『向こう側の、ヨーコ』(真梨幸子)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/07 『向こう側の、ヨーコ』(真梨幸子), 作家別(ま行), 書評(ま行), 真梨幸子

『向こう側の、ヨーコ』真梨 幸子 光文社文庫 2020年9月20日初版

1974年生まれの二人の陽子。恋愛小説家として成功した陽子は、幼い頃から、自分が辿るはずだったかわいそうな運命を生きるヨーコの夢を見ていた。一方、夫と一人息子と共に暮らす陽子は、決して贅沢のできない毎日に嫌気がさしていた。家も、職業も、生活も、全てが異なる二人の人生は絶対に交わることはなかったが - 瞬く間に世界が狂い出す、イヤミス最高傑作! (光文社文庫)

独身生活を謳歌する小説家・陽子には、幼い頃からよく見る “夢” がありました。それは、実際とは違う “かわいそうな人生を送る自分” の夢でした。

一方、結婚し夫と息子の三人で暮らす陽子は、現在、大手通販会社の事務センターでパートタイマーとして働いています。彼女は、(とてもありがちなことですが) 平凡な毎日の生活にやや嫌気がさしています。

この物語には、ある背景があります。主に登場する女性たちの全員が 「1974年生まれ」 の、40歳を過ぎたばかりであるということです。もう若くはなく、それぞれが、それぞれに人に言えない屈折を抱えています。

加えて、1974年に生まれた女の子に付けられた名前のランキングを見ると - 例えば、裕子、真由美、久美子、純子 - などを抑えて1位は 「陽子」 だったということ。中年にさしかかり、そろそろ更年期を迎えようかという 「陽子」 が、その頃、いたるところにわんさかいたということです。

こちら側と、「向こう側の、ヨーコ」- ばかりではありません。同じ分だけ生きてきた40を過ぎた女性なら、(その言動に) 裏もあれば表もあります。立場はどうとあれ、陰に隠れて何をしているかわかりません。

事は、殺人事件へと発展します。誰が一番まともで、クールで、客観的なのか? よ~く考えてください。 

※A面とB面それぞれに、男女合わせて多くの人物が登場します。惑わされてはいけません。名前は、時に呼び名やペンネームであったりします。いつも本名とは限りません。それより何より、皆が、正直に事実を述べているとは言い難い中で話は進行します。

安心して下さい。混乱しなくて済むために、最後に、「主な登場人物」 のA・B面ごとの一覧表が載せてあります。

この本を読んでみてください係数 80/100

◆真梨 幸子
1964年宮崎県生まれ。
多摩芸術学園映画科(現、多摩芸術大学映像演劇学科)卒業。

作品 「孤虫症」「えんじ色心中」「殺人鬼フジコの衝動」「深く深く、砂に埋めて」「女ともだち」「あの女」「みんな邪魔」「人生相談」「お引っ越し」他多数

関連記事

『私が失敗した理由は』(真梨幸子)_書評という名の読書感想文

『私が失敗した理由は』真梨 幸子 講談社文庫 2019年9月13日第1刷 ・・・・

記事を読む

『出身成分』(松岡圭祐)_書評という名の読書感想文

『出身成分』松岡 圭祐 角川文庫 2022年1月25日初版 貴方が北朝鮮に生まれて

記事を読む

『万引き家族』(是枝裕和)_書評という名の読書感想文

『万引き家族』是枝 裕和 宝島社 2018年6月11日第一刷 「犯罪」 でしか つな

記事を読む

『信仰/Faith』(村田沙耶香)_書評という名の読書感想文

『信仰/Faith』村田 沙耶香 文藝春秋 2022年8月10日第3刷発行 なあ、俺

記事を読む

『レキシントンの幽霊』(村上春樹)_書評という名の読書感想文

『レキシントンの幽霊』(沈黙)村上 春樹 文春文庫 1999年10月10日第1刷 『レキシントン

記事を読む

『鸚鵡楼の惨劇』(真梨幸子)_書評という名の読書感想文

『鸚鵡楼の惨劇』真梨 幸子 小学館文庫 2015年7月12日初版 1962年、西新宿。十二社の

記事を読む

『芽むしり仔撃ち』(大江健三郎)_書評という名の読書感想文

『芽むしり仔撃ち』大江 健三郎 新潮文庫 2022年11月15日52刷 ノーベル文

記事を読む

『エレジーは流れない』(三浦しをん)_書評という名の読書感想文

『エレジーは流れない』三浦 しをん 双葉社 2021年4月25日第1刷 海と山に囲

記事を読む

『まともな家の子供はいない』津村記久子_書評という名の読書感想文

『まともな家の子供はいない』 津村 記久子 筑摩書房 2011年8月10日初版 小柄で、身に着け

記事を読む

『木曜日の子ども』(重松清)_書評という名の読書感想文

『木曜日の子ども』重松 清 角川文庫 2022年1月25日初版 世界の終わりを見た

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『ケモノの城』(誉田哲也)_書評という名の読書感想文

『ケモノの城』誉田 哲也 双葉文庫 2021年4月20日 第15刷発

『嗤う淑女 二人 』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『嗤う淑女 二人 』中山 七里 実業之日本社文庫 2024年7月20

『闇祓 Yami-Hara』(辻村深月)_書評という名の読書感想文

『闇祓 Yami-Hara』辻村 深月 角川文庫 2024年6月25

『地雷グリコ』(青崎有吾)_書評という名の読書感想文 

『地雷グリコ』青崎 有吾 角川書店 2024年6月20日 8版発行

『アルジャーノンに花束を/新版』(ダニエル・キイス)_書評という名の読書感想文

『アルジャーノンに花束を/新版』ダニエル・キイス 小尾芙佐訳 ハヤカ

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑