『盤上に散る』(塩田武士)_書評という名の読書感想文
公開日:
:
最終更新日:2024/01/10
『盤上に散る』(塩田武士), 作家別(さ行), 塩田武士, 書評(は行)
『盤上に散る』塩田 武士 講談社文庫 2019年1月16日第一刷

唯一の家族だった母を亡くした明日香は、遺品から一通の出されなかった手紙を見つける。宛名は 「林 鋭生様」。それが将棋の真剣師の名だと知り、明日香は林を捜すことに。「新世界の昇り龍」 と呼ばれ、ある対局後に、忽然と姿を消したという男と母との関係は。昭和を生きた男女の切なさと強さを描いた傑作。(講談社文庫)
この作品は著者のデビュー作 『盤上のアルファ』 の続編で、昭和という時代にあって、アマチュア将棋界きっての真剣師 「林鋭生」 なる人物と、彼と関わる人の人生が綴られています。将棋の話であって将棋の話に非ず。その時代の、人の “生きざま” が描かれています。※真剣師:賭け将棋、賭け碁などで生計を立てる者。
願わくば、『盤上のアルファ』 から読んでください。『盤上に散る』 だけでもそれはそれでかまわないのですが、前作を読んだ上でこの作品を読むと、間違いなく何割増しにも面白く読めるはずです。この作品に至る経緯を知った上で、ぜひ読んでほしいと思います。
二冊続けて読むのはちょっとと言う方は、本年(2019年)2月3日、日曜午後10時スタート(予定)のNHK BSプレミアムドラマ 「盤上のアルファ ~ 約束の将棋 ~ 」 をご覧ください。
本当に面白いかどうかは、前作を読んでから。あるいは、ドラマを観た上でご判断ください。
この本を読んでみてください係数 80/100

◆塩田 武士
1979年兵庫県生まれ。
関西学院大学社会学部卒業。
作品 「盤上のアルファ」「女神のタクト」「ともにがんばりましょう」「崩壊」「拳に聞け! 」「雪の香り」「氷の仮面」「罪の声」など
関連記事
-
-
『霧/ウラル』(桜木紫乃)_書評という名の読書感想文
『霧/ウラル』桜木 紫乃 小学館文庫 2018年11月11日初版 北海道最東端・根室は、国境の町で
-
-
『ずうのめ人形』(澤村伊智)_書評という名の読書感想文
『ずうのめ人形』澤村 伊智 角川ホラー文庫 2018年7月25日初版 不審死を遂げたライターが遺し
-
-
『破局』(遠野遥)_書評という名の読書感想文
『破局』遠野 遥 河出書房新社 2020年7月30日初版 第163回芥川賞受賞作
-
-
『白昼夢の森の少女』(恒川光太郎)_書評という名の読書感想文
『白昼夢の森の少女』恒川 光太郎 角川ホラー文庫 2022年5月25日初版 地獄を
-
-
『雨の鎮魂歌』(沢村鐵)_書評という名の読書感想文
『雨の鎮魂歌』沢村 鐵 中公文庫 2018年10月25日初版 北の小さな田舎町。中
-
-
『赤頭巾ちゃん気をつけて』(庄司薫)_書評という名の読書感想文
『赤頭巾ちゃん気をつけて』庄司 薫 中公文庫 1995年11月18日初版 女の子にもマケズ、ゲバル
-
-
『ブラックライダー』(東山彰良)_書評という名の読書感想文_その1
『ブラックライダー』(その1)東山 彰良 新潮文庫 2015年11月1日発行 ここは、地球の歴
-
-
『俺と師匠とブルーボーイとストリッパー』(桜木 紫乃)_書評という名の読書感想文
『俺と師匠とブルーボーイとストリッパー』桜木 紫乃 角川文庫 2023年12月25日 初版発行
-
-
『千の扉』(柴崎友香)_書評という名の読書感想文
『千の扉』柴崎 友香 中公文庫 2020年10月25日初版 五階建ての棟の先には、
-
-
『爆弾』(呉勝浩)_書評という名の読書感想文
『爆弾』呉 勝浩 講談社 2023年2月22日第8刷発行 爆発 大ヒット中! 第16