『残像』(伊岡瞬)_書評という名の読書感想文
『残像』伊岡 瞬 角川文庫 2023年9月25日 初版発行
訪れたアパートの住人は、全員 “元犯罪者“ だった。騙し合いに息をのむ著者渾身のサスペンス! 角川文庫75周年記念、文庫書下ろし!
浪人生の堀部一平は、バイト先で倒れた葛城に付き添い、自宅アパートを訪れた。そこでは、晴子、夏樹、多恵という年代もバラバラな女性3人と小学生の冬馬が、共同生活を送っていた。他人同士の生活を奇妙に感じた一平は冬馬から、女性3人ともに前科があると聞く。一方、政治家の息子・吉井恭一は、執拗に送られてくる、過去を断罪する写真に苦悩していた。身を寄せ合う晴子たちの目的、そして水面下で蠢く企ての行方は - 。暗い過去への復讐を描いた、心震わす衝撃のサスペンスミステリ!
「信頼、裏切り、後悔、敬愛、憎悪、憧れ、友情、希望。そんなあれこれをぎっしり詰め込みました」- 伊岡瞬 (「KADOKAWA」 公式レーベルサイトより)
今最も世間の注目を集めているニュースといえば、大手芸能プロダクション・ジャニーズ事務所の元社長、故ジャニー喜多川氏が関わったとされる、事務所所属の多くの未成年男子に対する性加害問題でしょう。被害を受けた人の数は、なんと478人 (10/2時点) にも上ります。(この数はまだまだ増えていくようです)
その数たるや。その罪深さたるや。被害に遭った少年一人一人の心を思うと、(かける) 言葉がありません。やがて消える疵ならまだしも、おそらく生涯苛み続けるであろう心の疵を、どう癒すことができるのでしょう。この先何がなされれば、報われるのでしょう。
物語には、ジャニーズ問題の当事者たちに似た人物が複数人登場します。被害者だけではありません。少年だけでもありません。「もしかするとそうではないか」 と薄々感じながらも、見て見ぬふりを通す大人たちも登場します。
この本を読んでみてください係数 80/100
◆伊岡 瞬
1960年東京都武蔵野市生まれ。日本大学法学部卒業。
作品 「いつか、虹の向こうへ」「代償」「もしも俺たちが天使なら」「痣」「本性」「冷たい檻」他多数
関連記事
-
『六番目の小夜子』(恩田陸)_書評という名の読書感想文
『六番目の小夜子』恩田 陸 新潮文庫 2001年2月1日発行 津村沙世子 - とある地方の高校にや
-
『沈黙の町で』(奥田英朗)_書評という名の読書感想文
『沈黙の町で』奥田 英朗 朝日新聞出版 2013年2月28日第一刷 川崎市の多摩川河川敷で、
-
『ロコモーション』(朝倉かすみ)_書評という名の読書感想文
『ロコモーション』朝倉 かすみ 光文社文庫 2012年1月20日第一刷 小さなまちで、男の目を
-
『しろいろの街の、その骨の体温の』(村田沙耶香)_書評という名の読書感想文
『しろいろの街の、その骨の体温の』村田 沙耶香 朝日文庫 2015年7月30日第一刷 クラスでは目
-
『センセイの鞄』(川上弘美)_書評という名の読書感想文
『センセイの鞄』川上 弘美 平凡社 2001年6月25日初版第一刷 ひとり通いの居酒屋で37歳
-
『カインは言わなかった』(芦沢央)_書評という名の読書感想文
『カインは言わなかった』芦沢 央 文春文庫 2022年8月10日第1刷 男の名は、
-
『夜明けの縁をさ迷う人々』(小川洋子)_書評という名の読書感想文
『夜明けの縁をさ迷う人々』小川 洋子 角川文庫 2010年6月25日初版 私にとっては、ちょっと
-
『僕の神様』(芦沢央)_書評という名の読書感想文
『僕の神様』芦沢 央 角川文庫 2024年2月25日 初版発行 あなたは後悔するかもしれない
-
『その話は今日はやめておきましょう』(井上荒野)_書評という名の読書感想文
『その話は今日はやめておきましょう』井上 荒野 毎日新聞出版 2018年5月25日発行 定年後の誤
-
『木洩れ日に泳ぐ魚』(恩田陸)_書評という名の読書感想文
『木洩れ日に泳ぐ魚』恩田 陸 文春文庫 2010年11月10日第一刷 舞台は、アパートの一室。別々