『湯を沸かすほどの熱い愛』(中野量太)_書評という名の読書感想文

『湯を沸かすほどの熱い愛』中野 量太 文春文庫 2016年10月10日第一刷


湯を沸かすほどの熱い愛 (文春文庫 な 74-1)

夫が出奔し家業の銭湯は休業状態。そんな幸野双葉に突然、余命二ヶ月の宣告が。その時から双葉は「絶対にやっておくべきこと」を実行していく。失踪中の夫を連れ戻して銭湯を再開し、娘たちを独り立ちさせた。だが幸野家にはまだ大きな秘密が残されていた。熱い家族愛と驚きのラスト。話題の映画の監督自身による原作小説。(文春文庫)

「私ね・・・・・少しの延命のために、自分の、生きる意味を見失うのは絶対に嫌、私には、どうしてもやらなきゃいけない事が、まだある」

双葉が、どうしてもやらなきゃいけない事、それが何なのか俺には分かっている。辛く厳しいあの秘密に立ち向かおうとしている。強い意志を持った双葉の横顔は、今の彼女に適切な言い方じゃないかもしれないけれど、とても美しく生き生きしていた。(本文より)

ネットで何度か(映画の)予告編を観ることがありました。

日本アカデミー賞で幾つもの賞を獲ったことは知っていました。宮沢りえの演技が素晴らしく、彼女の娘を演じた杉咲花も(その年頃の少女を演じて)実に上手かったらしい。

遅ればせながら書店へ行き、原作であるこの本を買いました。一日で読み、読むとどうしても映画が観たくなり、TSUTAYAへ行ってDVDを借りました。

小説を読んで泣いて、映画を観てまた泣きました。

これは、母としているべき人間が、理不尽にもその本分を全うできないでいる様子と、それを承知で、健気に生きようとする少女や青年の姿を描いた物語です。

双葉がそうなら、双葉が守ろうとする家族もそう。探偵の滝本とその娘、流浪の旅の途中で双葉と出合う向井拓海という青年もまたそうで、彼らは自分の意思とは無関係に、知らぬあいだに、元あった家族の形が別のものへと姿を変え、否応なく今に至っています。

おしなべてそれは不幸な出来事で、彼らは一様にその境遇を耐え忍んでいます。前を向けず、ただ佇んでいます。そんな中、余命宣告を受け死に逝く双葉だけが、なお生きようと克己する姿が描き出されています。

※参考:映画では探偵の滝本を駿河太郎、向井拓海を松坂桃李が演じています。

 

この本を読んでみてください係数 85/100


湯を沸かすほどの熱い愛 (文春文庫 な 74-1)

◆中野 量太
1973年京都府京都市生まれ。
京都産業大学卒業後、日本映画学校(現・日本映画大学)に入学。

作品 卒業制作の『バンザイ人生まっ赤っか』が日本映画学校今村昌平賞、TAMA NEW WAVEグランプリなどを受賞。以後、制作した映画で数多くの受賞歴あり。

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