『帝都地下迷宮』(中山七里)_書評という名の読書感想文
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最終更新日:2023/09/11
『帝都地下迷宮』(中山七里), 中山七里, 作家別(な行), 書評(た行)
『帝都地下迷宮』中山 七里 PHP文芸文庫 2022年8月17日第1版第1刷
![](http://choshohyo.com/wp-content/uploads/2023/02/51ZsfdDC0gL._SL250_.jpg)
現代・東京の地下鉄廃駅跡に潜む100名もの人々。彼らの秘密は国を揺るがす - 著者新境地、怒涛の 「鉄道」 ミステリー!
鉄道マニアの公務員・小日向はある日、廃駅で立ち入り禁止となっている地下鉄銀座線萬世橋駅へと潜り込む。そこで出会ったのは、政府の “ある事情” により地下で生活する謎の集団 「エクスプローラー」 だった。その集団内で起こった殺人事件をきっかけに、小日向は捜査一課と公安の対立も絡む大事件に巻き込まれていく・・・・・・・。エクスプローラーが抱える秘密とは? 殺人犯は誰か? 東京の地下で縦横に展開するノンストップミステリー! (PHP文芸文庫)
本作 『帝都地下迷宮』 は、2017年秋から 「WEB文蔵」 にて連載され、2020年に中山七里の作家生活10周年記念キャンペーンとして実現した、”12ヶ月連続刊行” の第2作として単行本化され、その後文庫化なった作品です。
舞台は、大都市・東京の地下でかつて実際に使用されていた地下鉄の駅 - 新たな路線の開通でその役割を終えたにもかかわらず、なぜか今も当時のままに存在する “駅” がありました。その廃駅で、人目を忍びながら暮らす人々がいます。
主人公の小日向巧は、普段は区役所の生活支援課に勤務する公務員でありながら、重度の廃駅オタクとして余暇とリソースを趣味に費やす、地味めの二十六歳。しかし、地味ではあっても困っている人を見過ごせない性分のようで、生活保護を求めて日々窓口にやってくる人たちを、できるだけ国の制度で救ってやりたいと頑張る心優しい青年でもあります。
*
- 彼はある日、公式の見学ツアーでは決して公開されることのない、より深部の廃駅への不法侵入を試みます。その手口はこうです。深夜の秋葉原へ出向き、まず物陰で作業着に着替えます。次に路面の通風孔の周りにネットで購入したカラーコーンを並べ、工事中を装います。そしてグレーチング (格子状の蓋) をはずし、そこから縄梯子をつたって降りていく、というもの。
これはもちろん、公務員にあるまじき立派な違法行為です。昨今、リアルでも鉄オタの迷惑行為がよくニュースで取り上げられますが、ジャンルを問わず自身の欲求を満たすためなら時に正気を失ってしまうのがオタクの恐ろしいところ。その点に関しては、小日向くんも同じ穴の貉というわけですね。これがすべての始まりでした。(解説より)
このあと小日向くんは、誰もいないはずの地下の廃駅で、香澄と名乗る少女と出会うことになります。
思いもしない出会いに戸惑うばかりの小日向くんは、香澄の口から、さらに衝撃的な事実を知らされます。自分を含め、地下には100名もの人間がいる。ここで暮らしていると - 彼女はそう言ったのでした。
※例えば 『切り裂きジャックの告白』、例えば 『連続殺人鬼カエル男』、例えば 『護られなかった者たちへ』 (これは一等傑作でした!) などと比べると、やや “読み劣り” すると感じるのは私だけでしょうか。これまでにない斬新な切り口は、それはそれでまあよいと思うのですが、大仰なタイトルの割にはやや雑駁で、現実とは遠い印象を受けました。残念!
この本を読んでみてください係数 75/100
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◆中山 七里
1961年岐阜県生まれ。
花園大学文学部国文科卒業。
作品 「切り裂きジャックの告白」「七色の毒」「さよならドビュッシー」「闘う君の唄を」「嗤う淑女」「魔女は甦る」「連続殺人鬼カエル男」「護られなかった者たちへ」他多数
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