『不連続殺人事件』(坂口安吾)_書評という名の読書感想文

『不連続殺人事件』坂口 安吾 角川文庫 1974年6月10日初版


不連続殺人事件 (角川文庫)

戦後間もないある夏、詩人・歌川一馬の招待で、山奥の豪邸に集まったさまざまな男女。作家、詩人、画家、劇作家、女優など、いずれ劣らぬ変人・奇人ぞろい。邸内に異常な愛と憎しみが交錯するうちに、世にも恐るべき、8つの殺人が生まれた! 不連続殺人の裏に秘められた悪魔の意図は何か? 鬼才安吾が読者に挑んだ不滅のトリック! 多くのミステリ作家が絶賛する、日本推理小説史に輝く傑作。第2回探偵作家クラブ賞受賞作。(角川文庫)

この小説は昭和22年9月から翌23年8月にかけ、雑誌「日本小説」において「懸賞付き犯人当て小説」として発表された作品です。が、間違っても坂口安吾は「推理作家」ではありません。

すごいのは、この小説が同時期に発表された『獄門島』(横溝正史)や『刺青殺人事件』(高木彬光)をさしおいて、第2回探偵作家クラブ賞(現・日本推理作家協会賞)を受賞しているということです。

推理作家による数多ある秀作を退けて、いわば「素人」の手になる初めての作品が一番の賞を獲ったわけです。時代が違い、さすがに古めかしくもありますが、それでも現在まで版を重ねているのは、確かに読まれ続けているということ。蓋し名作で、今あるミステリーの原点とも言え、読むとちょっと自慢になるかもしれません。

※山奥にある資産家の館で繰り広げられる8件もの殺人は、残忍かつ非道でありながら、現実には起こり得ない、よくできたドラマを観ているような感じがします。

登場人物が多くややこしいと感じるかもしれませんが、それぞれのキャラクターが際立っており、案外混乱せずに読むことができます。さすがに文章は時代がかっており慣れるまでは苦労もしますが、そのうち段々と気にならなくなります。

中に登場する巨勢(こせ)博士 - 博士と言っても、実際は博士でも何でもありません。本業よりも探偵に凝り出した弱冠29歳の若僧です。大いなる尊敬と揶揄をこめて「博士」と呼ばれています - がする圧巻の種明かしまで、粘り強く読んでみてください。

余談ですが、暇な方は「坂口安吾」を検索し、Wikipediaを開いてみてください。この人がどんな人かがわかる、ちょっと驚く写真が載っています。

 

この本を読んでみてください係数  80/100


不連続殺人事件 (角川文庫)

◆坂口 安吾
1906年新潟県新潟市生まれ。55年、脳出血により48歳で急逝。
東洋大学印度哲学倫理学科卒業。

作品 「堕落論」「二流の人」「風博士」「白痴」「桜の森の満開の下」他多数

関連記事

『ラブレス』(桜木紫乃)_書評という名の感想文

『ラブレス』 桜木 紫乃  新潮文庫 2013年12月1日発行 @630  

記事を読む

『草にすわる』(白石一文)_書評という名の読書感想文

『草にすわる』白石 一文 文春文庫 2021年1月10日第1刷 草にすわる (文春文庫)

記事を読む

『風味絶佳』(山田詠美)_書評という名の読書感想文

『風味絶佳』山田 詠美 文芸春秋 2008年5月10日第一刷 風味絶佳  

記事を読む

『星々の悲しみ』(宮本輝)_書評という名の読書感想文

『星々の悲しみ』宮本 輝 文春文庫 2008年8月10日新装版第一刷 星々の悲しみ (文春文庫

記事を読む

『ぼくがきみを殺すまで』(あさのあつこ)_書評という名の読書感想文

『ぼくがきみを殺すまで』あさの あつこ 朝日文庫 2021年3月30日第1刷 ぼくがきみを殺

記事を読む

『プラナリア』(山本文緒)_書評という名の読書感想文

『プラナリア』山本 文緒 文春文庫 2020年5月25日第10刷 プラナリア (文春文庫)

記事を読む

『そして、バトンは渡された』(瀬尾まいこ)_書評という名の読書感想文

『そして、バトンは渡された』瀬尾 まいこ 文春文庫 2020年9月10日第1刷 そして、バト

記事を読む

『橋を渡る』(吉田修一)_書評という名の読書感想文

『橋を渡る』吉田 修一 文春文庫 2019年2月10日第一刷 橋を渡る (文春文庫)

記事を読む

『私の息子はサルだった』(佐野洋子)_書評という名の読書感想文

『私の息子はサルだった』佐野 洋子 新潮文庫 2018年5月1日発行 私の息子はサルだった (

記事を読む

『硝子の葦』(桜木紫乃)_書評という名の読書感想文

『硝子の葦』桜木 紫乃 新潮文庫 2014年6月1日発行 硝子の葦 (新潮文庫) &nb

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

『カゲロボ』(木皿泉)_書評という名の読書感想文

『カゲロボ』木皿 泉 新潮文庫 2022年6月1日発行

『あたしたち、海へ』(井上荒野)_書評という名の読書感想文

『あたしたち、海へ』井上 荒野 新潮文庫 2022年6月1日発行

『白昼夢の森の少女』(恒川光太郎)_書評という名の読書感想文

『白昼夢の森の少女』恒川 光太郎 角川ホラー文庫 2022年5月25

『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』(李龍徳)_書評という名の読書感想文

『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』李 龍徳 河出書房 2022年3月

『JK』(松岡圭祐)_書評という名の読書感想文

『JK』松岡 圭祐 角川文庫 2022年5月25日初版

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑