『雪の鉄樹』(遠田潤子)_書評という名の読書感想文
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最終更新日:2024/01/12
『雪の鉄樹』(遠田潤子), 作家別(た行), 書評(や行), 遠田潤子
『雪の鉄樹』遠田 潤子 光文社文庫 2016年4月20日初版
母は失踪。女の出入りが激しい「たらしの家」で祖父と父に育てられた庭師の雅雪は、両親を失った少年、遼平の世話をしてきた。しかし遼平の祖母は雅雪に冷たく当たり続ける。雅雪も、その理不尽な振る舞いに耐える。いったい何故なのか? そして14年前、雅雪が巻き込まれた事件の真相は? 耐え続ける男と少年の交流を軸に「償いと報い」を正面からとらえたサスペンス。(「BOOK」データベースより)
この感動は、ホンモノだ。深い小説の海へ潜る。本物の人生の物語。とあります。
「もう別格です。」「あまりのすごさにぶっとびました。」「天童荒太に近いかな。とにかく熱量が半端じゃない。」「こういう展開になるのか! と読ませる。」「予備知識なしに読んだほうがいいかもしれないね。」-(『おすすめ文庫王国2017』本の雑誌座談会のコメントより)
もう、どう読んでも絶賛の嵐。これ以上ない傑作か!? と思い、勢い込んで読んでみました。
ところがです。
ところがどうしたことか、上手く読めないのです。読むと「突っかかる」というのか「のつこつ」(京ことばで物をもてあます状態をいいます)した感じがあって、気持ち良くありません。内容もさることながら、私には著者の書く文章が性に合わないのだと思います。
失礼ついでに言わせてもらうと、内容は、最初紹介したように「別格」だとも思えませんし、すごいとも感じないので「ぶっとび」もしません。天童荒太に近いかと訊かれたら、おそらく、それは違うのではないかと。
ずいぶんと作り込んだ話で、「熱量が半端じゃない」という感想は分からぬではありません。とにかく主人公の雅雪 -「まさゆき」はいいにして「雅雪」とは、あてた漢字があざとすぎるのもどうかと - という人物が、文字通り「半端じゃない」のです。
雅雪は、誰に何を言われようと「悪いのは俺です」と応えます。彼の周辺で不都合があり、誰かが迷惑を被ったり、小さくはない事件になったりした場合、雅雪が直接関与しているわけでもないのに、(結局は)悪いのは自分なのだと言い張ります。
悪事や災いの原因はすべて自分にある。雅雪は、心からそう信じています。(実はほとんどがそうではないのですが)彼は不器用で、無骨で、一途な、そうとしか生きられない青年なのです。(この雅雪の生き様をどう感じるか、まずはそれが問題です)
でなければ、何を支えに、遼平の祖母・島本文枝の氷の心に耐えることができるでしょうか。雅雪の恋人・舞子は、文枝にとって確かに憎むべき重大な過失を引き起こした当人なわけですが、だからといって交際相手の雅雪をそこまで無下に扱うのはどうなのかと。
線香をあげるどころか、彼は仏壇に近づくことさえ許されません。お供え物にと持参した菓子包みは、雅雪が帰ると同時にゴミ箱へ捨てられます。正座し、許しが出るまで頭は下げたまま。文枝は、雅雪が訪ねて来ること自体に我慢がならないのです。
それでも雅雪は、遼平に会いに行くことをやめようとはしません。文枝に、成長し反抗期を迎えた、そして事実を知った遼平に、来るなと言われても通い続けます。遼平が高校を卒業するまでは何としても面倒を見続けるんだと自分に言い聞かせ、ひたすら耐えます。
過去に何があって、雅雪はそこまですると決めたのか。事の経緯とその顛末、そして雅雪の今ある状況 - それらをリアルと感じて浸れるかどうか、すべてはそこにかかっているように思います。
この本を読んでみてください係数 80/100
◆遠田 潤子
1966年大阪府生まれ。
関西大学文学部独逸文学科卒業。
作品 「月桃夜」「アンチェルの蝶」「鳴いて血を吐く」「お葬式」「蓮の数式」など
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