『彼女はひとり闇の中』(天祢涼)_書評という名の読書感想文
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『彼女はひとり闇の中』(天祢涼), 作家別(あ行), 天祢涼, 書評(か行)
『彼女はひとり闇の中』天祢 涼 光文社文庫 2025年7月20日 初版1刷発行
15th 天祢涼 Anniversary - 私は希望を持てない側の人間だ

犯人の正体が、その動機があかされるとき、言葉を失うほどの衝撃が読者を打つ!
十月の日曜の朝、横浜・日吉に住む千弦は前夜に近くで女性が刺殺されたことを知る。被害者は 「相談したいことがある」 と犯行時刻の直前にLINEがきた幼なじみの玲奈だった。玲奈のゼミ教官・葛葉の態度から、玲奈に悩み事があったと確信して真相を追う千弦を尾行する影が・・・・・・・。未来と仲間の見えない時代に、凄絶な孤独が引き起こした悲劇の結末とは - 。(光文社文庫)
社会派ミステリー・仲田蛍シリーズの 『あの子の殺人計画』 『希望が死んだ夜に』 に続く三冊目。前の二冊が期待通りだったので、迷わず買ったのですが・・・・・・・。果たして貴女はこれを “興味深く“ 、 “我が事として“ 読めるでしょうか? こんな関係の友が、本当にいるのでしょうか。
主人公は、神奈川県横浜市日吉の慶秀大学商学部に通う守矢千弦。ある日曜日、彼女はLINEに、幼馴染みで今は同じ大学に通う朝倉玲奈からのメッセージが前日の夜に届いていたことに気づく。何か相談したいことがある様子だ。急いで連絡を取ろうとするが、玲奈からの返信はない。やがて千弦は、近所の公園で起きた殺人事件の被害者が玲奈だったことを知る。
玲奈は殺害される前、何を相談したかったのか。千弦は捜査を担当する神奈川県警の菱田源、橋本育太の両刑事に情報を提供するも、玲奈の相談の内容についてはあまり関心がない様子だった。警察には任せておけないと感じた千弦は、答えを知るべく、玲奈の周囲の人々から話を聞こうとする。その中には、玲奈のゼミの教官で、犯罪社会学者として高名な葛葉智人もいた。
さて、葛葉智人の名前が出たところで、本書は千弦の視点を一旦離れる。そこで、葛葉がこの事件に深く関わっていることが描かれるのだ。「現状、警察が、犯人 - 即ち “自分“ につながる手がかりをつかんでいる様子もない」 - かくして本書が、千弦を視点人物とするパートと、犯人を視点人物とするパートとがパラレルに進行する、一種の倒叙ミステリであることが判明する。
倒叙ミステリというのは、一般的な本格ミステリが犯人の正体に推理で到達するのに対し、最初から判明している犯人視点で犯行の経緯が描かれ、それがどう暴かれるかを興味の主眼とするサブジャンルだ。(中略) 本書の場合、葛葉は社会的地位と名声という強みを持ち、頭も切れる人物である。自分が千弦に疑われていることにも、かなり早くから気づいている様子で、さまざまな手管で彼女の疑念を逸らそうとする。一介の大学生では容易に太刀打ちできない強敵だ。だが、千弦は無鉄砲とすら言えるひたむきさで、玲奈の死の真相へと近づいてゆくのだ。(解説より)
※こんなことを言っては元も子もないのですが、主軸となる 「千弦を視点人物とするパート」 がいけません。ざっくり言うと 「言い過ぎ」 「書き過ぎ」、思いついたことの 「したい放題」 で、主役を張るキャラクターとしてもう少し何とかならなかったものかと。「学生のわりにはしっかりしている」 のはいいのですが、それにしても限度があります。千弦ほどの人物はそうはいません。
この本を読んでみてください係数 80/100

◆天祢 涼
1978年生まれ。
作品 「キョウカンカク」「葬式組曲」「父の葬式」「境内ではお静かに」シリーズ「謎解き広報課」「彼女が花を咲かすとき」「希望が死んだ夜に」「あの子の殺人計画」など
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