『万引き家族』(是枝裕和)_書評という名の読書感想文

『万引き家族』是枝 裕和 宝島社 2018年6月11日第一刷

万引き家族【映画小説化作品】

「犯罪」 でしか つながれなかった - 。万引き・年金不正受給・虐待・・・・・・・。
是枝監督が自ら描く、映画では語り尽せなかった 「家族」 の在り方。

小説 『万引き家族』 を読みました。

とある住宅街。柴田治と息子の祥太は、スーパーや駄菓子店で日々万引きをして生計をたてていた。ある日、治はじゅりという少女が家から閉め出されているのを見かねて連れて帰ってくる。驚く妻の信代だったが、少女の家庭事情を案じ、一緒に 「家族」 として暮らすことに。年金で細々と生きる祖母の初枝、JK見学店で働く信代の妹・亜紀。6人家族として幸せに暮らしていた。しかし、ある出来事を境に、彼らの抱える 「秘密」 が明らかになっていく - 。(アマゾン内容紹介より抜粋)

読み終えて、改めて6人のことを考えました。

祖母の初枝、治、信代の三人については、まあ、しょうがないといえばしょうがない。そうする他なかったという彼らの人生は、その大方が自らを慰める方便であり、その気になれば違う人生もあったはずです。三人はそのことを、よく承知しています。

自覚がありながら堕落しているのは、自業自得と言わざるを得ません。冷たいようですが、三人はすでに十分大人なのですから。

二十歳を過ぎたばかりの亜紀は微妙で、今在る自分をコントロールできないでいます。それがために彼女は家を出て、源氏名に妹の名前を使い風俗店で働いています。女子大生と偽り、客に対し、ミラー越しに “淫らな姿態” を覗かせています。

何より切ないのは、息子の祥太と5歳の少女・じゅりの生い立ちです。大人(親)を信じ、大人(親)に裏切られてばかりいます。彼らは、自分の意思で前を向くことも、後ろへ引くこともできません。なぜなら、二人はまだ幼気ない子どもだからです。

祥太は万引きの常習犯で、咎めるどころか家族はむしろそれを “奨励” し、彼はそれを自分の “仕事” だと思っています。治を習い、治の言う通りに万引きし、してはならない事だとは思ってもいません。なぜかというと、家族の誰もが、そうは言わないのですから。

そして5歳の少女、じゅり。彼女は親から虐待を受け、親に見捨てられたのでした。

※6人が暮らしているのは、背の高いマンションに三方を囲まれた風通しの悪い平屋の一軒家で、そこは元々、初枝と初枝の死んだ夫の家でした。

一人暮らしの初枝の家に、最初 「治」 が居着き、やがて 「信代」 がやって来ます。亜紀が来て、治が 「祥太」 を連れ帰り、次に治は 「ゆり」 と一緒に帰って来ます。

彼らに共通するのは、本来あるべき 「家族の絆」 が損なわれている - ということです。彼らの多くはそれぞれに、もう一つ、別の名前を持っています。

この本を読んでみてください係数 85/100

万引き家族【映画小説化作品】

◆是枝 裕和
1962年東京都生まれ。
早稲田大学卒業後、テレビマンユニオンに参加。初監督作品は「幻の光」。「誰も知らない」で第57回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞、「歩いても 歩いても」で第51回ブルーリボン賞監督賞、「そして父になる」で第66回カンヌ国際映画祭コンペティション部門審査員賞、「海街 diary」で第39回日本アカデミー賞最優秀作品賞など多数の賞を受賞。

関連記事

『森の家』(千早茜)_書評という名の読書感想文

『森の家』千早 茜 講談社文庫 2015年12月15日第一刷 森の家 (講談社文庫) 自由の

記事を読む

『FLY,DADDY,FLY』(金城一紀)_書評という名の読書感想文

『FLY,DADDY,FLY』金城 一紀 講談社 2003年1月31日第一刷 フライ,ダディ,

記事を読む

『感染領域』(くろきすがや)_書評という名の読書感想文

『感染領域』くろき すがや 宝島社文庫 2018年2月20日第一刷 【2018年・第16回「こ

記事を読む

『妖怪アパートの幽雅な日常 ① 』(香月日輪)_書評という名の読書感想文

『妖怪アパートの幽雅な日常 ① 』香月 日輪 講談社文庫 2008年10月15日第一刷 妖怪ア

記事を読む

『また次の春へ』(重松清)_書評という名の読書感想文

『また次の春へ』重松 清 文春文庫 2016年3月10日第一刷 また次の春へ (文春文庫)

記事を読む

『ドラママチ』(角田光代)_書評という名の読書感想文

『ドラママチ』角田 光代 文春文庫 2009年6月10日第一刷 ドラママチ (文春文庫)

記事を読む

『落英』(黒川博行)_書評という名の読書感想文

『落英』黒川 博行 幻冬舎 2013年3月20日第一刷 落英   大阪府警薬

記事を読む

『蜃気楼の犬』(呉勝浩)_書評という名の読書感想文

『蜃気楼の犬』呉 勝浩 講談社文庫 2018年5月15日第一刷 蜃気楼の犬 (講談社文庫)

記事を読む

『夢魔去りぬ』(西村賢太)_書評という名の読書感想文

『夢魔去りぬ』西村 賢太 講談社文庫 2018年1月16日第一刷 夢魔去りぬ (講談社文庫)

記事を読む

『勁草』(黒川博行)_書評という名の読書感想文

『勁草』黒川 博行 徳間書店 2015年6月30日初版 勁草 (文芸書)  

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

『ニューカルマ』(新庄耕)_書評という名の読書感想文

『ニューカルマ』新庄 耕 集英社文庫 2019年1月25日第一刷

『自由なサメと人間たちの夢』(渡辺優)_書評という名の読書感想文

『自由なサメと人間たちの夢』渡辺 優 集英社文庫 2019年1月25

『私の恋人』(上田岳弘)_書評という名の読書感想文

『私の恋人』上田 岳弘 新潮文庫 2018年2月1日発行 私の

『家族の言い訳』(森浩美)_書評という名の読書感想文

『家族の言い訳』森 浩美 双葉文庫 2018年12月17日36刷

『福袋』(角田光代)_書評という名の読書感想文

『福袋』角田 光代 河出文庫 2010年12月20日初版 福袋

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑