『セルフィの死』(本谷有希子)_書評という名の読書感想文
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『セルフィの死』(本谷有希子), 作家別(ま行), 書評(さ行), 本谷有希子
『セルフィの死』本谷 有希子 新潮社 2024年12月20日 発行
もう二度とSNSができない身体にしてほしい 何故、私は滑稽なのか。ブラックユーモア冴え渡る待望の長編! 自撮り (セルフィ) に取り憑かれた私達よ、R. I. P ♥

自意識と承認欲求から生まれた私達の姿をあぶり出す、地獄展開に気分は爽快。
毎夜、フォロワーが欲しくてベッドで震えているミクルは、その数を増やそうと常に死力を尽くしている。老舗喫茶店でなりふり構わず自撮り、他人の投稿をパクって炎上、原宿系インフルエンサーからのフォローバックの提案・・・・・・・。何もかもうまくいかず七転八倒し、あらゆる希望が根絶やしになった時、ついに訪れた、バズりの先に見えた真実とは。(新潮社)
ずいぶん間が開いたと思ったら、本が出たのは約十年ぶりだそうです。著者が 『異類婚姻譚』 で芥川賞を受賞したのが2015年。その後に出た本は、ほとんど読みました。一時期、私の “イチ押し作家“ でもありました。
みなさんは、『静かに、ねぇ、静かに』(講談社文庫) という本をご存じでしょうか? 当時買った文庫本には、こんな惹句の帯が巻いてあります。
芥川賞受賞から2年、本谷有希子が描くSNS狂騒曲!
海外旅行でインスタにアップする写真で “本当” を実感する僕たち、ネットショッピング依存症から抜け出せず夫に携帯を取り上げられた妻、自分たちだけの “印” を世間に見せるために動画撮影をする夫婦 - 。SNSに頼り、翻弄され、救われる私たちの空騒ぎ。
この人おんなじ事書いてるわ、というのが今回読んだ私の第一印象で、細かな内容は忘れましたが、おそらく 「SNSに頼り、翻弄され、救われる・・・・・・・」 というところまではまるでよく似た話ではないかと。
では、そこから何がどうなって、どう変化したかといいますと、たぶん、(状況は) 一段と悪化しているのではと。自意識と承認欲求の虜になって、もはや打つ手はなく - 自分の “症状“ を自覚し冷静に分析もできるミクルだからこそ - 事態は尚深刻で、簡単には 「抜け出せない」 のだろうと。
WEB本の雑誌 【今週はこれを読め! エンタメ編】 より (一部割愛)
めんどくさくて厄介な主人公にギクッ~本谷有希子 『セルフィの死』 文=高頭佐和子
久々の本谷有希子氏に、ワクワクが止まらない。本谷氏の書く厄介な人々が、私は大好きなのだ。今回の主人公も、かなりめんどくさい。呆れ笑いながらもイラつきが抑えられず、気がつくと得体の知れない寒気に襲われて逃げ出したくなっている。だけど、一体どこに逃げればいいのだろうか?
主人公のミクルは、どんな手を使ってでも自分のフォロワー数を増やしたいと思っている。何か本業があってそれの宣伝をしたいというわけでも、インフルエンサーとして収入を得ているわけでもない。働かなくとも暮らしていける身分なのであるが、承認欲求を満たすためだけにフォロワー数を求めているのだ。
ミクルはカフェの順番待ちリストに、勘解由小路という難読の偽名を記入することにしている。なぜそんことをするかと言うと
「名前が読めずに困っている店員を見ると元気が出るから」
何だそれ。しょうもない理由に吹いた。そんなことしても、珍しい名字のお客様だなって思われるだけだと思うよ? 「マウントを取ったり迷惑をかけることでしか他者の存在を確かめることができない」 と冷静な自己分析をしているあたりに、気合の入っためんどくささを感じて、期待が高まってしまう。
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フォロワー数が増えないことに追い詰められ、知人のインスタの写真を勝手に拝借してしまう。激怒している相手にお詫びにいくことになったものの、満員電車にメンタルをやられて遅刻してしまい、検索したサイトに出ていた通りに謝罪をして 「テンプレですよね、いまの文章」 と鋭くツッコまれてしまう。そんなある日、ソラが撮影した動画がバズったことがきっかけで、フォロワー数が急増するが・・・・・・・。
リズミカルな文章とユニークな心理描写が見事だ。他者と自己双方への嫌悪感を、これほど切実に描ける作家は他にいないのではないか。フォロワー数にこだわるミクルが、滑稽を通り越してなんだか哀れにも思えてくるのだけれど、本当に哀れむべきなのはいったい誰なのだろう。愚かであることを自覚しながらも、承認欲求に囚われているミクルなのか。それとも、スマホを開けば誰でも見られることのすべてなのか。
驚愕のラストでは、思わず小さくヒィィーと声をあげていた。
参考:R. I. Pは 「rest in peace」- 「ご冥福をお祈りします」 「安らかに眠れ」 という意味です。
この本を読んでみてください係数 85/100

◆本谷 有希子
1979年石川県生まれ。
石川県立金沢錦丘高等学校卒業。ENBUゼミナール演劇科に入学。
作品「ぬるい毒」「嵐のピクニック」「異類婚姻譚」「江利子と絶対」「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」「生きているだけで、愛。」「自分を好きになる方法」「グ、ア、ム」「静かに、ねぇ、静かに」他
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