『私は存在が空気』(中田永一)_書評という名の読書感想文

『私は存在が空気』中田 永一 祥伝社文庫 2018年12月20日初版

私は存在が空気 (祥伝社文庫)

ある理由から存在感を消せるようになった高校生、鈴木伊織。彼女を認識できるのは、友人の春日部さやかだけ。けれど、さやかと話すうちに、伊織はバスケ部で人気の上条先輩のことが気になりだした。ついにはその “体質” を活かし、彼の後をつけ始め・・・・・・・(表題作) 普通じゃない超能力者たちの恋。それは切なくて、おかしくて、温かい。名手が紡ぐ、優しさ溢れる六つの恋物語。(祥伝社文庫)

[収録作品]
1.少年ジャンパー
2.私は存在が空気
3.恋する交差点
4.スモール・ライト・アドベンチャー
5.ファイアスターター湯川さん
6.サイキック人生

どこかの誰かが 「メディアワークス文庫から出ている、ラノベと一般文芸の中間的な作品のよう」 だと。”ラノベ” を読んだことがない私は、それが正しいかどうかはわかりません。

“ライトで後味がいい” というのはわかるのですが、やや柔らかすぎて歯応えがなく物足りないような - そんな感じがします。

何となく話のパターンがわかるのもいけません。まとめて読んでも、せいぜい二つか三つというところ。後は蛇足みたいにならないかが心配です。

だからというわけではないのですが、「少年ジャンパー」 はよかった。特に主人公の高校生・カケルと、彼が想いを寄せる上級生・瀬名先輩とが話す九州弁がリアルで、それだけでも楽しく読めました。飾らず、地を行く “青春” の王道のような作品です。

表題作 「私は存在が空気」 という作品は、ちょっと考えさせられました。読み手如何によっては、これはかなり辛い、辛すぎる話だともいえます。

高校生の伊織は、ある事情がもとで、自分の存在を限りなく “ないもの” にすることが可能になります。しようと思えば、完全に自分を消してしまうことさえできるようになります。

その 、そもそもの設定が辛すぎるのではないかと思うのです。

自分の存在を全て抹消し、余計な干渉を誰からも受けずにいたい。あらゆる感情を留め置いて、空気のような存在でありたいと願う心情が、わからぬわけではありません。思春期真っ只中の多くの少年少女らは、一度や二度は、きっとそんな思いを抱くはずです。

それは私にも、とてもよくわかります。但し、物語に登場する伊織のように、上手くいくとは限りません。大抵は、心の闇はそんなことでは拭えないのではないかと。それくらい彼女が抱える心の闇は深いものだと思うからです。

この本を読んでみてください係数 80/100

私は存在が空気 (祥伝社文庫)

◆中田 永一
1978年福岡県生まれ。本名は安達寛高。
豊橋技術科学大学工学部卒業。別名義で乙一としても執筆している。

作品 「百瀬、こっちを向いて。」「吉祥寺の朝日奈くん」「くちびるに歌を」「ダンデライオン」他

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