『嫌いなら呼ぶなよ』(綿矢りさ)_書評という名の読書感想文

『嫌いなら呼ぶなよ』綿矢 りさ 河出文庫 2025年8月20日 初版発行

あの綿矢りさが老害作家!? 爆笑、のち冷や汗がとまらない! 整形、不倫、SNS炎上・・・・・・・痛快な毒とユーモアが社会をえぐる小説集

悪いのは不倫した 「僕」 だってもちろんわかってます。でも・・・・・・・。胸の奥でざわつく本音がスパークする表題作 「嫌いなら呼ぶなよ」。プチ整形を明かしたら職場で執拗にいじられた 「私」。吹っ切れて一発逆転を狙ったら、まさかの大成功? (「眼帯のミニーマウス」)。いっそ開き直って人生のリミッターごと外せ! パンクな毒が炸裂する、綿矢りさの真骨頂。◎解説=ふかわりょう (河出文庫)

(目次)
眼帯のミニーマウス
神田タ
嫌いなら呼ぶなよ
老は害で若も輩

単行本の発刊当初、「今までの綿矢りさと違う」 という書店員の口コミで話題になり久々に “売れた“ ようですが、私が読んだ感想を言うと、久々に 「著者らしさ全開の本」 が出たという感じなのですが、どうでしょう? エッジの効いた毒舌は彼女の真骨頂で、それはデビュー当初から何も変わってはいません。最後の一篇を読み、それが正しく証明されているようで、私は大いに安堵しました。彼女は今も変わらず健在であるということに。

最後の一篇 「老 (ロウ) は害 (ガイ)で若 (ジャク) も輩 (ヤカラ)」 は前の三作を包む包装紙として見事に機能している。一人を標的としたイジメではなく、女性作家、女性ライター、男性編集者がこぞって被害意識に燃え、メールでバトルを展開する。しかも作家名は 「綿矢」 と実名だ。「もしかしたらコロナ禍という特殊な状況が色んな人の頭の磁場を狂わせているのかもしれない」 という男性編集者のつぶやきが効いている。

どの話もコワイが、読後感は愉快で痛快、笑いを誘う。他者を理解しようとする著者の観察眼と、批評の矛先を自分にも向ける冷静さの賜物 (たまもの) だろう。(好書好日/「綿矢りさ 『嫌いなら呼ぶなよ』 人間の闇、コワイが痛快に」 からの抜粋)

※笑います。あなは最後にきっと笑うはずです。そして、思った以上の爽快感に包まれることでしょう。

この本を読んでみてください係数 85/100

◆綿矢 りさ
1984年京都府京都市左京区生まれ。
早稲田大学教育学部国語国文科卒業。

作品 「インストール」「夢を与える」「蹴りたい背中」「憤死」「勝手にふるえてろ」「かわいそうだね?」「ひらいて」「しょうがの味は熱い」「大地のゲーム」「オーラの発表会」「パッキパキ北京」他

関連記事

『九年前の祈り』(小野正嗣)_書評という名の読書感想文

『九年前の祈り』小野 正嗣 講談社 2014年12月15日第一刷 第152回芥川賞受賞作、小野正

記事を読む

『これが私の優しさです』(谷川俊太郎)_書評という名の読書感想文

『これが私の優しさです』谷川 俊太郎 集英社文庫 1993年1月25日第一刷 1952年のデ

記事を読む

『カエルの楽園』(百田尚樹)_書評という名の読書感想文

『カエルの楽園』百田 尚樹 新潮文庫 2017年9月1日発行 平和な地を求め旅に出たアマガエルのソ

記事を読む

『きのうの神さま』(西川美和)_書評という名の読書感想文

『きのうの神さま』西川 美和 ポプラ文庫 2012年8月5日初版 ポプラ社の解説を借りると、『ゆ

記事を読む

『後妻業』黒川博行_書評という名の読書感想文(その2)

『後妻業』(その2) 黒川 博行 文芸春秋 2014年8月30日第一刷 ※二部構成になってます。

記事を読む

『血縁』(長岡弘樹)_書評という名の読書感想文

『血縁』長岡 弘樹 集英社文庫 2019年9月25日第1刷 コンビニの店員が男にナ

記事を読む

『綺譚集』(津原泰水)_読むと、嫌でも忘れられなくなります。

『綺譚集』津原 泰水 創元推理文庫 2019年12月13日 4版 散策の途上で出合

記事を読む

『凶宅』(三津田信三)_書評という名の読書感想文

『凶宅』三津田 信三 角川ホラー文庫 2017年11月25日初版 山の中腹に建つ家に引っ越してきた

記事を読む

『神の悪手』(芦沢央)_書評という名の読書感想文

『神の悪手』芦沢 央 新潮文庫 2024年6月1日 発行 このどんでん返しが切なすぎる!! 

記事を読む

『カレーライス』(重松清)_教室で出会った重松清

『カレーライス』重松 清 新潮文庫 2020年7月1日発行 「おとなになっても忘れ

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『羆嵐』(吉村昭)_書評という名の読書感想文

『羆嵐』吉村 昭 新潮文庫 2026年12月20日 62刷発行

『妊娠カレンダー』(小川洋子)_書評という名の読書感想文

『妊娠カレンダー』小川 洋子 文春文庫 2020年12月20日 第2

『カフェーの帰り道』(嶋津輝)_書評という名の読書感想文

『カフェーの帰り道』嶋津 輝 東京創元社 2026年1月23日 4版

『きっと君は泣く』(山本文緒)_書評という名の読書感想文

『きっと君は泣く』山本 文緒 角川文庫 2026年1月25日 改版初

『彼女たちが隠したかったこと』(一木けい)_書評という名の読書感想文

『彼女たちが隠したかったこと』一木 けい 角川文庫 2026年1月2

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑