 東京から夫の故郷に

記事を読む

『1R 1分34秒』(町屋良平)_書評という名の読書感想文

『1R 1分34秒』町屋 良平 新潮社 2019年1月30日発行 デビュー戦を初回

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『地雷グリコ』(青崎有吾)_書評という名の読書感想文 

『地雷グリコ』青崎 有吾 角川書店 2024年6月20日 8版発行

『アルジャーノンに花束を/新版』(ダニエル・キイス)_書評という名の読書感想文

『アルジャーノンに花束を/新版』ダニエル・キイス 小尾芙佐訳 ハヤカ

『水たまりで息をする』(高瀬隼子)_書評という名の読書感想文

『水たまりで息をする』高瀬 隼子 集英社文庫 2024年5月30日

『黒牢城』(米澤穂信)_書評という名の読書感想文

『黒牢城』米澤 穂信 角川文庫 2024年6月25日 初版発行

『消された一家/北九州・連続監禁殺人事件』(豊田正義)_書評という名の読書感想文

『消された一家/北九州・連続監禁殺人事件』豊田 正義 新潮文庫 20

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑