『終わりなき夜に生れつく』(恩田陸)_書評という名の読書感想文
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『終わりなき夜に生れつく』(恩田陸), 作家別(あ行), 恩田陸, 書評(あ行)
『終わりなき夜に生れつく』恩田 陸 文春文庫 2020年1月10日第1刷
はじめに、あなたは恩田陸の傑作 - 架空の高知 「途鎖国」 を舞台にしたダーク・ファンタジー 『夜の底は柔らかな幻』(文春文庫・上下巻) をご存じだろうか? 日本版・地獄の黙示録と称される、あの壮大な物語のことである。
本作は、そのスピンオフ作品にあたる。山また山の地にあって、「山には何があるのか? なぜ途鎖国にはイロを持つものが多いのか? 闇月に集まる個性的な在色者たちが駆け引きと激しい戦いを繰り広げ、その謎の真相に迫る」 のが、長編 『夜の底は柔らかな幻』 で、
本作では、強力な特殊能力 「イロ」 を持って生まれてきた 「在色者」 の男たちは、いかにして残虐な殺人者となったのか? - その真実が明かされる。
「在色者」 とは何者か? 読んで字のごとく 「色の在る者」。そう、この作品世界には 「イロ」 を持って 「生れつく」 ものがいる。手を触れずに物を動かすことができる、心を読むことができる、頭に直接情報を焼き付け送り込むことができる・・・・・・・いわゆる超能力、といったものだ。それを総称して 「イロ」 と呼んでいる。
ただし野放図にその 「イロ」 の力を使えるわけではない。力を使うことで心身につらい反動があり、強い力を使えば強い反動に悩まされるからだ。それが 「イロ」 をもって生まれたものに大きな負担になるため、通常は薬物投与や脳の手術によって 「均質化」 され、ほとんど力を使うことはない。そう、ほとんどは。
また、「途鎖国」 にはなぜか 「イロ」 を持つ者・・・・・・ 「在色者」 が多く存在する。そのため 「途鎖国」 は 「在色者」 の出入国を厳しく制限し管理している。そしてなぜか、山に入ることを禁じている。死者とまみえることができるという 「闇月」 の時期を除いて・・・・・・・。(解説より/一部略)
第一章 「砂の夜」 アフリカの村で、毎晩一人ずつ男が殺されていく
第二章 「夜のふたつの貌」 医学部に蔓延するクスリの出所は?
第三章 「夜間飛行」 闇からこちらを監視する目の主は?
第四章 「終わりなき夜に生れつく」 雑誌記者が追う男の、恐るべき正体
- 残酷。なのに柔らかで、美しい。恩田陸の描く、至高のアクションホラー
索条痕のない窒息死体が連続で見つかった。この殺人事件に、あの男は関与しているのか。雑誌記者が、あとを追う。特殊能力を持つ者たちが覇権を争う 「途鎖国」 でやがて犯罪者の王として君臨する神山が、闇に目覚める瞬間を描く (表題作)。傑作ダーク・ファンタジー 『夜の底は柔らかな幻』 へと続く鮮烈な作品集。 解説・白井弓子 (文春文庫)
※本編(『夜の底は柔らかな幻』)を先に読むか後で読むかは、たいした問題ではありません。言えるのは、本作だけでもえらくおもしろい、ということです。
この本を読んでみてください係数 85/100
◆恩田 陸
1964年青森県青森市生まれ。宮城県仙台市出身。
早稲田大学教育学部卒業。
作品 「夜のピクニック」「ユージニア」「六番目の小夜子」「中庭の出来事」「木洩れ日に泳ぐ魚」「蜜蜂と遠雷」「私の家では何も起こらない」「EPITAPH東京」他多数
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