『占/URA』(木内昇)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/06 『占/URA』(木内昇), 作家別(か行), 書評(あ行), 木内昇

『占/URA』木内 昇 新潮文庫 2023年3月1日発行

占いは信じないと思っていた。

知りたいのはあの人の気持ち。視えたのは私の執心。不安にもがき、逞しく生きる女性たちを描く七つの短編。

翻訳家の桐子は大工の伊助と深い仲。ただ彼は、生き別れた義妹が一番大事という。ならば私は何だと桐子は憤り、偶然行き着いた卜い家で彼の本心を探る (「時追町の卜い家」)。お宅は平穏ねと羨まれる政子。果たしてそうか、近所の家庭を勝手に格付けし、比べ始める。それが噂になってしまい・・・・・・・(「深山町の双六堂」)。”占い” に照らされた己の可能性を信じ、逞しく生きる女性たちを描く短編集。(新潮文庫)

[目次]
時追町の卜い家
山伏村の千里眼
頓田町の聞奇館
深山町の双六堂
宵待祠の喰い師
鷺行町の朝生屋
北聖町の読心術

人の本心を知りたい、心の内を覗いてみたいと思う気持ちは切実で、それがひいては、自分の存在や自分が今いる状況が、人と比べて多少なりとも “優位” であるとか、”人並み” には暮らせているだとか、そんなことの確証を得たいばかりにする 「占い」 に通じているのでしょう。

たとえそれが訊いた自分にとって都合の良い答えだと薄々勘付いていたとしても、それが何だというのでしょう。その答えこそを、あなたは (私は) 期待していたのではないのでしょうか? でなければ、(日ごろ見向きもしない) 占いなんかには頼らないはずです。

ここに登場する女性たちは、悩むべくして悩みます。悩んだあげく 「占い」 にどっぷり嵌まり、その “罠” から中々抜け出すことが出来ません。気付かぬ内に、いつの間にか深間に嵌まり、占い方の言うことの一々が、至極真っ当に思えてくるのでした。

たとえばこんな “お告げ” が -

可能性を見出して、お伝えするということです。そこでなにをどう信じるか、どういう手立てをとるかは、お客様次第ということになります。そうして選んだ行いの先に、ただひとつの真実が待っているということです。(「時追町の卜い家」 より)

どうです? よく読むと、何の占いにもなっていない “お告げ” ではありますが、藁をもすがる思いでいる者には、これで十分なわけです。卜い家を訪ね来た者にしてみれば、これこそが “答え” で、自分の背中を押してくれさえすれば、それで来た甲斐はあったというものです。

この本を読んでみてください係数 80/100

◆木内 昇
1967年東京都生まれ。
中央大学文学部哲学科心理学専攻卒業。

作品 「茗荷谷の猫」「笑い三年、泣き三月」「光炎の人」「漂砂のうたう」「櫛挽道守」他多数

関連記事

『懲役病棟』(垣谷美雨)_書評という名の読書感想文

『懲役病棟』垣谷 美雨 小学館文庫 2023年6月11日初版第1刷発行 累計23万

記事を読む

『青くて痛くて脆い』(住野よる)_書評という名の読書感想文

『青くて痛くて脆い』住野 よる 角川書店 2018年3月2日初版 『君の膵臓をたべたい』 著者が放

記事を読む

『茗荷谷の猫』(木内昇)_書評という名の読書感想文

『茗荷谷の猫』木内 昇 文春文庫 2023年7月25 第7刷 もう少し手を伸ばせばあの夢にと

記事を読む

『 i (アイ)』(西加奈子)_西加奈子の新たなる代表作

『 i (アイ)』西 加奈子 ポプラ文庫 2019年11月5日第1刷 『サラバ!

記事を読む

『ねこまたのおばばと物の怪たち』(香月日輪)_書評という名の読書感想文

『ねこまたのおばばと物の怪たち』香月 日輪 角川文庫 2014年12月25日初版 「人にはそれぞれ

記事を読む

『アミダサマ』(沼田まほかる)_書評という名の読書感想文

『アミダサマ』沼田 まほかる 光文社文庫 2017年11月20日初版 まるで吸い寄せられるように二

記事を読む

『海よりもまだ深く』(是枝裕和/佐野晶)_書評という名の読書感想文

『海よりもまだ深く』是枝裕和/佐野晶 幻冬舎文庫 2016年4月30日初版 15年前に文学賞を

記事を読む

『朝が来る』(辻村深月)_書評という名の読書感想文

『朝が来る』辻村 深月 文春文庫 2018年9月10日第一刷 長く辛い不妊治療の末

記事を読む

『世界から猫が消えたなら』(川村元気)_書評という名の読書感想文

『世界から猫が消えたなら』川村 元気 小学館文庫 2014年9月23日初版 帯に「映画化決定!」

記事を読む

『あなたにオススメの』(本谷有希子)_書評という名の読書感想文

『あなたにオススメの』本谷 有希子 講談社文庫 2025年11月14日 第1刷発行 目前に迫

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『羆嵐』(吉村昭)_書評という名の読書感想文

『羆嵐』吉村 昭 新潮文庫 2026年12月20日 62刷発行

『妊娠カレンダー』(小川洋子)_書評という名の読書感想文

『妊娠カレンダー』小川 洋子 文春文庫 2020年12月20日 第2

『カフェーの帰り道』(嶋津輝)_書評という名の読書感想文

『カフェーの帰り道』嶋津 輝 東京創元社 2026年1月23日 4版

『きっと君は泣く』(山本文緒)_書評という名の読書感想文

『きっと君は泣く』山本 文緒 角川文庫 2026年1月25日 改版初

『彼女たちが隠したかったこと』(一木けい)_書評という名の読書感想文

『彼女たちが隠したかったこと』一木 けい 角川文庫 2026年1月2

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑