『曾根崎心中/新装版』(角田光代 原作 近松門左衛門)_書評という名の読書感想文

『曾根崎心中/新装版』角田 光代 原作 近松門左衛門 リトルモア 2025年12月24日 初版第1刷発行

美しく残酷な運命の恋物語が、時代を超えて、私たちの心を強く揺さぶる。小説として生まれ変わり新たに読み継がれる名作 新装版

これが、恋。 愛し方も死に方も、私のもの。

江戸時代、元禄期の大阪で実際に起きた心中事件をもとに近松門左衛門が書いた “心中もの“ の傑作を、直木賞作家・角田光代が遊女 「初」 の視点で現代に蘇らせた!

あらがい難き究極の恋の、高揚、悦び、懊悩、切迫・・・・・・・ 近松門左衛門の原作の世界を踏襲しながら、あらゆる感情を細やかな心理描写で描き切り、新たな物語として昇華させた、小説 『曾根崎心中』。(リトルモア)

※本書は、2011年に刊行された 『曾根崎心中』 の新装版です。内容上の変更はありません。

知っているのは「近松門左衛門」 という名前と、「曾根崎心中」 が有名な浄瑠璃の演目だということだけでした。買ったのは、本の表紙の絵のインパクトと書いた作家が角田光代だったからです。もしも他の人なら買わないし、読みもしなかったと思います。

曾根崎心中は、元禄16年4月7日 (1703年5月22日)、大阪堂島新地天満屋の女郎はつ (本名:妙、21歳) と、内本町醤油商平野屋の手代である徳兵衛 (25歳) が露 (お初) 天神の森で情死した実際の事件をもとに、近松門左衛門が書いた世話浄瑠璃です。その物語を直木賞作家である角田光代氏が現代に甦らせてくれました。

近松の “曾根崎心中“ は、初と徳兵衛を真似て各地で心中事件が多発するほど、大ヒットしました。本書を読んでわかったのは、なるほど大衆受けする、よくできた筋書きであるということです。

廓に身を寄せる女性たちは、多かれ少なかれ似たような身の上、経験を積んできた人たちだと想像できます。自我を押し殺さなければ、生きていけなかったのかもしれません。生きていることに意味を見出せないということもあったでしょう。だからこそ初は、心もとない恋にしがみつき、心中の道を選んだと思います。

互いに想いを寄せ合っているうちが華。人の情は移りゆくもの。そんなことは、心のどこかでわかっていたのでしょう。いずれにせよ自分たちは、生きながらえたところで、幸せな暮らしを手に入れることはできないとわかってもいたでしょう。(略)

事実はどうであれ、初と徳兵衛は手に手を取って、若い命を絶ったことで後世に名を残しました。露天神も、ヒロインの名にちなんで、お初天神と呼ばれるようになったくらいです。悲しく哀れな出来事ですが、ふたりにとってはこれで良かったのかもしれません。(note 「べそかきアルルカン」 さんの投稿より抜粋)

※15年も前にこんな本が刊行されていたとは。なぜ気付かなかったのか、不思議でなりません。ひょっとすると、その時読んだのに、15年経ったいま私は読んだことをすっかり忘れているのかもしれません。そういえば確かにこんな表紙を見た覚えがあるような。そんな気がするのは、ただの思い違いでしょうか・・・・・・・。

この本を読んでみてください係数  85/100

◆角田 光代
1967年神奈川県横浜市生まれ。
早稲田大学第一文学部文芸専修卒業。

作品 「空中庭園」「かなたの子」「対岸の彼女」「紙の月」「八日目の蝉」「笹の舟で海をわたる」「坂の途中の家」「愛がなんだ」「源氏物語」「タラント」「神さまショッピング」他多数

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