『連続殺人鬼カエル男』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『連続殺人鬼カエル男』中山 七里 宝島社 2011年2月18日第一刷


連続殺人鬼 カエル男 (宝島社文庫)

マンションの13階からぶら下げられた女性の全裸死体。口蓋をフックにひっかけられ、口からは無数の蛆が溢れ出て蠢いている。傍らには、子供が書いたような稚拙な文字によるメモが添えられていた。

きょう、かえるをつかまえたよ。
はこのなかにいれていろいろあそ
んだけど、だんだんあきてきた。
おもいついた。みのむしのかっこ
うにしてみよう。くちからはりを
つけてたかいたかいところにつる
してみよう。

そんな文言で綴られた犯行声明は、その後、第二、第三の死体現場にも残され、舞台となる埼玉県飯能市は市民を巻き込んで大パニックに陥る。捜査本部は精神医学界の重鎮の意見を参考にしつつ、精力的に捜査を進めるが、「カエル男」は警察をまるで嘲笑うかのように凄惨な犯行を繰り返し・・・・・・・

殺されたのは、若い女性と、次に老人、そして少年 - 荒尾礼子指宿仙吉有働真人 - 果たして三人に共通するものとは? どんな怨みがあって(あるいは目的もなく無差別に)あんなにまで惨い殺し方をしたのだろうか・・・・・・・

それがわからない。

カエル男は徹底した平等主義者だ。カエル男には性別も年齢も職業も関係ない。年収も血液型も趣味嗜好も意味を失う。意味を持つのは名前という記号だけだ。それだけがカエル男の興味を引く。その前では全ての人間が個性を剥奪され、ただの記号と成り果てる。そして順番に並べられて捕食者の牙を待つだけの存在となる。

飯能市の市民はその平等主義に戦慄した。殺人事件が起きる度、人は好奇心を抱いてニュースに見入るが、それは自分とは遠く離れた場所で繰り広げられるドラマだからだ。殺す人間には殺すだけの理由があり、殺される人間には殺されるだけの理由がある。(P185)

ところが。

ところがである。 漸くにして事件の全容を解明したかに思えたものが、実は、そうではなかったことが判明する。

事件は単に「カエル男」に止まらず、さらなる「悪意」を伴って、また次の「悪意」へと連なっていく。

 

この本を読んでみてください係数 85/100


連続殺人鬼 カエル男 (宝島社文庫)

◆中山 七里
1961年岐阜県生まれ。
花園大学文学部国文科卒業。

作品 「切り裂きジャックの告白」「贖罪の奏鳴曲」「追憶の夜想曲」「七色の毒」「さよならドビュッシー」「いつまでもショパン」「ヒポクラテスの誓い」他多数

関連記事

『私以外みんな不潔』(能町みね子)_書評という名の読書感想文

『私以外みんな不潔』能町 みね子 幻冬舎文庫 2022年2月10日初版 他の

記事を読む

『楽園の真下』(荻原浩)_書評という名の読書感想文

『楽園の真下』荻原 浩 文春文庫 2022年4月10日第1刷 「日本でいちばん天国に

記事を読む

『竜血の山』(岩井圭也)_書評という名の読書感想文

『竜血の山』岩井 圭也 中央公論社 2022年1月25日初版発行 北の鉱山に刻まれた

記事を読む

『吉祥寺の朝日奈くん』(中田永一)_書評という名の読書感想文

『吉祥寺の朝日奈くん』中田 永一 祥伝社文庫 2012年12月20日第一刷 吉祥寺の朝日奈くん

記事を読む

『ユリゴコロ』(沼田まほかる)_書評という名の読書感想文

『ユリゴコロ』沼田 まほかる 双葉文庫 2014年1月12日第一刷 ユリゴコロ (双葉文庫)

記事を読む

『リリアン』(岸政彦)_書評という名の読書感想文

『リリアン』岸 政彦 新潮社 2021年2月25日発行 リリアン 街外れで暮らすジャズ

記事を読む

『枯れ蔵』(永井するみ)_書評という名の読書感想文

『枯れ蔵』永井 するみ 新潮社 1997年1月20日発行 枯れ蔵 (新潮ミステリー倶楽部)

記事を読む

『るんびにの子供』(宇佐美まこと)_書評という名の読書感想文

『るんびにの子供』宇佐美 まこと 角川ホラー文庫 2020年8月25日初版 るんびにの子供

記事を読む

『その日東京駅五時二十五分発』(西川美和)_書評という名の読書感想文

『その日東京駅五時二十五分発』西川 美和 新潮文庫 2015年1月1日発行 その日東京駅五時二

記事を読む

『私の消滅』(中村文則)_書評という名の読書感想文

『私の消滅』中村 文則 文春文庫 2019年7月10日第1刷 私の消滅 (文春文庫)

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

『カインの傲慢/刑事犬養隼人』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『カインの傲慢/刑事犬養隼人』中山 七里 角川文庫 2022年6月2

『カゲロボ』(木皿泉)_書評という名の読書感想文

『カゲロボ』木皿 泉 新潮文庫 2022年6月1日発行

『あたしたち、海へ』(井上荒野)_書評という名の読書感想文

『あたしたち、海へ』井上 荒野 新潮文庫 2022年6月1日発行

『白昼夢の森の少女』(恒川光太郎)_書評という名の読書感想文

『白昼夢の森の少女』恒川 光太郎 角川ホラー文庫 2022年5月25

『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』(李龍徳)_書評という名の読書感想文

『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』李 龍徳 河出書房 2022年3月

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑