『豆の上で眠る』(湊かなえ)_書評という名の読書感想文

『豆の上で眠る』湊 かなえ 新潮文庫 2017年7月1日発行


豆の上で眠る (新潮文庫)

小学校一年生の時、結衣子の二歳上の姉・万佑子が失踪した。スーパーに残された帽子、不審な白い車の目撃証言、そして変質者の噂。必死に捜す結衣子たちの前に、二年後、姉を名乗る見知らぬ少女が帰ってきた。喜ぶ家族の中で、しかし自分だけが、大学生になった今も微かな違和感を抱き続けている。- お姉ちゃん、あなたは本物なの? 辿り着いた真実に足元から頽れる衝撃の姉妹ミステリー。(新潮文庫)

物語の起点となるのが、アンデルセン童話の『えんどうまめの上にねたおひめさま』という話、故にタイトルが『豆の上で眠る』- とあるわけですが、話の内容よりもむしろ読んだ後に残る「違和感」をこそ、著者である湊かなえは伝えたいのだと思います。

主人公は二人の姉妹。妹の結衣子(ゆいこ)は、現在20歳の大学生。小学1年生の時に姉の万佑子(まゆこ)が失踪し、大きなショックを受けます。2年後、万佑子は保護されるのですが、帰宅した姉を見た時、結衣子は言いようのない違和感を感じます。

姉の万佑子が失踪(誘拐!? )したのは、小学3年生の時です。その後、発見、保護されたものの、その時の万佑子は見る影もなく痩せ細り、まるで「別人」のようになっています。

話は、妹・結衣子を語り手に、現在と過去とが互い違いに語られてゆきます。

問題は、万佑子が失踪し、やがて発見されて家に戻って来た時、結衣子が感じた言いようのない「違和感」です。ストレートに言えば、それは「お姉ちゃん、あなたは本物なの? 」という疑念です。

客観的に見れば全てはそうなのですが、結衣子には、今いる万佑子と以前一緒に寝起きした姉の万佑子とが同じ人物であるとはどうしても思えません。うまくは言えないし、確たる証拠もないのですが、結衣子には、明らかに二人は別の人物であるように感じられます。

それを言うと、母は怒ります。父は、何も言いません。祖母だけが、結衣子と同じ「違和感」を感じています。

※物語の大方は、万佑子の失踪当時の状況を含め、姉妹二人の幼い頃の思い出に終始します。それを魯鈍と思いまどろっこしく感じるか、あるいは「極めて高度な小説的技量と研ぎ澄まされた感性」(解説にある宇田川拓也氏の言葉)と取るかはあなた次第です。

 

この本を読んでみてください係数  80/100


豆の上で眠る (新潮文庫)

◆湊 かなえ
1973年広島県因島市中庄町(現・尾道市因島中庄町)生まれ。
武庫川女子大学家政学部卒業。

作品 「告白」「少女」「贖罪」「Nのために」「夜行観覧車」「望郷」「往復書簡」「境遇」「サファイア」「母性」「絶唱」「リバース」「ユートピア」他多数

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