『ワルツを踊ろう』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『ワルツを踊ろう』中山 七里 幻冬舎文庫 2019年10月10日初版

ワルツを踊ろう (幻冬舎文庫)

金も仕事も住処も失った元エリート・溝端了衛は20年ぶりに故郷に帰る。だがそこは、携帯の電波は圏外、住民は曲者ぞろいの限界集落。地域に溶け込む為、了衛は手を尽くすが、村八分にされ、さらには愛犬が不審死する。追い詰められ考えた乾坤一擲の策は予想外の結末をもたらし - 。降り注ぐのは恩寵か厄災か著者史上最狂ミステリ。(幻冬舎文庫)

(解説に) タイトルからも分かるように、本書の底流には、ウィーンの森の物語〉〈皇帝円舞曲と並びシュトラウスⅡ世の三大ワルツとされる美しく青きドナウの旋律が流れている。 とあります。

なら、あなたはどんな物語を想像するでしょう? クラシック音楽にはまるで興味がない。聴きたいとも思わない。故に、そんな人が読んでも面白いはずがない ・・・・・・・ とは限りません。

なぜなら、中山七里がそんな話を書くわけないのですから。あくまでそれは “底流” であり、この物語を逆説的に印象付けようとする、作者ならではの企みに他なりません。

目次を見てみましょう。

一 ドナウはかくも青く美しく
二 ぼくらのウィーンは君に挨拶をし
三 君の銀のリボンは土地と土地を結ぶ
四 君の美しい岸辺では
五 嬉々として心が高鳴る

※騙されてはいけません。これらの目次の全ては、これから起こる凶事をまことしやかに言い換えた “暗示” のようなものです。事は、格調高い文言とは裏腹に、東京都内に現存する限界集落での、一人の人間のある壮絶な闘いの顛末です。追い詰められ、感極まった彼は、では、何を為すべきだったのでしょう。

この本を読んでみてください係数 80/100

ワルツを踊ろう (幻冬舎文庫)

◆中山 七里
1961年岐阜県生まれ。
花園大学文学部国文科卒業。

作品 「切り裂きジャックの告白」「贖罪の奏鳴曲」「追憶の夜想曲」「七色の毒」「さよならドビュッシー」「闘う君の唄を」「嗤う淑女」「連続殺人鬼カエル男」他多数

関連記事

『私のなかの彼女』(角田光代)_書評という名の読書感想文

『私のなかの彼女』角田 光代 新潮文庫 2016年5月1日発行 私のなかの彼女 (新潮文庫)

記事を読む

『血縁』(長岡弘樹)_書評という名の読書感想文

『血縁』長岡 弘樹 集英社文庫 2019年9月25日第1刷 血縁 (集英社文庫) コン

記事を読む

『白衣の嘘』(長岡弘樹)_書評という名の読書感想文

『白衣の嘘』長岡 弘樹 角川文庫 2019年1月25日初版 白衣の嘘 (角川文庫) 苦

記事を読む

『最後の命』(中村文則)_書評という名の読書感想文

『最後の命』中村 文則 講談社文庫 2010年7月15日第一刷 最後の命 (講談社文庫)

記事を読む

『ゆれる』(西川美和)_書評という名の読書感想文

『ゆれる』西川 美和 文春文庫 2012年8月10日第一刷 ゆれる (文春文庫) &nb

記事を読む

『十九歳の地図』(中上健次)_書評という名の読書感想文

『十九歳の地図』中上 健次 河出文庫 2020年1月30日新装新版2刷 十九才の地図 (河出

記事を読む

『ダブル』(永井するみ)_極上のサスペンスは日常から生まれる

『ダブル』永井 するみ 双葉文庫 2020年2月15日第1刷 ダブル<新装版> (双葉文庫)

記事を読む

『ドクター・デスの遺産』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『ドクター・デスの遺産』中山 七里 角川文庫 2020年5月15日4版発行 ドクター・デスの

記事を読む

『逃亡者』(中村文則)_山峰健次という男。その存在の意味

『逃亡者』中村 文則 幻冬舎 2020年4月15日第1刷 逃亡者 「一週間後、君が生き

記事を読む

『私の命はあなたの命より軽い』(近藤史恵)_書評という名の読書感想文

『私の命はあなたの命より軽い』近藤 史恵 講談社文庫 2017年6月15日第一刷 私の命はあな

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

『物語が、始まる』(川上弘美)_書評という名の読書感想文

『物語が、始まる』川上 弘美 中公文庫 2012年4月20日9刷

『魯肉飯のさえずり』(温又柔)_書評という名の読書感想文

『魯肉飯のさえずり』温 又柔 中央公論新社 2020年8月25日初版

『理系。』(川村元気)_書評という名の読書感想文

『理系。』川村 元気 文春文庫 2020年9月10日第1刷 理

『樽とタタン』(中島京子)_書評という名の読書感想文

『樽とタタン』中島 京子 新潮文庫 2020年9月1日発行 樽

『ミーナの行進』(小川洋子)_書評という名の読書感想文

『ミーナの行進』小川 洋子 中公文庫 2018年11月30日6刷発行

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑