『メガネと放蕩娘』(山内マリコ)_書評という名の読書感想文

『メガネと放蕩娘』山内 マリコ 文春文庫 2020年6月10日第1刷

メガネと放蕩娘 (文春文庫)

実家の書店に暮らしつつ市役所勤めをするタカコ。突然、十年前に家出した妹ショーコが妊婦姿で帰ってきた。寂れた商店街に衝撃を受けたショーコはシングルマザーとしてここで働くと言い始める。破天荒だけど地元愛は強いショーコはタカコを巻き込み、いざ街おこし! アラサー姉妹の奮闘と成長を描く社会派エンタメ小説。(文春文庫)

最初に断っておきます。これは内容の善し悪しについての不満や批判といったものでは決してありません。言いたいのは、私がイメージする山内マリコのこれまでの小説とは違い “えらく前向きな話” である、ということです。

山内マリコは、何があってこんな!? 小説を書いたのか - その理由は巻末にある 「文庫版のためのあとがき」 に詳しく書いてあります。そうせずにはいられなかった、書かずに済ますわけにはいかない理由があったからです。

相変わらずの流れるような文章はとても読み易く、タカコと同じアラサー独身女性が読めば、共感するところがたくさんあるはずです。悲観的な話を悲観的にするのではなく、軽妙な笑いに変えて中にそっと本音をしのばせる。手慣れたものだと思います。

ただ、何と言いましょうか、ある意味話が上手く行き過ぎて、逆にしらけた気持ちになるのは、私だけのことなんでしょうか。

勿論、「寂れた商店街の活性化」 の話が悪いわけではありません。しかし、それはいつかどこかで聞いたような。貴女でなくても、別の誰かが書く話のような。そんな気がしてなりません。過去の作品に 「贖罪」 などする必要はないのだと思います。

私は、私が好きな 『ここは退屈迎えに来て』 『アズミ・ハルコは行方不明』 『選んだ孤独はよい孤独』 など、やっぱりそんな話が読みたかった。

この本を読んでみてください係数  80/100

メガネと放蕩娘 (文春文庫)

◆山内 マリコ
1980年富山県富山市生まれ。
大阪芸術大学映像学科卒業。

作品 「アズミ・ハルコは行方不明」「ここは退屈迎えに来て」「さみしくなったら名前を呼んで」「パリ行ったことないの」「かわいい結婚」他

関連記事

『満潮』(朝倉かすみ)_書評という名の読書感想文

『満潮』朝倉 かすみ 光文社文庫 2019年7月20日初版 満潮 (光文社文庫) わた

記事を読む

『検事の本懐』(柚月裕子)_書評という名の読書感想文

『検事の本懐』柚月 裕子 角川文庫 2018年9月5日3刷 検事の本懐 (角川文庫)

記事を読む

『悪人』(吉田修一)_書評という名の読書感想文

『悪人』吉田 修一 朝日文庫 2018年7月30日第一刷 悪人 新装版 (朝日文庫)

記事を読む

『流転の魔女』(楊逸/ヤン・イー)_書評という名の読書感想文

『流転の魔女』楊 逸(ヤン・イー) 文春文庫 2015年12月10日第一刷 流転の魔女 (文春

記事を読む

『妻は忘れない』(矢樹純)_書評という名の読書感想文

『妻は忘れない』矢樹 純 新潮文庫 2020年11月1日発行 妻は忘れない(新潮文庫)

記事を読む

『向田理髪店』(奥田英朗)_書評という名の読書感想文

『向田理髪店』奥田 英朗 光文社 2016年4月20日初版 向田理髪店  

記事を読む

『BUTTER』(柚木麻子)_梶井真奈子、通称カジマナという女

『BUTTER』柚木 麻子 新潮文庫 2020年2月1日発行 BUTTER (新潮文庫 ゆ

記事を読む

『民宿雪国』(樋口毅宏)_書評という名の読書感想文

『民宿雪国』樋口 毅宏 祥伝社文庫 2013年10月20日初版 民宿雪国 (祥伝社文庫)

記事を読む

『百舌落とし』(逢坂剛)_書評という名の読書感想文

『百舌落とし』逢坂 剛 集英社 2019年8月30日第1刷 百舌落とし 後頭部を千枚通

記事を読む

『ぼくは勉強ができない』山田詠美_書評という名の読書感想文

『ぼくは勉強ができない』 山田 詠美  新潮社 1993年3月25日発行 @1,200 ぼくは勉強

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

『姑の遺品整理は、迷惑です』(垣谷美雨)_書評という名の読書感想文

『姑の遺品整理は、迷惑です』垣谷 美雨 双葉文庫 2022年4月17

『夕映え天使』(浅田次郎)_書評という名の読書感想文

『夕映え天使』浅田 次郎 新潮文庫 2021年12月25日20刷

『向日葵の咲かない夏』(道尾秀介)_書評という名の読書感想文

『向日葵の咲かない夏』道尾 秀介 新潮文庫 2019年4月30日59

『ミシンと金魚』(永井みみ)_書評という名の読書感想文

『ミシンと金魚』永井 みみ 集英社 2022年4月6日第4刷発行

『夏の陰』(岩井圭也)_書評という名の読書感想文

『夏の陰』岩井 圭也 角川文庫 2022年4月25日初版

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑