『凶宅』(三津田信三)_書評という名の読書感想文

『凶宅』三津田 信三 角川ホラー文庫 2017年11月25日初版


凶宅 (角川ホラー文庫)

山の中腹に建つ家に引っ越してきた、小学四年生の日比乃翔太。周りの家がどれも未完成でうち棄てられていることに厭な感覚を抱くと、暮らし始めて数日後、幼い妹が妙なことを口にする。〈この山に棲んでいるモノ〉が、部屋に来たというのだ。それ以降、翔太は家の中で真っ黒な影を目撃するようになる。怪異から逃れるため、過去になにが起きたかを調べ始めた翔太は、前の住人の残した忌まわしい日記を見つけ - 。〈最凶〉の家ホラー。(角川ホラー文庫)

舞台は奈良県のとある地方都市。最寄りの駅から歩いて二十数分。その一軒家は人家の集まる地域からはやや距離のある、小高い山の中腹に建っています。

この奈賀橋町は昔〈長箸村〉と呼ばれていた。田畑を中心に、そのまわりを民家がぐるりと取り囲んでいる集落だった。村の庄屋は代々〈辰巳家〉が務めており、ほとんどの土地は同家が所有していた。ただし、そこには村の北に位置する〈百々山)〉もふくまれている。この山には恐ろしい蛇神様が棲むと昔から伝えられ、いっさい人間の入山が禁じられてきた歴史があった。そんな御山を祀り、蛇神様を鎮め、入山者に目を光らせるのも、辰巳家の役目だった。

ところが、戦後の農地改革により、辰巳家はこの地の利権をほぼ失ってしまう。しかも皮肉なことに、改革には山林の所有権がふくまれていなかったため、もっとも手放したいはずの百々山だけが残ることになる。そのうえ、辰巳家は戦後なかなか跡取りに恵まれず、没落の一途を辿りはじめた。そして五年前、ついに百々山の裾野を開拓して〈コーポ・タツミ〉を建て、さらに四年前には山そのものを宅地化する計画を押し進めた。

翔太を含む日比乃家の家族五人は、大阪への父の転勤に合わせ東京から奈良へ、国分寺の賃貸マンションから(よせばいいのに、よりにもよって “いわく” 満載の)人里離れた山の中腹の、それより他にまともな家がない、ぽつりと建つ一軒家に移り住むことになります。

※ ・・・って、(いきなりですがこの設定には)少々無理があるように思うのですが、どうでしょう?  いくら著者の三津田さんが奈良県出身だからといって、そもそも大阪で働こうとする人が、何でわざわざ奈良なのか。そこが腑に落ちません。

何が良くて奈賀橋なのか。家賃の安い物件なら(それこそ奈良でなくても)他にいくらもあるだろうに。しかも超が付くほど不便な山の麓の一軒家 - 読むと、夫婦二人で下見をしたといいます。

山の中央に麓から天辺まで続く道があり、右側の中腹に二本、距離を置いて側道があります。その内の一本、麓に近い方の側道に並んで崖の際までに四軒分の区画があります。夫婦が決めたのはその四軒目。そこだけが完成している、一番奥に建つ一軒家でした。

区画の一軒目、そこは極端に水はけが悪く基礎工事さえ進まず、土地に大きな穴が開き、水が溜まっています。二軒目は骨組みの段階で二度の原因不明の火災が発生し、黒く煤けた基礎のコンクリートだけが残っています。三軒目に至っては、三人もの鳶職が足場から落ちるという事故が立て続けに起こり、作業は中断したまま打ち棄てられたような姿をしています。

※ 以上のような状況を目にしながら、奥に建つ一軒家を、それでも夫婦が借り受けたのにはどんな「必然性」があったのでしょう? たとえ家賃が安かろうと、(建って三年とは思えない)いかばかりか新しくみえる家であったとしても、誰が好んで住みたいと思うのでしょう。

読んですぐに思うのは、そんなところはさっさと引っ越せばいい、ということ。住み続けようする、家族の気持ちがわかりません。主役の翔太はなまじ頭が良いせいで、何だかだと理屈を付け、いたずらにページを費やしている。そんな感じがします。

 

この本を読んでみてください係数 75/100


凶宅 (角川ホラー文庫)

◆三津田 信三
奈良県生まれ。
高野山大学文学部人文学科国文学専攻卒業。

作品「ホラー作家の棲む家」「水魑の如き沈むもの」「死相学探偵」シリーズ「刀城言耶」シリーズ「のぞきめ」「禍家」「黒面の狐」他多数

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