『青くて痛くて脆い』(住野よる)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/10 『青くて痛くて脆い』(住野よる), 住野よる, 作家別(さ行), 書評(あ行)

『青くて痛くて脆い』住野 よる 角川書店 2018年3月2日初版

『君の膵臓をたべたい』 著者が放つ、最旬青春小説!

人に不用意に近づきすぎないことを信条にしていた大学1年生の春、僕は秋好寿乃に出会った。空気の読めない発言を連発し、周囲から浮いていて、けれど誰よりも純粋だった彼女。秋好の理想と情熱に感化され、僕たちは二人で「モアイ」という秘密結社を結成した。
それから3年。あのとき将来の夢を語り合った秋好はもういない。僕の心には、彼女がついた嘘が棘のように刺さっていた。

僕が、秋好の残した嘘を、本当に変える
それは僕にとって、世間への叛逆を意味していた - 。(角川書店)

秋好は、「(大学) 四年間でなりたい自分になる」と宣言します。

僕(田端楓)は、秋好の言う 「青臭く、イタい」 理想に半ば呆れつつ、しかし結局は彼女の熱意に負けて、二人して秘密のサークル「モアイ」を結成します。

「モアイ」は思いのほか速いテンポで仲間を増やし、やがて楓のイメージとは裏腹に、およそ違うものへと変貌を遂げます。

かつていた秋好はいなくなり、楓は「モアイ」を辞めようと決意します。楓にとり、その頃の「モアイ」の活動は、就職を目論む学生たちが目当ての企業に擦り寄るだけの「就活サークル」としか思えなくなっていました。

※彼にはこうと決めた自分なりの「規範」があります。楓は、

あらゆる自分の行動には相手を不快にさせてしまう可能性がある。しかるに、人に不用意に近づきすぎないこと。誰かの意見に反する意見を出来るだけ口に出さないこと。

そうしていれば少なくとも自分から誰かを不快にさせる機会は減らせるし、そうして不快になった誰かから傷つけられる機会も減らせる、と考えています。
・・・・・・・・・
楓は、秋好が「嘘をついた」と思っています。思いもしない彼女の「変節」を、楓は(自分で決めた「自分」を忘れたように)強く非難します。何としても認めようとしません。

あらぶる楓に対し、秋好は - 叶えたいものに辿り着くために、手段と努力と方法がいるの。それを、考えてやってきた。- と主張します。

互いの思いはすれ違い、二人は二度と交わりません。秋好は傷つき、楓は、秋好よりもなお深い傷を負います。脆く、頽れた青春に、

僕たちは、あの頃なりたかった自分になれたのだろうか。

この本を読んでみてください係数 80/100

◆住野 よる
1990年生まれの28歳(らしい)。大阪府在住。男性。

作品 「また、同じ夢を見ていた」「よるのばけもの」「か「」く「」し「」ご「」と「」「君の膵臓をたべたい」など

関連記事

『歩いても 歩いても』(是枝裕和)_書評という名の読書感想文

『歩いても 歩いても』是枝 裕和 幻冬舎文庫 2016年4月30日初版 今日は15年前に亡くなった

記事を読む

『哀原』(古井由吉)_書評という名の読書感想文

『哀原』古井 由吉 文芸春秋 1977年11月25日第一刷 原っぱにいたよ、風に吹かれていた、年甲斐

記事を読む

『また、同じ夢を見ていた』(住野よる)_書評という名の読書感想文

『また、同じ夢を見ていた』住野 よる 双葉文庫 2018年7月15日第一刷 きっと誰にでも 「やり

記事を読む

『オーラの発表会』(綿矢りさ)_書評という名の読書感想文

『オーラの発表会』綿矢 りさ 集英社文庫 2024年6月25日 第1刷 綿矢りさワールド全開

記事を読む

『生きてるだけで、愛。』(本谷有希子)_書評という名の読書感想文

『生きてるだけで、愛。』本谷 有希子 新潮文庫 2009年3月1日発行 あたしってなんでこんな

記事を読む

『八月の青い蝶』(周防柳)_書評という名の読書感想文

『八月の青い蝶』周防 柳 集英社文庫 2016年5月25日第一刷 急性骨髄性白血病で自宅療養するこ

記事を読む

『いっそこの手で殺せたら』(小倉日向)_書評という名の読書感想文

『いっそこの手で殺せたら』小倉 日向 双葉文庫 2024年5月18日 第1刷発行 覚悟がある

記事を読む

『朱色の化身』(塩田武士)_書評という名の読書感想文

『朱色の化身』塩田 武士 講談社文庫 2024年2月15日第1刷発行 事実が、真実でないとし

記事を読む

『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』(江國香織)_書評という名の読書感想文

『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』江國 香織 集英社 2002年3月10日第一刷 It

記事を読む

『今だけのあの子』(芦沢央)_書評という名の読書感想文

『今だけのあの子』芦沢 央 創元推理文庫 2018年7月13日6版 結婚おめでとう、メッセージカー

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『ジウⅠ 警視庁特殊犯捜査係 SIT 』(誉田哲也)_書評という名の読書感想文

『ジウⅠ 警視庁特殊犯捜査係 SIT 』誉田 哲也 中公文庫 202

『血腐れ』(矢樹純)_書評という名の読書感想文

『血腐れ』矢樹 純 新潮文庫 2024年11月1日 発行 戦慄

『チェレンコフの眠り』(一條次郎)_書評という名の読書感想文

『チェレンコフの眠り』一條 次郎 新潮文庫 2024年11月1日 発

『ハング 〈ジウ〉サーガ5 』(誉田哲也)_書評という名の読書感想文

『ハング 〈ジウ〉サーガ5 』誉田 哲也 中公文庫 2024年10月

『Phantom/ファントム』(羽田圭介)_書評という名の読書感想文 

『Phantom/ファントム』羽田 圭介 文春文庫 2024年9月1

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑