『能面検事の奮迅』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『能面検事の奮迅』中山 七里 光文社文庫 2024年4月20日 初版1刷発行

大阪地検のエース 能面 VS 特捜部のホープ 鬼面 超人気検察ミステリー 第二弾!!

国有地払い下げにともなう贈収賄疑惑に、担当の特捜検事による文書改竄 - 大阪地検を揺るがす大事件に秘められた真相とは?

学校法人に対する国有地払い下げに関して近畿財務局職員の収賄疑惑が! 大阪地検特捜部が捜査を始めるが、今度は担当検事による文書改竄疑惑が浮上する。相次ぐ不祥事に最高検から調査チームが派遣され、一級検事の不破俊太郎も特捜部の調べに加わることに - 。どんな圧力にも表情を変えぬ 〈能面検事〉 が、事務官の惣領美晴とともに難事件の真相を追う! (光文社文庫)

あれ? 以前、これとよく似た事件が実際にあったのでは・・・・・・・ と、読むとすぐに多くの人がきっとそう思うことでしょう。それは間違いではありません。但し、事件の発端こそ似たものですが、中盤以降、物語はまるで違う様相へと変化をします。描かれるのは、有能な検事同士の闘いの一部始終と、その先にある予想もしない顛末です。

- 本書の導入部となる荻山学園の一件は、現実の森友学園問題をモデルにしている。学校法人森友学園が小学校の用地として2016年に購入した大阪府豊中市の国有地をめぐり、売却価格の決定の過程や、そこに安倍晋三首相 (当時)・昭恵夫妻が関与した可能性などが取り沙汰された事件だ。

この件では財務省が近畿財務局に対して森友学園関連の公文書の改竄を命じていたことが発覚し、2018年には書き換えを強いられた近畿財務局職員が自殺するという悲劇が起きた。

ж

しかし、本書の場合、森友学園問題を明白なモデルにしつつも、現実をそれほど忠実になぞろうとしているわけではない。むしろ不破と、特捜部のホープでありながら証拠改竄の疑いをかけられた高峰との対決が物語のメインとなっている。

特捜部 (正式には特別捜査部) は東京・大阪・名古屋の三地検にしかない部署であり、警察から送致された事件を検討する他部署の検事とは異なり、最初から独自の捜査を行う権限を持つ少数精鋭のエリート集団である。

高峰はその特捜部を代表するほどの敏腕検事であり、攻め方を知っているからこそ逃げ方も知っているという意味では不破にとってかつてない強敵だ。検事対検事の対決がどのような決着を迎えるのか、興味を引かれない読者はいないだろう。(解説より)

※そうか!? - そのとき確かに私もそんな気がしたにはしたのでした。どこか不自然な、しかしどこが不自然かがわからないままに、読み過ごしていました。- 最後の最後になって、そんなことに気付きます。くれぐれも、気を抜かずに読んでください。

この本を読んでみてください係数 85/100

◆中山 七里
1961年岐阜県生まれ。
花園大学文学部国文科卒業。

作品 「切り裂きジャックの告白」「七色の毒」「さよならドビュッシー」「闘う君の唄を」「嗤う淑女」「魔女は甦る」「連続殺人鬼カエル男」「護られなかった者たちへ」他多数

関連記事

『笑え、シャイロック』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『笑え、シャイロック』中山 七里 角川文庫 2020年10月25日初版 入行三年目

記事を読む

『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』中山 七里 講談社文庫 2013年11月15日第一刷 御子柴礼司は被

記事を読む

『七怪忌』(最東対地)_書評という名の読書感想文

『七怪忌』最東 対地 角川ホラー文庫 2021年4月25日初版 この学校に伝わる七

記事を読む

『作家刑事毒島の嘲笑』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『作家刑事毒島の嘲笑』中山 七里 幻冬舎文庫 2024年9月5日 初版発行 性格最悪同士の最

記事を読む

『呪い人形』(望月諒子)_書評という名の読書感想文

『呪い人形』望月 諒子 集英社文庫 2022年12月25日第1刷 [集英社文庫45

記事を読む

『ニシノユキヒコの恋と冒険』(川上弘美)_書評という名の読書感想文

『ニシノユキヒコの恋と冒険』川上 弘美 新潮文庫 2006年8月1日発行 ニシノくん、幸彦、西野君

記事を読む

『切願 自選ミステリー短編集』(長岡弘樹)_書評という名の読書感想文

『切願 自選ミステリー短編集』長岡 弘樹 双葉文庫 2023年3月18日第1刷発行

記事を読む

『きのうの神さま』(西川美和)_書評という名の読書感想文

『きのうの神さま』西川 美和 ポプラ文庫 2012年8月5日初版 ポプラ社の解説を借りると、『ゆ

記事を読む

『漁港の肉子ちゃん』(西加奈子)_書評という名の読書感想文

『漁港の肉子ちゃん』西 加奈子 幻冬舎文庫 2014年4月10日初版 男にだまされた母・肉子ちゃん

記事を読む

『新装版 汝の名』(明野照葉)_書評という名の読書感想文

『新装版 汝の名』明野 照葉 中公文庫 2020年12月25日改版発行 三十代の若

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『曾根崎心中/新装版』(角田光代 原作 近松門左衛門)_書評という名の読書感想文

『曾根崎心中/新装版』角田 光代 原作 近松門左衛門 リトルモア 2

『枯木灘』(中上健次)_書評という名の読書感想文

『枯木灘』中上 健次 河出文庫 2019年10月30日 新装新版3刷

『僕の女を探しているんだ』(井上荒野)_書評という名の読書感想文

『僕の女を探しているんだ』井上 荒野 新潮文庫 2026年1月1日

『この本を盗む者は』(深緑野分)_書評という名の読書感想文

『この本を盗む者は』深緑 野分 角川文庫 2025年11月5日 8版

『いつも彼らはどこかに』(小川洋子)_書評という名の読書感想文

『いつも彼らはどこかに』小川 洋子 新潮文庫 2025年11月25日

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑