『孤独論/逃げよ、生きよ』(田中慎弥)_書評という名の読書感想文

『孤独論/逃げよ、生きよ』田中 慎弥 徳間書店 2017年2月28日初版

作家デビューまで貫き通した孤独な15年間。追い込まれた者だけが知る最終兵器としての思考 - 。孤高の芥川賞作家、窮地からの人生論。(「BOOK」データベースより)

ずいぶんと「辛気臭い」男に思えるが、嫌いではない。そういえば昔、同級生の中に似た奴がいたような、いなかったような・・・・

呆れるくらいシャイなくせに、時々、ぼそっと(聞き取れないほどの小さな声で)思いもしない尖ったもの言いをするので、油断がならない。表情が乏しく、何を思って生きているのか。わかり辛いのだが、話すと案外色んな事を知っており、やはり油断できない。

普段の奴というのは、いつ見ても(どこか具合が悪そうな)白っぽい顔をしており、明らかに運動不足のひょろついた身体で、押せばなんなく倒れてしまうような、見るからに頼りない男で、

わざと気に障るようなことを言うと、顔を真っ赤に最初は抗弁するにはするのだが、それも長くは続かない。次第に無口になり、見ると涙を堪えているようで、悔しいに違いないのだが、言えばまた言い負かされるのがわかっているので、我慢するしか仕方ない。

田中慎弥という作家は、私にとってそんなイメージがする人物なのです。彼より一回りも上の私は、常々、彼をそんなふうに眺めています。(誠に勝手な言い分で申し訳ありません)
・・・・・・・・・
各章のタイトルの次にあるのが、以下にある著名人の格言です。夏目漱石と手塚治虫はいいにして、あとの4人は聞いたこともない。この手の本にはよくあることで、試しに書き出してみました。

第一章 自らを尊しと思わぬものは奴隷なり。(夏目漱石)

第二章 合理化はゆとりや遊びの空間を消して、むしろ人を遠ざけることになる。(手塚治虫)

第三章 孤独の寂しさが人間の心を静かに燃やしてくれる。(前田夕暮)
※前田夕暮は、歌人。明治から昭和期にかけて活動した人。

第四章 時間や手間の無駄を嫌い、学習の便利を追求すればするほど、結局、学習そのものの効果が薄くなる。(吉田武)
※吉田武は、おそらくは歌人。「福島県県民の歌」の作詞者。

第五章 他人と比較して、他人が自分より優れていたとしても、それは恥ではない。しかし、去年の自分より、今年の自分が優れていないのは立派な恥だ。(ジョン・ラボック)
※ジョン・ラボックは、イギリスの銀行家、政治家、生物学者、考古学者。初代エイヴベリー男爵。

第六章 人間の仕事というものは、それが文学であれ、音楽であれ、絵であれ、建築であれ、そのほかなんであれ、常にその人自身の自画像である。(サミュエル・バトラー)
※サミュエル・バトラーは、イギリスの作家。詩人。

さすがは何もしないで本ばかり読んで15年いた人のチョイスです。ここだけ読んでも、為になるといえば為になる。

では、肝心の中身はというと・・・・、申し訳ないのですが、私は書かないでおこうと思います。私みたいな歳をとった人間が書くと、どうしても穿った見方や言い方をしそうで、それはあまりよろしくないのではと。

正しいと思う反面、「今更感」が邪魔をしてうまくありません。言わんとするところは十分理解できますし、そう思って生きてきたつもりではあります。その結果私がどうであったのか、それを言うには歳をとり過ぎて、どうこう言うのはお門違いではないかと。

逃げ方が上手だったのか、下手だったのか。今もそれはわからぬままですが、とりあえず私はこうして生きており、大した後悔もしてはいません。

この本を読んでみてください係数 75/100

◆田中 慎弥
1972年山口県下関市生まれ。
山口県立下関中央工業高等学校卒業。

作品 「切れた鎖」「夜蜘蛛」「神様のいない日本シリーズ」「犬と鴉」「共喰い」「図書準備室」「実験」「燃える家」など

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