『俺はまだ本気出してないだけ』(丹沢まなぶ)_書評という名の読書感想文

『俺はまだ本気出してないだけ』丹沢 まなぶ 小学館文庫 2013年4月10日第一刷


小説 俺はまだ本気出してないだけ (小学館文庫)

 

元々は青野春秋の漫画が原作で、先に映画になってます。堤真一が四十路にして夢を追いかけるおっさん・大黒シズオを演じて話題になった映画です。

その映画を完全ノベライズしたのがこの小説です。※原作漫画はコチラ→俺はまだ本気出してないだけ コミック 1-5巻 セット (IKKI COMIX)

もう、笑えばよいと思いますよ。そして、あぁこんなおっさんもいるんだと思って少し安心してもいいでしょう。

 

世のサラリーマンなら一度や二度は必ず口にした、あるいは心で呟いた憶えがある台詞ですよね。
僅かばかりのエリートサラリーマン以外の、敢えて言いますが”しがない”サラリーマンなら思わないわけがありません。

言い方を変えると、世のしがないサラリーマンは「俺はやるときにはやる。まだ本気モードじゃないだけなんだ」という気持ちを活力にして日々仕事に励んでいるわけです。
そうでも思わないと、やってられないじゃないのよ!

なぜあいつばかりが褒められる? なぜ俺より出世が早いのよ?...要領ばかりよくて、実際にやってるのは俺ですよ俺!...なんて思ったことありません?
上司の理不尽な叱責にじっと耐え忍ぶふりをして、今日は会社が終わったら直ぐに帰って好きな映画をたっぷり観よう、ちょっとの我慢、我慢...なんてことないですか?

いいんです、そんなこと思っても全然いいのです。なぜって、みんなホントは同じようなこと考えてるんですから。

たぶん、その日一日私はあまり調子良くなかったんだと思います。でなければ、今日が昨日とほとんど変化なく空気のごとく過ぎ去った日の仕事帰りだったかも知れません。
何を買う予定もないまま書店に立ち寄って、ふと見つけたのがこの本でした...『俺はまだ本気出してないだけ』
特段の事情があったわけでもなく、何となくブルーでとりとめのないときにこのタイトルはなかなかに刺激的で、安い文庫だったのでふらりと買いました。

 

40を過ぎたダメなおっさんが、一念発起してマンガ家になる話です。

大黒シズオ、41歳。バツイチの子持ち。

“本当の自分”を探すために会社を辞めたものの、朝からゲーム三昧で父親の志郎には怒鳴られ、高校生の娘・鈴子には借金する始末。
バイト先のハンバーガーショップではミスを連発、年下の店長に説教される毎日です。

そんなある日、ついにシズオは自分の生き方を見つけたと宣言するのです。「俺、マンガ家になるわ」

編集部の村上。幼なじみの宮田にアルバイト仲間の市野沢。そして、シズオの将来を憂う志郎とシズオを静かに見守る鈴子。

周囲の人たちにはシズオはどう映っているのでしょう。シズオとは別に、周囲の人たちにもそれぞれの人生があります。ここはしっかり読ませます。

シズオの辞書に「落ち込む」という文字はありません。出版社へ持ち込む原稿は当初全く相手にされませんが、シズオは決して諦めません。

婉曲にダメ出しされても、シズオにとってはあくまで教育的指導であり激励なのでした。根拠のない、底抜けのポジィティブさに苦笑いするしかありません。

それでも彼は最後に、デビューの足がかり、のようなものを掴んで明るく小説は終わっているのです。

 

この本を読んでみてください係数 80/100


小説 俺はまだ本気出してないだけ (小学館文庫)

◆丹沢 まなぶ

1976年神奈川県生まれ。

作品 「シャカリキ!」「罪とか罰とか」「山形スクリーム」「小説MAJOR」など

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