『メイド・イン京都』(藤岡陽子)_書評という名の読書感想文

『メイド・イン京都』藤岡 陽子 朝日文庫 2024年4月30日 第1刷発行

第45回吉川英治文学賞新人賞受賞 今まさにやりたい事に邁進されている方のお守りになるような本だと思います。私にとってそうであるように。(解説より/ 物語モデル デザイナー・谷口富美)

起業、恋、結婚。 京都で自分らしい生き方を模索するひとりの女性の物語。

美咲・32歳。婚約を機に京都の地に降り立つが、京都人達から洗礼を受け、婚約者との関係性にも違和感を覚えだす。あるきっかけで、かつて熱中したものづくりに再挑戦することに - 。人生の岐路に立つ美咲の運命が変わり始める。第9回京都本大賞受賞作。(朝日文庫)

著者が誰なのか、よく確かめもせず買いました。表紙の感じからして書いたのはたぶん若い女性で、しかも新人なんだろうと。ところが、読んだ後で調べてみるとこれが大違いで、なかなかに “ベテラン“ の手になる作品だということがわかりました。 

勘違いついでにWikipediaを見ると、著者の 「経歴」 が(失礼ながら) えらく面白い。小説よりもむしろそちらの方が刺激的でアグレッシブで、(どうかすると) 破天荒にさえ思えてきます。行動力に関していうと、物語の主人公・美咲のそれどころではありません。自分をモデルにして書けばよかったのに - そう感じるほどに “紆余曲折“ しています。

藤岡 陽子 (ふじおか ようこ、1971年7月21日) は、日本の小説家、看護師。本名、中原陽子。2児の母。

経歴

京都府京都市に生まれる。同志社高等学校では赤神諒と同期。同志社大学文学部卒業。卒業後は文章を書く仕事がしたいと1994年に報知新聞社にスポーツ記者として勤務し、高校野球やゴルフを取材する。整理部を経て1997年9月、およそ3年半で退社。その後、タンザニア・ダルエスサラーム大学に留学し、スワヒリ語科で学ぶ。卒業はせず帰国し、1999年に大阪文学学校 (夜間部) に通い、小説を書いては投稿する日々を続けるが落選が続く。2年連続で 「オール読物新人賞」 の最終候補に残るが、その後結婚し、出産したことで小説を書く余裕を無くしてしまう。また、経済的に夫に依存することに不安を感じ、慈恵看護専門学校を卒業して、看護師資格を習得。小説を書きたいという気持ちは依然として強かったため、2006年、再び大阪文学学校 (昼間部) で学び、同年 「結い言」 で宮本輝が選考する第40回北日本文学賞選奨を受賞。その後、2年連続で 「小説宝石新人賞」 の最終候補に残り、2009年 『いつまでも白い羽根』 でデビュー。

2017年現在、京都市内の脳外科に勤務する。

※写真でみるとフツーのおばさんですが、人は見た目だけではわかりません。なぜタンザニアなどというところへ留学したのでしょう? せっかく入った報知新聞をたった3年半で辞めてまで、なぜスワヒリ語を学ぼうと思ったのか? 経済的に夫に依存してする生活に不安を感じ、専門学校で学び、看護師資格を習得し、現に働いているのは立派というしかありませんが、事の流れからすると、

そこは “スワヒリ語“ を活かした仕事ではなかったのかと - 小説ならきっとそうなっていることでしょう。しかし現実はそううまくはいきません。(おそらくいかなかったのだろうと) もっと一般的な言語ならまだしも、今の日本でスワヒリ語ではいかにも需要がなさそうな、無駄で無意味な知識に思えてなりません。(しらんけど)

この本を読んでみてください係数  80/100

◆藤岡 陽子
1971年京都府京都市生まれ。
同志社大学文学部卒業。報知新聞社を経て、タンザニア・ダルエスサラーム大学留学。慈恵看護専門学校卒業。

作品 2006年 「結い言」 で第40回北日本文学賞選奨を受賞し、09年 『いつまでも白い羽根』 でデビュー。21年本作で第9回京都本大賞、23年 『リラの花咲くけものみち』 で第7回未来屋小説大賞、24年同作で第45回吉川英治文学賞新人賞受賞。著書に 「トライアウト」「手のひらの音符」「晴れたらいいね」他多数。

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