『母という呪縛 娘という牢獄』(齊藤彩)_書評という名の読書感想文
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『母という呪縛 娘という牢獄』(齊藤彩), 作家別(さ行), 書評(は行), 齊藤彩
『母という呪縛 娘という牢獄』齊藤 彩 講談社文庫 2026年3月13日 第1刷発行
大反響! 累計22万部突破 膨大な往復書簡をもとに綴る極限のノンフィクション

私の、こんな身近で、こんな事件があったのは初めてのことでした。ある日車で横を通ると、そこには規制線を示す黄色いテープが貼られていました。いったい何があったのか - 気にはなったのですが、まさかこんな騒ぎになるほどのこととは思いもしませんでした。
よく通る道のT字路の手前、左側の一帯は雑木林で奥に小さな川があります。道から雑木林までは少し距離があり、そこは草も短く綺麗に整備されています。一方、その奥にある雑木林は生えたなりの様子で鬱蒼とし、よくよく見なければ川があるのもわかりません。川縁までは傾斜になっており、胴体だけの遺体はその一画で発見されたのでした。
誰も気にとめなかったツイッター (現X) への投稿から時が経ち、河川敷で発見されたバラバラ遺体。逮捕されたのは 「医学部9浪」 の娘だった。
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深夜3時42分。母を殺した娘は、ツイッターに、
「モンスターを倒した。これで一安心だ。」 と投稿した。18文字の投稿は、その意味するところを誰にも悟られないまま、放置されていた。2018年3月10日、土曜日の昼下がり。滋賀県、琵琶湖の南側の野洲川南流河川敷で、両手、両足、頭部のない、体幹部だけの人の遺体が発見された。遺体は激しく腐敗して悪臭を放っており、多数のトンビが群がっているところを、通りかかった住民が目に止めたのである。
滋賀県警守山署が身元の特定にあたったが、遺体の損傷が激しく、捜査は難航した。
周辺の聞き込みを進めるうち、最近になってその姿がみえなくなっている女性がいることが判明し、家族とのDNA鑑定から、ようやく身元が判明した - 。高崎妙子、58歳 (仮名)。
遺体が発見された河川敷から徒歩数分の一軒家に暮らす女性だった。夫とは20年以上前に別居し、長年にわたって31歳の娘・あかり (仮名) と二人暮らしだった。さらに異様なことも判明した。
娘のあかりは幼少期から学業優秀で中高一貫の進学校に通っていたが、母・妙子に超難関の国立大医学部への進学を強要され、なんと9年にわたって浪人生活を送っていたのだ。結局あかりは医学部には合格せず、看護学科に進学し、4月から看護師となっていた。母・妙子の姿は1月ころから近隣のスーパーやクリーニング店でも目撃されなくなり、あかりは 「母は別のところにいます」 などと不審な供述をしていた。
6月5日、守山署はあかりを死体遺棄容疑で逮捕する。その後、死体損壊、さらに殺人容疑で逮捕・起訴に踏み切った。
一審の大津地裁ではあくまで殺人を否認していたあかりだが、二審の大阪高裁に陳述書を提出し、一転して自らの犯行を認める。母と娘 - 20代中盤まで、風呂にも一緒に入るほど濃密な関係だった二人の間に、何があったのか。
公判を取材しつづけた記者が、拘置所のあかりと面会を重ね、刑務所移送後も膨大な量の往復書簡を交わすことによって紡ぎだす真実の物語。獄中であかりは、多くの 「母」 や同囚との対話を重ね、接見した父のひと言に心を奪われた。そのことが、あかりに多くの気づきをもたらした。
一審で無表情のまま尋問を受けたあかりは、二審の被告人尋問で、こらえきれず大粒の涙をこぼした - 。
殺人事件の背景にある母娘の相克に迫った第一級のノンフィクション。(WEBサイト KODANSHA より)
※あまりに独善的な、こうと決めた娘の将来を何が何でも手にするのだという母の執着は、何を契機に、如何なる変遷を経て形成されたのでしょう。そして、こんなにも長い間、理不尽に過ぎる母からの強要に、あかりはなぜ従ったのか。(逃げようと思えば逃げられたろうに) なぜ逃げなかったのか。その理由を知りたいと思いました。
この本を読んでみてください係数 85/100

◆齊藤 彩 1995年東京都生まれ。
2018年3月北海道大学理学部地球惑星科学科卒業後、共同通信社入社。新潟支局を経て、大阪支社編集局社会部で司法担当記者。2021年末退職。本書がはじめての著作となる。
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