『望郷』(湊かなえ)_書評という名の読書感想文

『望郷』湊 かなえ 文春文庫 2016年1月10日第一刷


望郷 (文春文庫)

 

暗い海に青く輝いた星のような光。母と二人で暮らす幼い私の前に現れて世話を焼いてくれた〈おっさん〉が海に出現させた不思議な光。そして今、私は彼の心の中にあった秘密を知る・・・日本推理作家協会賞受賞作「星の海」他、島に生まれた人たちの島への愛と憎しみが生む謎を、名手が万感の思いを込めて描く。(文春文庫解説より)

帯には「選考委員、全会一致での受賞」とあります。「心に刺さる感動と衝撃の作品集」とあり、あとに2人の選考委員のメッセージが記されています。

群を抜いていた。鮮やかな逆転、周知な伏線、ほとんど名人の技である。- 北村薫氏
なんとも巧緻なストーリーテリング。自分の周囲に題材を発見したことで、湊さんの筆力が最高に生きた! - 佐々木譲氏

これだけ絶賛されれば、相応に読み応えのある作品であろうことは分かります。それに何より、湊かなえさんは人気があります。この作品に限らず、(書店へ行けば)何冊ものベストセラーが並んでいます。

この前ジュンク堂ヘ行って驚きました。(というか、後で確認すると近くのやや小さな本屋さんでも同様だったのですが)他とは別に、かなりのスペースを割いて《湊かなえコーナー》があります。全然知らなかった(のは、私だけか? )。

きっと、ドラマになったり映画になったりもしているのでしょう。知らないのは私だけで、ほかの人に言わせれば「何を今さら」ということかも知れません。

でも、しょうがない。私にとって湊かなえは、今ひとつその気になって読みたいとは思えないでいる人なのです。何冊かは持っているのですが、読んだ覚えがありません。本棚にあるのを見てびっくりしているくらいで、買ったことさえ忘れています。

たまたまブログでこの本のことが書いてあるのを見つけて、何気に読んでみると、えらく面白いと書いてあります。普通6編もの短編があると、中に一つや二つはつまらない話があって当然なのに、『望郷』に限ってはそれがひとつもない。

6編のどれを読んでも面白いと書いてあります。面白すぎて、気付かぬ内に下車する駅を通り過ぎてしてしまうくらい夢中になって読みましたとあったので、そこまで言うならと読んではみたのですが・・・・

単刀直入に言うと、〈そこまで〉面白くありません。端緒から結末までに「間」がなさ過ぎて、どうにも興が乗らないのです。私は短編が苦手で、(短い間隔で)話が変わる度に気持ちを元に戻したり、また盛り上げたりするのも思えば難儀なことです。

ですから、「そこまで面白くない」というのは、(私に限ってのことで)湊さんのせいでも何でもありません。ステーキが食べたい時に、いくらオススメだからといって、とりたての新鮮な魚を出されても心から美味しいとは思えないのと同じで、

どちらも厳選された食材で、一流のシェフが作った料理であったとしたら、あとは食べる人の好みの問題で、肉が好きな人には(肉ほどには)魚が魅力に映らないということです。だから -- 『望郷』は『望郷』で、きっと面白いのです。

舞台となる「白綱島」とは、瀬戸内海にある因島のこと。架かる橋が本州と四国・今治を結ぶ〈しまなみ海道〉の一部を形成する因島大橋で、対岸(本土側)にある「O市」とは、言わずと知れた尾道(市)のことです。

多少なりとも土地勘のある方ならすぐに分かります。行ったことがあるなら尚のこと、そこにしかない(自然が成した)造形に、目だけでなく心まで奪われてしまうくらい風光明媚な観光スポットです。

確かに、ここを舞台にしたのはいい。(佐々木譲氏が言うように)著者の生まれ故郷であるが故により一層、(見た目の景色とは裏腹に)島に生きることの悲哀を捉えて真に迫るものがあります。

 

この本を読んでみてください係数  80/100


望郷 (文春文庫)

 

◆湊 かなえ
1973年広島県因島市中庄町(現・尾道市因島中庄町)生まれ。
武庫川女子大学家政学部卒業。

作品 「告白」「少女」「贖罪」「Nのために」「夜行観覧車」「花の鎖」「往復書簡」「境遇」「サファイア」「母性」「絶唱」「ユートピア」他多数

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